Mogatone夏休みシーズンですが、いかがお過ごしですか?……というわけで、暑さで脱力ぎみの私は今回、大好きなメガトンレーベルを改めてご紹介いたします。前回紹介のシェリー・ペインの続きでもあります。

メガトンレコードは1981年、“ゲイの都”米サンフランシスコで設立されました。創業の中心になったのは、天才シンセサイザー・プレイヤーのパトリック・カウリーと、仲間の音楽プロデューサーのマーティー・ブレクマン。80年代に隆盛を極めたハイエナジーサウンドのヒット曲を連発しました。

メガトン・サウンドの中心になったのは、何といってもパトリック様。彼が作り出した音楽は、今にいたっても再評価され続けるほど、時代を超えた魅力があります。

まだ電子楽器が未発達だったにもかかわらず、イントロ、ブレイクからエンディングに至るまで、凝りに凝った重厚な音作りを行っており、まさに「楽しく踊るためのディスコ音楽」という点では、最高峰の位置にあるとさえ思います。

このレーベルから曲をリリースしたアーチストには、シルベスター、ポール・パーカー、モダン・ロケトリーなどがいまして、これも実に多彩であります。私も当時、ずいぶんとレコードを集めましたし、ディスコでリクエストもしました。踊りまくった曲は数知れず、であります。

共通項はやはり、その多くが「ゲイ・アーチスト」だということ。音楽的には、めちゃめちゃ明るくてソリッドなシンセ使いと、ソウルフルでパワー溢れるボーカルが特徴であります。

女性ボーカルもなかなか充実しておりました。「ラスト・コール」「ソウル」などのヒットで知られる、ジョー・キャロル(2003年に死去)とローレン・カーターのデュオ「JOLO(ジョロ)」なんていうものいました。彼女たちは、パトリック・カウリーのお気に入りで、彼名義のヒット曲「メナジー」などでボーカルを務めています。

さらに特筆すべきは、シェリー・ペインのような「元大物」をときどき起用していたことでしょう。「ナッシング・フロム・ナッシング」などのヒット曲で知られるビリー・プレストン、元ラベルのサラ・ダッシュなどが、思いっきりハイエナジーな曲をリリースしていました。メジャーでは影が薄くなっても、世界のダンスフロアをギンギンに盛り上げていたわけですね。

それでも、最盛期は数年と持ちませんでした。以前に紹介したモビーディック・レーベル同様、中心人物が次々とAIDSで亡くなっていったのが主な原因です。パトリックは82年に既に死亡しており、創業仲間のマーティーも91年にこの世を去りました。代表的歌手だったシルベスターも88年に亡くなっています。

こうした逆境の中、メガトンは94年、その短い歴史の幕を閉じました。それでも、輝ける星たちを育て、かつ後世に残る音楽を残していった稀有なディスコレーベルだといえます。

写真のCDは、1990年ごろに発売されたメガトンレーベルのベスト盤「メガトン・クラシックス」。Vol.1とVol.2があります。内容は、シルベスター、ビリー・プレストン、JOLOなどなど、代表アーチストが目白押しです。でも、ここがマイナーなディスコ音楽業界の辛いところでして、最近は非常に手に入りにくくなっています。12インチでこつこつと集める方が確実かもしれません。