グレイス・ジョーンズグレイス・ジョーンズは、ディスコの奇天烈さを象徴しています。その風貌や演出は、観る者に強くアピールして、印象づけずにはおかないのです。

まずこの人は、女性です。私は高校生のころからしばらく、男だと思っていました。1952年にジャマイカに生まれた彼女は、NYに移り住んでからモデルとなり、それから70年代に音楽の道に入ります。ジャマイカ時代は陸上の選手だったとか。

中性的な姿格好が受けて、特にゲイが集まるディスコで人気が出始めました。小ヒットした「ソーリー」('76)に続いて出した、トム・モールトンのプロデュースによる「アイ・ニード・ア・マン」('77)が全米ディスコチャートで1位となり、一躍有名に。前に紹介したNYの最高級ディスコ「54」では、当然ながら常連かつ人気者になりました。

彼女のジャケットを見ていても、どれもけっこうセンスがよいと思います(賛否両論あるが)。彼女のスタイルはもう超人的です。手足が細長くて、黒ヒョウのようです。日本人では絶対にありえない。得しています。

80年代に入ると、デザイナーのジャン・ポール・ゴルチェの専属アーチストとなり、ファッションと曲の両方を売り出しまして成功しました。

85年には、トレヴァー・ホーンのプロデュースで「スレイブ・トゥ・ザ・リズム」という曲を再びチャート1位にさせています。日本では今ひとつですが、欧米では今なお根強い人気を保っています。

彼女をひと言でいうと、バブルなセレブ。歌はさほど上手くないんですよ。ルックスと企画力であそこまでいった、というのが感想ですね。ただ、ディスコらしいうさん臭さがぷんぷんしていて、その点は逆に好感が持てます。

写真はアルバムCD「スレイブ・トゥ・ザ・リズム」。見るからに黒ヒョウです。ヒットした表題曲のほか、レゲエとかロックとかニューウェーブとか、いろんな要素が入った曲が収録されていてけっこう楽しめます。