2006年09月03日
Anita Ward (アニタ・ワード)
「ねえ、なんとかベルってないのお〜? ぽ〜ん、ぽ〜んっていうやつ…。あれ好きなんだよねえ〜」。およそ10年前のこと、私が遊びでDJをやっていたあるダンクラ・パーティーで、30代OLからこうけだるくリクエストされたのが、アニタ・ワード「リング・マイ・ベル」(79年)でありました。イントロの「ぽ〜ん、ぽ〜ん」でたいていの人は分かってしまう(わけはない)のがこの曲です。っていうか、アニタワードといえばリングマイベル、リングマイベルといえばアニタワード。彼女は世界ディスコ界では、「ディスコ・ダック」(76年)のリック・ディーズ(Rick Dees)とならぶ“いとしの一発屋”なのであります
。何しろ、どちらも全米一般チャートで堂々の1位を獲得したのですが、その後は真っ逆さまでした。
1957年に米メンフィスで生まれたアニタ(アニータではない)は、やはりほかの黒人シンガー同様、ゴスペル教会で歌い始めました。勉強もできたため、学校卒業後は小学校の教職に就いたものの、歌が忘れられません。そこである日、まあまあ有名だったR&Bシンガー兼プロデューサーのフレデリック・ナイト(実はこの人も一発屋)に歌を聞かせたところ、「コレはイケルる!」ということで急遽、アルバム制作に入ったのでした。
デビューアルバムに収録するために、フレデリックはいくつか曲を作りました。けれども、レコードの収録キャパ的に「もう一曲、なんか欲しいなあ」ということになったのです。既に発売日までの日数的に余裕がなかったので、彼は「ええい、前に作曲しておいたのを使っちゃえ!」ということで、それを多少修正した上で「リング・マイ・ベル」としてアルバムに入れたのです。
この曲、もともとは、後に少し売れた少女歌手ステイシー・ラティソーのために作ったものでしたが、どういうわけかお蔵入りになっていたのでした。“子供用”ですので、歌詞は「恋する少女」が友人との電話で「あの人かっこいいよね」みたいにぺちゃくちゃしゃべっているような内容。あまりに幼すぎたために、「今夜はあなたと2人っきり。ねえ、あなた、私のベルを鳴らして! 雰囲気を盛り上げて!」という風に多少(相当に)、色っぽく変更したというわけです。
このアルバムは、彼女にとって、ゴスペル少女時代からの夢の実現そのものでした。ですから、「リング…」以外のほとんどの収録曲は、アーバンソウルなしっとりした曲ばかりなんです。彼女は「リング…」を歌うのを最初は凄く嫌がっていたのですが、「今はディスコの時代なんだ。だから一曲ぐらいほしい」とフレデリックが強く主張したため、結局は妥協したのです。アルバムタイトルも「Songs Of Love」ですしねえ。本当はバラード歌手、R&B歌手を目指してたのです。
ところが、何の因果か、「リング…」はあれよあれよと言う間にチャートを駆け上っていきました。アニタは突然にして、スター歌手の仲間入りをしてしまったのです。
…と、このあたりは、前回投稿のイブリン・キングと同じような「ラッキー・デビュー物語」ですが、そのあとがいけません。「リング…」以降にシングルカットした曲が、見事に大コケだったのです。大衆が望んでいたのは、やはりディスコであって、「アニタのバラード」ではなかったのでした。「安定した教職を捨ててまで歌手になったのに。私の青春を返して!キーッ!」と心の中で叫んでいたのかは知りませんが、もはや過去の人になっていたのでした。残酷なものです。
それでも、アニタの「リング…」がディスコ史に残した輝かしい足跡は、消えるものではありません。あの「ぽ〜ん」のイントロはどうしたって印象的です。実は「シンセ・ドラムを使った最初のディスコ」とも言われていますから、ビートの刻み方もしっかりしている。私の好きな曲の一つでもあります。
意外にも、この人のCDはけっこう再発されています。写真はドイツ盤のベストで、「リング・マイ・ベル」の12インチバージョン入り。この一曲のおかげで、「ベスト盤」が出ちまうんですから、偉大です。
ところで、「一発屋キング」リック・ディーズのその後は、けっこう明るいものでした。歌手としてはやっぱりダメダメだったものの、米国の超人気ラジオDJとして、いまだに大活躍中のようであります。
画質はイマイチですが、2人の当時の映像をYouTubeで見つけました。「間抜けでおバカでハッピーで哀しい」ディスコ・ダックと、「ベルを持つ右手がただ哀しみを誘う」リング・マイ・ベルであります。
トラックバックURL
トラックバック一覧
1. 共感してくれる人がいるって事 [ 優希 ] 2006年09月04日 03:47
ブログを始めて良かったと思う事は私と同じように悩んでる人、私と言う人間を知ろうとしてくれる人に本当にちっぽけで、何も出来ない私でも知ってもらえる価値がある、生きてる意味がある、そう思える瞬間がある事・・・・
コメント一覧
1. Posted by のぞみ
2006年09月03日 22:19
リングマイベルはベルがスラングであるとの解説を聞いた事があります。
真偽のほどはともかくとして、学校の先生がいったい全体どうしたのやら。。。
真偽のほどはともかくとして、学校の先生がいったい全体どうしたのやら。。。
2. Posted by たかはし
2006年09月04日 02:06
彼女も声に特徴があってすぐに誰かわかる系ですが、そこまで良い曲に恵まれませんでしたね。セカンドアルバムで大コケ。何となく同期のファーン・キニーと被ります。
僕はミディアムの「MAKE BELIEVE LOVER」は隠れ名曲だとおもいますが、世間的には「RING MY BELL」の印象が強すぎて再評価には至らない様子。哀しいですね。
僕はミディアムの「MAKE BELIEVE LOVER」は隠れ名曲だとおもいますが、世間的には「RING MY BELL」の印象が強すぎて再評価には至らない様子。哀しいですね。
3. Posted by
rise
2006年09月05日 02:14
こんばんは、いつも”熱い”記事読ませていただいてます。
Ring My Bellなつかしいですね〜。
残念ながらポーン・ポーンではわかりませんでした・・まだまだ素人ですね。
昔、ブロンスキビートのHit That Perfect Beatの原題がわからなくて”田舎で貧乏”かけてや〜と言ってたようなもんですね。(^^;)
Ring・・のビデオが鳥肌もんでした!
Ring My Bellなつかしいですね〜。
残念ながらポーン・ポーンではわかりませんでした・・まだまだ素人ですね。
昔、ブロンスキビートのHit That Perfect Beatの原題がわからなくて”田舎で貧乏”かけてや〜と言ってたようなもんですね。(^^;)
Ring・・のビデオが鳥肌もんでした!
4. Posted by mrkick
2006年09月06日 00:04
コメントありがとうございます。「イ・ナ・カ・デ・ビ〜ン・ボ〜」ですか。いいですねぇ。今後ともよろしくお願いいたします!
5. Posted by ミィナ
2007年01月28日 21:30
彼女の声って可愛いDiscoでも受けてましたね好きな方でしたが…サビの曲で両手を合わせて 動かしてダンスする方達が何故か…多くフロアに行きたく無い思い出が…まだ幼い?私は…リングマイベルは違う系だと…当時思うミィナでした
6. Posted by mrkick
2007年01月29日 10:27
コメントありがとうございます。何と興味深いエピソードでしょうか! 「リングマイベルで合掌ダンス」・・・なんだか宗教色あふれる神秘的な光景ですね。ディスコの原点をみるような思いもいたします。



