Ken Laszlo忙しさにかまけて更新を怠っておりますが、イタロもので印象深かったアーチストをもう一人。80年代中盤から後半にかかけてヨーロッパで活躍したケン・ラズロです。

86年4月に札幌から東京に移り住んだ頃、既にディスコ産業自体は衰退期に入っており、かつての“ディスコ王国”六本木などに古くからあったディスコは、客の数を減らしていました。割引券を盛んに配るなどして、客を呼び込むのに懸命だったわけですが、「マハラジャ」、「エリア」に代表される派手系ディスコについては「満開イケイケ!」という感じでした。

ときあたかも、日本はバブル経済の真っ只中。昨年公開の映画「バブルへGO!!」(「バブルでGO」ではない)で出てくるような浮かれた雰囲気が、ディスコにも溢れていたわけです。ボディコン、ワンレンの女性たちが狂喜乱舞する「お立ち台」が登場したのもこのころです。今、ディスコのことを尋ねられれば、40歳前後の普通の人は、この懐かしくも空しい「バブルディスコ」を思い出すことでしょう。

そんな派手系ディスコで最も盛り上がっていたジャンルが、文字通りイタリアで量産された「イタロディスコ」でした。つまり、日本で言うユーロビートの初期の曲。80年代前期に流行ったハイエナジーを土台としており、シンセサイザーを多様した豪華絢爛な曲調が特徴です。当時は、どれがどのアーチストなのか分からないくらい、同じようなアップテンポ・ナンバーがフロアに充満していたのを記憶しております。こうした曲が次から次へと繰り出されると、踊っているうちに頭の中が飽和状態になって、酸欠になることウケあいでした。

バブル期のユーロビートには、ストック・エイトケン・ウォーターマンのプロデュースで知られるバナナラマリック・アストリーカイリー・ミノーグあたりの大御所が含まれますが、マイナー系で一番、私の印象に残っているのがケン・ラズロの「トゥナイト」(1985年発売)ですね。上京したての私は、この曲によって「六本木の洗礼」(トホホ)を受けたといっても過言ではありません。

私がフロアでよく聞いたのは、いくつか出たリミックスものの一つ。「トゥ、トゥ、トゥ、トゥナイト♪」といった具合に、今聴くと「くどい!」と思うくらいに何度もサンプリングされたフレーズが出てきていました。「チャ、チャ、チャカーン」「ナ、ナ、ナ、ナ、ナインティー」みたいに、いかにも80年代的な展開です。

ほかのイタロ系アーチストにもいえるのですが、ケン・ラズロのプロフィールははっきりしません。判明したのは、Gianni Corrainiというのが本名らしいということぐらいで、どこの国の人なのかもいまひとつ不明です。

ただ、CDは欧州を中心に何枚か出ています。写真上はイタロ系のレーベルとして知られる独ZYX盤です。ほとんどが12インチバージョンで、日本盤のユーロビートCDシリーズである「ザッツ・ユーロビート」のVol.1にも入っている、「トゥナイト」のリミックス(前述のトゥ、トゥ、トゥ、トゥナイトのサンプリングバージョンとはまた別)も入っています。

ケン・ラズロには、トゥナイトのほかにも、「Hey Hey Guy」、「Don't Cry Tonight」といった曲があり、欧州や日本のディスコではそこそこのヒットとなりました。YouTubeを検索しますと、けいっこう彼の曲がアップされていました。ここではトゥナイトを張っておきましょう。「やる気のない歌いっぷりと白いブーツ」があきらかに印象的です。