ローラ・ブラニガン「80年代白人女性ピンシンガー」シリーズの続編は故ローラ・ブラニガン。来月、1周忌を迎える。よくあることだが、「最近なにやってんだろう」と思っていたら、新聞のベタ記事なんかでその死を知ってしまう――この人の場合もそうだった。脳動脈瘤で突然の死。

ど迫力系のキム・カーンズやボニー・タイラーと違って、パワフルでありつつ、伸びやかで繊細な声の持ち主。「明るく楽しい」ディスコに見事に向いている。「グロリア」に「セルフ・コントロール」に「ラッキー・ワン」。いやあまあ、「踊らされた」ものだ。メロディー・ラインは哀愁ユーロディスコ的な美しさを持ちつつ、安っぽく流れていない。

「グロリア」はフロアの盛り上がりタイム向けのアップテンポ。学校をさぼって通った喫茶店でもよく聞いたな。「セルフコントロール」は、ややスローテンポで、午後7時半ごろ、少しずつ盛り上がろうとするフロアでよく耳にした。「ラッキー・ワン」は、間奏のバックコーラスとボコーダーのかけあいが抜群にカッコよかった。

何だかべたぼめしてしまうが、享年まだ47歳。早世のディスコ系ミュージシャンは数多いけれども、私にとって、特に感慨深いのがこのアーチストなのである。

ローラの「グロリア」や「哀しみのソリテア」などで踊りほうけていた83年、父が44歳で突然死したのだが、死因はローラと同じ脳動脈瘤だった。脳の血管に出来たこぶが破裂し大量出血して、意識を失い、急逝した。でも、悲しみはあったけれども、やたら厳しい人だったので、内心「これでうるさいのがいなくなって遊べる」と思ったのも事実だったのである。しんみりと反省せざるをえない。

…と、ディスコを語るとき、どうしてもときどき「たそがれモード」に入る悪い癖が出る。ノスタルジーでディスコを語るまい、とは思っているのだが…。それでも、温故知新とはよくいうが、歌が死後も聴かれ続けるって大変なことだと思う。少なくとも「死んだら終わり」ではない。今の若手アーチストにサンプリングされたり、カバーされたりして、再生されることだってあるのだ。

ローラについては、欧米のインターネットの掲示板で、いまだに惜しむ声が尽きない。確かに、当時のアルバムを今聴くと、私でさえ気になるような音作りの古臭さはあったりするのだが、歌唱力はまことにすばらしい。

ダンスチューンだけでなく、バラードも良い。アルファビルというドイツのダンス系グループがはやらせた「フォーエバー・ヤング」のスローバラード・カバーなんて絶品だ。「永遠に若く生き続けたい」なんて歌詞は、ちょっと暗示的でもある。

写真のCDは、83年にビルボード一般チャートで7位まで上昇した「哀しみのソリテア」が入ったアルバム「ブラニガン2」。笑顔が印象的だったのでこれにした。