Chaka Khan今年のトリを飾るのはチャカ・カーン。あまりにたくさんのヒット曲があるので、名前を聞くだけでも満腹感が襲ってくるのですが、生い立ちがちょっと面白い人です。

1953年米イリノイ州生まれで、後にシカゴに移り住みました。本名はイベット・スチーブンスといいます。幼いころに父親が家を出て行ったため、母親に育てられることになりました。米国の情報データベースサイト「askmen.com」などによると、父親は、65年のマルコム尚纏Ω紂60年代後半から70年代にかけて反政府活動を行った黒人過激派組織「ブラック・パンサー(黒豹)党」の元メンバーでした。

母親はステージママのような存在で、貧しさに苦しみながらも、イベットと妹のイボンヌの歌の才能を見抜いていました。まだ10代だった二人にいつも付き添って、地元でのライブ活動を積極的にやらせていました。姉妹は早くも才能を発揮し、どこで歌っても大盛況でした。

おてんばで正義感が強かったイベットは、16歳のころに自らブラックパンサー党のメンバーとなり、黒人の貧しい子供たちに朝食を配る運動に関わります。同時に、アフリカの言語で「炎」を意味するチャカ(Chaka)を使い、チャカ・カーン(Chaka Khan)と名乗るようになりました。ステージ活動と左翼運動(!)で多忙になった彼女は、高校も中退しました。

そして、シカゴの人種混成の男性バンドである「ルーファス」にメーンボーカリストとして参加し、メジャー歌手としての道を歩み始めます。「You Got The Love」(74年、ビルボード全米R6Bチャート1位)、「Sweet Thing」(75年、同1位)など、立て続けに特大ヒットを繰り出すようになりました。左翼運動の方は、このころにはブラックパンサー党がFBIの弾圧により活動停止状態に追い込まれたため、いつのまにか足を洗ったようです。

「スター歌手」としてのそれから後の安定した活躍ぶりは、言うまでもありません。ルーファス名義、ソロの両方でヒットを連発します。

彼女の声は、何と言っても広い音域が最大の特徴。私は個人的には「ネコみたいな声だにゃ〜」というわけで、高音域についてはさほど好きな声質ではないのですが、その卓越したキャリアには尊敬の念を禁じえません。ディスコブームの風にもふわふわ〜と乗って、「I'm Every Woman」(78年、同1位)や「Do You Love What You Feel」(79年、同1位)といったダンクラの大定番を世に送り出したわけですね。

この間、妹のイボンヌもタカ・ブーム(Taka Boom、ブーンとも)と名乗り、「Red Hot」(79年)や「Night Dancin'」(同)といったディスコヒットを放ちました。いずれも非常にノリの良いダンサーです。

私自身のディスコ体験から言えば、チャカは80年代が印象深い。「What Cha' Gonna Do For Me」(81年、同1位)なんて、ディスコブームが終わった後の、アダルティでしっぽりしたブラコン・ダンスミュージックの心意気を見せてくれています。

さらに、84年、プリンスの曲である「I Feel For You」で大爆発!。ここでキャリアのピークを迎えます。R&B、全米ディスコチャートでそれぞれ1位となり、ビルボード一般チャートでも自己ベストの3位に入りました。イントロやブレイクで、大御所ラッパーのメル・メルが「チャチャチャチャ、チャカカーン♪」とラップを披露しているほか、スティービー・ワンダーがハーモニカで参加しています。まあ、ディスコでも「これでもかっ!」って位に耳にしたものです。

このころのヒット曲については、ほかに「Ain't Nobody」(83年)、「This Is My Night」(85年)、スローバラードでは「Through The Fire」(同)なんてのもよく知られています。

その後、彼女は80年代後半〜90年代を通して、R&B界のトップグループに君臨し続けました。グラミー賞も8回も獲得しています。最近はさすがに勢いが衰えましたが、そのキャリアの長さと太さは特筆モノ。やはり貧しくて苦労した幼少時代、そして左翼運動(!)にまで没頭した少女時代が、底知れぬパワーを呼び起こしたのでしょうか。

CDは、当然ながらたくさん出ています。上写真は、ソロになってからの代表曲がほぼ網羅されたベスト盤で、ワゴンセールで500円以下で手に入るほど一般的です。ただ、オリジナルの12インチバージョンが入ったものなどは意外に少ないので、どこかで発売して欲しいと願っています。