Pet Shop Boys80年代中盤のデビュー直後から、ディスコで存在感を示し始めたのが英国最高峰の“男性ポップ・デュオ”ペット・ショップ・ボーイズであります。「英国発」ということでは、チョット前にジョージ・マイケルらの「ワム」なんていうのも大人気になっていたのですが、すぐに解散したので、やはりペットさんが「最高峰」でありますな。

ペットさんはボーカルの二ール・テナントとクリス・ロウの二人組。1984年の「ワン・モア・チャンス」というのが一応のデビューで、続いて「ウエストエンド・ガールズ」というシングルを出します。シンセサイザーへの関心が高かった彼らは、当時を代表するディスコジャンルであるハイエナジーに強くひかれており、プロデュースをかのボビー・オーランドに依頼したのでした。

結果として、「ウエストエンド…」は欧米のディスコを中心に少し人気が出ましたが、まだヒットまでは至りません。彼らは「何かイマイチだったなあ」ということで、ボビーとの契約を打ち切って再出発。別のプロデューサーと組んで、「オポチュニティーズ」、さらには「ウエスト…」をセルフリメイクして発売し、特に「ウエスト…」が全米ディスコチャート2週連続1位を獲得(86年3月)するなどの大ヒットとなりました。ここで破竹の大ブレイクを果たしたのです。

ただ、「オレが育ててやったのに裏切った」と感じたボビーとの関係は、決定的に悪化しました。両者協議の末、ボビーが関わった初期の作品については、ボビーが大方の権利を保持する契約にさせられたと伝えられています(この結果、ボビーは巨額の富を得た)。

ウエストエンド・ガールズについては、私も旧バージョンの方の12インチを買ったときのことを覚えています。場所は、昔よく行っていた札幌の「ディスク・アップ」という輸入盤店でした。いつもはけだるい感じの店員氏が珍しく、「これいいよ!」なんて明るくすすめるのです。「ボビー・オーランドだし、まあいいかな」と、なんとはなしに買ってみたら=写真=、これが意外にもスゲエ暗〜い曲だったのですよ。もちろん、ディスコでもまったくかかりませんでした。

それでも、しばらくして新バージョンの「ウエストエンド・ガールズ」が大ヒットして、ディスコでかかり始めたときには、「先に知っていたもんね」と自己満足したものでした。やっぱり新バージョンの方が断然出来がよく、2枚目を買うハメにはなりましたが。

周知のとおり、ペットさんはその後、現在に至るまでトップ・デュオであり続けています。デビュー当時から変わらないのは、ダンスミュージック、しかも「ディスコ」へのこだわりであります。ビレッジピープルの「ゴー・ウエスト」とか、ボーズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」などのリメイクもやっておりますしね。ここまでディスコへの敬愛を隠さないメジャーアーチストは、ほかにあまりいません。

ある雑誌のインタビューで、二ールは「僕がディスコ、特にハイエナジーミュージックが好きなのは、名もなく、名声もなく、はかない存在だからだ」と語っています。う〜ん、なんとなく分かります。彼らの曲って、奥深いノスタルジーや優しさを感じさせます。歌詞も、ややシニカルながらも、幻想的で洗練されており、非常に評価の高い部分であります。これまた「泣きながら踊る系」といえるでしょう(ウソ)。

ペットさんのCDは、12インチバージョンを含めてすんごくたくさん出ておりますが、一番のオススメはやはり、そのものずばりのタイトルの有名なベスト集「ディスコ」(86年)。新バージョン「ウエストエンド…」のシェップ・ペティボーン・ミックスも入っています。あとは5年前発売の英国盤「Behaviour/Further Listening」と「Actually/Further Listening」がヨイ。どちらも12インチバージョンや未発表バージョンが数多く収録されております。