スペシャルズスペシャルズは、80年代前半、フロアの最高潮の盛り上がりタイムによくかかった。ただし聞いたのは「リトル・ビッチ(小さい悪魔)」のみ。一緒に「ワン、ツー!!」の掛け声を上げるのが約束事だった。2分半しかない超短い曲なのだが、かなり早いテンポなので、踊った後は疲れてしまったものだ。

アルバム自体の発売は79年なのだが、80年代に入ってもかなり長い間、ディスコで生き残った珍しい曲でもある。いわゆるスカ・ビートで、英国ではパンクと並んで若者(特に不良)に人気があったジャンルだ。スカはレゲエのルーツでジャマイカが発祥の地。70年代になって中南米から大量の移民労働者が入ってきたことを背景として、海岸部の工業都市を中心に広まっていった。

80年代には、ディスコに英国モノがあふれていた。スペシャルズだけではなく、パンク系もロック系もニューウェーブ系も全盛。やはりヤズーやデペッシュモードのようなテクノ系が強かったのだが、シンセ音をあまり使わないデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズやビッグ・カントリーなんていう渋めのものもよく耳にした。

「ジャスト・ゴット・ラッキー」などのヒットがあるジョー・ボクサースなんてのも良かった。労働者階級の象徴であるデニムのオーバーオールを着て演奏していたニューウェーブロック系の人々である。いかにも英国の古い工業都市で生まれ育った若者といった風情。でも、踊りやすい曲が多かった。

スカにしろパンクにしろ、当時の英国が今以上に失業問題が深刻で、かつサッチャー政権下で階級格差もさらに広がった時期だからこそ、盛り上がった。英国とアイルランドとの宗教紛争もまだひどい時期だったし、なんか苛立ちがあったのだろう。でも、どこか反抗的な音は、ディスコでも受け入れられる素地がある。わけの分からない混沌とした闇と光の中で、皆でストレスを解消できる格好の場でもあるのだ。

ちなみに、スカ・レゲエ好きの米フロリダ在住の米国人の友人に言わせると、「スペシャルズはスカとはいえない」ときっぱり。本来は、もっとゆったりとした能天気な音なのだという。まあ、「何でもありのディスコ」ということからすれば、あまりに厳密なジャンル分けこそ、本来、野暮なことではあるが。