2005年07月08日

ハイ・エナジー

ハイ・エナジー80年代前半のディスコを彩ったハイ・エナジー・サウンドは、ロンドンの「レコード・シャック」というレーベルが生み出した。シャック(shack)とは、「丸太小屋」の意味を持つ。

レコード・シャックは80年、ディスコミュージック専門の小さな輸入レコード店として創業。82年にはレコード制作に乗り出し、「イーズ・ユア・マインド」(タッチダウン)という曲を最初にリリースして以降、次々とディスコヒットを世に送り出した。

プロデュースはイアン・レヴァインというロンドンのDJが主に担当。「ソー・メニー・メン・ソー・リトル・タイム」(ミケル・ブラウン)、「ハイ・エナジー」(イブリン・トーマス)など、おなじみの大ヒットを連発していった。コンセプトは「モータウンのようなメロディーを持ったテクノ・ポップ」だったそうだ。

ハイ・エナジーは、後のユーロビートや日本特有の「パラパラ」に継承されている。どちらかというと、「イケイケミーハー系」の王道を行く音である。「老若男女、おばかになって踊ろう」という意味で、よく出来た内容だと思う。キャッチーなメロディーと分かりやすくて手堅いビート進行は、哀愁調のユーロビートともども、特に「日本人受けする」と言われた。

実際、日本の場合、ディスコは「盆踊り」だった。地域の人が分け隔てなく参加できる、舞踏の儀式。ついでに言えば、現在の盆踊りは、500年前の室町時代の「風流(ふりゅう)踊り」にまでさかのぼることができる。当時の文献によれば、若者たちが異様な衣装を着て、集団で激しく踊り狂い、ときには踊りグループ同士の「抗争」にまで発展したという。

風流踊りのおバカさ加減って、「パラパラ族」はもちろん、かつての「竹の子族」「ローラー族」にも通じるのではないか。同じ振り付けで、同じステップを踏んで高揚感を味わうわけだ。適度に「非日常」や「狂気」もはらんでいる。

大昔のように五穀豊穣なんかの「祈り」まで込められているかは分からないが。「皆でおばか」のつもりが「俺たちの方がおばか」と競い合うことになってしまう点なんて、いかにも日本人らしいという気がする。

軽さが持ち味のハイエナジーの元祖「レコード・シャック」。基本的に「大衆的おバカディスコ賛成」の私にとっては大切なレーベルなのだが、こんなエピソードもある。

ジャズ・ファンクとかフュージョンの分野で80年代、「インビテーション」などのヒットを飛ばした「シャカタク」というグループがいたが、これはレコード・シャックのスペルをもじって命名された。無名のころ、メンバーが最初に音源を持ち込んだのが、なんとレコード・シャックだったのだそうだ。

持って行く先がちょっと違うんじゃないかと思うが、それでも2、3千枚プレスして販売したところ、ばか売れして手に負えなくなってしまい、メジャー大手ポリドールに権利を売ったという逸話がある。

「インビテーション」は、私が通っていた札幌の大箱ディスコで、「ソーメニーメン…」のような大盛り上がりのラストの曲が終わった後、照明が一挙に明るくなったときにかかっていた。「非日常」の終わり、つまり閉店を告げる曲だった。「インビテーションはディスコではない」ということが、こんなところでも証明されていたのだ。

写真のCDは、レコード・シャックの2枚組み12インチ集で、AWESOME RECORDS盤。音質ばっちり。主なヒット曲が網羅されており、これがあれば十分だと思う。





トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by chibigyang   2005年12月06日 18:25
RecordShackRecordsは僕にとっては思い出のレーベルのひとつであり、やはり代表曲であるSoMenyMen〜のMiquelBrownに英RecordMIRRORのDISCOCHARTであるBoysTownChartの名称を変えるきっかけとなったHI−ENERGYのEvelynTohmasなどなどこのレーベルは83〜84年に一世風靡したと思います。時を同じくしてPROTOからはDIVINEにhazellDeanあたりが頑張っていた時代でしたね。SHAKATAKのINVITATIONがかかるとフロアが明るくなり、FruitCakeのILikeTheWayで終わるのが当時の釈迦曼でしたね。
2. Posted by mrkick   2005年12月06日 18:42
コメントありがとうございます。シャカタクのインビテーションで踊る人はさすがにいませんでした(笑)。時間にして1時か1時半ごろ。地下鉄ももう終わった後だし、お金もなかったし、けっこう某札幌近郊の実家まで何時間もかけて歩いて帰った記憶があります!「ザ・情熱」の日々でした。
3. Posted by chibigyang   2005年12月06日 20:46
僕は当時、DISCOの次に角栄やスイングダック(ご存知ですか?いわゆるPUBで男も女もナンパ目的に利用する奴ばかりゴロゴロいた店です)という店に流れて大暴れの週末を毎週送っておりました。今考えると恥ずかしすぎます・・・
4. Posted by mrkick   2005年12月06日 23:23
以上の2件とも存じませーん。「朝まで」のパターンのときはつぼ八に行ったり、喫茶店でケーキ付きコーヒー約1000円を頼んで粘ったり…でしょうか。でもお金が足りなくて、ことごとく歩いて帰ってた気がします。
5. Posted by bobby_Q   2006年07月05日 15:42
シャカタクはシャックからつけたとは初耳でした。
でもプロデュースはパッションのナイジェルライトだとかあの辺ですよね(笑
6. Posted by mrkick   2006年07月05日 21:10
コメントありがとうございます。シャカタクでいえば、Down On The Street(84年)などはディスコでOKすよね。確かマジ○○でも聞いたような…。
7. Posted by bobby_Q   2006年07月06日 11:42
この前やっと12”買いましたので(笑
今まで、まいっかと買わずにいたら、急に欲しくなって数年・・・
8. Posted by mrkick   2006年07月06日 15:29
そうでございましたか(笑)。またお聞かせください。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Archives
profile
mrkick (Mr. Kick)
本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。44歳。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター。踊る機会はめっきり少なくなったが、CD&レコードの収集は28年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick@livedoor.com
Photo
検索

このブログ内
ウェッブ全体
(うまくいかない場合は、更新ボタンでページ再読み込みを!)
訪問者数
最近の訪問者数グラフ

    blogramボタン
    blogram投票ボタン
    QRコード
    QRコード
    livedoor Readerに登録
    RSS
    livedoor Blog(ブログ)