ビルボード・トップ・ヒッツ私が18歳だった1983年は、洋楽ヒットの多くがダンスミュージックといわれた。ディスコ好きのほとんどは、ビルボードチャートにも通じていた。ビルボード一般チャートの上位曲が、がんがんフロアでかかっていた。

写真は、CD再発レーベル「ライノ」が出したビルボード年間チャートコンピの1983年のもの。収録されているのは、メン・アット・ワーク、トト、ストレイ・キャッツ、マイケル・センベロ、エディ・グラント、スパンダー・バレー、ボニータイラー、グレッグ・キーン・バンド、カルチャー・クラブ、エア・サプライ。さすがにエア・サプライでは踊れないが、ほとんどがディスコでもおなじみのアーチストである。

実はこのコンピ、ビルボードの本当の年間チャートと正確に連動していない。この年の「本物」年間チャートは、1位がポリス「見つめていたい」、2位がマイケル・ジャクソン「ビリージーン」、3位がアイリーン・キャラ「フラッシュ・ダンス」、4位がメン・アット・ワーク「ダウン・アンダー」、5位がマイケル・ジャクソン「今夜ビート・イット」などとなっている。これらはディスコヒットそのものといえるのではないか。

「本物」の6位以降の顔ぶれをみると、マン・イーター(ホール&オーツ、7位)、マニアック(マイケル・センベロ、9位)、スイートドリームス(ユーリズミックス、10位)、君は完璧さ(カルチャー・クラブ、11位)、カモン・アイリーン(デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、13位)などと続いている。これまたディスコ!!!である。

この年はマイケル・ジャクソンのスリラーがバカ売れしたことで記憶されている。でも、一度死んだはずのディスコが、多少のロックやニューウエーブのテイストを身にまとい、再増殖を始めたころでもあったのである。

このころの基本は、やはりシンセサイザーなど電気音の発達にあるが、一般チャートだけに、同じダンスミュージックでも、かつての典型的な「ドンドコ系」からは変化して、メロディーなどは多様化している。

ただ、ジャンル化が進んだ今と違って、米国でも日本でも「大衆音楽」という言葉が生きていたから、どれも老若男女にとって耳に馴染みやすい曲ばかりだ。ヒット曲のビデオクリップを流していたTV局であるMTVという存在も、そうした大衆性を担保していた。

写真のコンピで特筆すべきは、エレクトリック・アベニュー(エディ・グラント、本物チャートで22位)ではないか。けっこうディスコでも聞いたが、レゲエ調で、「ポッポコ、ヘッポコ」と電気効果音の使い方が変てこな曲だったのを思い出す。ドレッドヘアのエディが登場するMTVのビデオクリップも変だった。その後、小ヒット程度しか出していないので、ほぼ「一発屋」とみて間違いないけれども、印象深いアーチストである。