Boys Town Gang日本では「君の瞳に恋してる」があまりにも有名なBTG。でも、世界的にはほかにもいくつかディスコの名曲を残しています。このCDは後に発売された国内盤ベスト(ビクターエンタテインメント)よりも収録曲数が少ないのですが、Disco Kicksのロングバージョンが入っていて貴重です。でも、ベスト盤よりも珍しいとはいえ、中古CD屋では300円とかで売られているところが悲しいのですが。

BTGについては、スリー・ディグリーズのカバー「天使のささやき」が好きな曲です。チャートインはしなかったものの、哀愁誘うメロディーが耳に残る逸品です。このCDにもベスト盤にも入っています。数年後、マグダ・レイナという女性もこの曲をカバーしていて、米ディスコ・チャートでは53位に入る健闘を見せています。日本のディスコでもよくかかっていました。

レーベルはMoby Dick。米サンフランシスコに拠点を持ち、ハイエナジー系の曲をよくリリースしていました。代表的なのはSex DanceやRocket To Your Heratで有名なLisaですが、ヒッピーやボヘミアンが多く集まるSFの自由な土地柄もあり、ゲイ・アーチストが多数、関わっていました。80年前後のヒットメーカーであるパトリック・カウリーもその一人で、American Dream(演奏アーチストはHot Posse)というヒット曲をこのレーベルからプロデュースしています。

このパトリック・カウリーは残念ながら、82年、ほかの多くのディスコアーチストと同様、エイズで亡くなってしまいました。ボーイズタウンギャングのプロデューサーのビル・モトレー(Bill Motley)も86年、エイズで亡くなっています。今と違って、「ゲイがエイズに感染する」というケースが多かった時代でした。フリーセックスとドラッグという快楽主義に彩られたディスコは、エイズの広がりとともに死んだとも言われています。

ディスコ文化は、こうした「しゃれにならない」ことは致命的です。「底抜けにおばか」でいられるうちが華なのです。日本のバブル経済期後半、東京六本木の「トゥーリア」で起きた、死傷者を何人も出した機材落下事故にも、同様のことが言えると思います。快楽主義とは、線香花火のようなもので、夢の火種がぽとりと落ちると、一気に暗くなってしまうものなのです。

「君の瞳…」は、私が7、8年前、ダンスクラシック系のパーティーDJをやっていたときにも、よくラストにかけていました。だって必ず盛り上がるんですから。狂喜乱舞状態になる。そんなラストシーンが決まった後、ゆるいスロー系の曲に変えて、照明を明るくして…。「宴の後」は、心地よさとともになんだかもの寂しさも漂います。踊り狂った自分を少し気恥ずかしく思ったりして。一気に日常に引き戻されます。

ディスコは、ばか明るくて楽しいだけではない。いくばくかの哀しみもたたえているからこそ、人の心にいつまでも残るのだと思っています。

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