Revelationアメリカン・ロック史に燦然と名を残すアニマルズが、1964年に放った唯一最大の大ヒット曲「朝日のあたる家(The House Of The Rising Sun)」(全米チャート3週連続1位)。米国南部に伝わる民謡をモチーフに作られたこの曲は、ニューオリンズに住む、貧しいアル中男の破滅的な人生を歌った哀歌であります。

1970年代に登場したディスコミュージックは、いうまでもなく「リメイクだらけ」の世界。77年のこと、フランスの名ディスコ・プロデューサーであるセローン(Cerrone)は、「手っ取り早くこれで作っちゃおう!」と、「朝日のあたる家」のリメイクを、これまた名ディスコプロデューサーであるドン・レイの協力を得て制作。スタジオミュージシャンたちで構成する「リベラシオン(Revelacion)」のアーチスト名で発売しました。

ところが、その直後、「悲しき願い」で有名なサンタ・エスメラルダも、同名曲を発売したのです。リードボーカルはなぜか「悲しき願い」を歌った中心メンバーのリロイ・ゴメスではなくJimmy Goingsでしたが、リベラシオンのものと似たディスコ風で、長さも約15分とほぼ同じ。明らかにセローン&ドン・レイ・バージョンを意識した作りでした。

実は、リロイ・ゴメスは「朝日のあたる家のディスコリメイク」のそもそもの発案者とされ、リベラシオン盤の制作にも当初から関わっていたといわれています。けれども、発売されてみると、LPレコードのクレジットに自分の名前が載っていなかった。リロイは、「セローンたちが自分の手柄にしてしまった」と激怒し、意趣返しとして、自分のバンドを使って別のバージョンを作ってしまったというのです。

しかし一方で、リロイは「悲しき願い」の世界的ヒットの後、ソロ活動に走り始めており、ドン・レイと既に仲たがいしていたとも伝えられています。この辺がナゾではありますけど、実際にリロイはこのころ、ソロアルバムを何枚か発売しています(売れなかったけど)。「悲しき願い」の大成功が内輪モメをもたらし、それにセローンも加わって骨肉の争い状態になっていったと推測されます。

曲調的には、リベラシオン盤の方は、ドラムビートを生かしつつ、比較的シンプルかつオーソドックスに仕上げているのに対し、エスメラルダ盤は、電子オルガンからラテンパーカッションから、楽器を派手に使いまくっていて、めちゃめちゃ気合を入れてゴージャスに仕上げているのが分かります。

……ただし、私個人は、エスメラルダ盤はちょっと「うるさ過ぎ」だと思います。リベラシオン盤の方が、ぐいぐい引っ張られる感じがあり、踊りやすさの点でも上回っている気がします。

前代未聞の競作の結果は、全米ディスコチャートでリベラシオン盤が最高25位、エスメラルダ盤が19位と、どちらも中ヒットで「引き分け」ってところでした。

「朝日のあたる家」は、もう一つ、「The House Of The Rising Sun」の略である「Hot R.S.」という名の南アフリカ(!)のディスコグループも、同じ77年にリメイク。欧州を中心にそこそこヒットしました。

こんなにもリメイクされるというのは、原曲がよほど名曲だということになりますな。確かに、細かい点はともかく、「朝日の当たる家」をディスコでやる発想自体は、すばらしいことではないですか!。総合的には、上記3リメイクともに、私は大好きなのであります。

ちなみに、海外のDJサイトやディスコ解説本によると、欧州を中心にディスコの大ヒット曲を連発したセローンは、「天才だ」ともてはやされた一方で、業界内では「すぐアイデアを盗み、手柄を独り占めする」との悪評も立っていたようです。

実際、「朝日のあたる家」の前にも、ディスコの名曲「ロミオとジュリエット」(78年、全米ディスコチャート1位)などで知られるプロデューサーのアレック・R・コスタンディノスと仲たがいしたといわれています。セローンの代表曲の一つである「Love In C Minor」(77年、同2位)は、昔からの仲間でもあったアレックが発案し、二人で共同制作したものですが、初期のレコードのクレジットには、自分の名前しか載せなかったというのです。

この件では、アレックは、後にプロデュースした「アクシデンタル・ラバー」(ラブ・アンド・キッス)や「サイモン・ピーター」(スフィンクス)で、「Love In C Minor」と似たような曲調の部分をわざと(?)入れて自己主張したといわれています(私は確認していませんが)。

いやあ、“カネの成る木”になったディスコ界では当時、ドロドロしたエピソードもいろいろとあったようであります。

いわくつきとなった「朝日のあたる家」の2つのディスコバージョンのうち、エスメラルダの方は、カナダのUnidisc盤が比較的容易に入手できます(写真右下)。リベラシオン盤(写真左上)は、音質はいいもののどこか怪しげなロシア盤しかなく、しかもプレス枚数が少ないため、入手は難しくなっています。YouTubeのビデオクリップは、エスメラルダ盤の変なやつしか見つかりませんでした。

サンタの朝日のあたる家