Kat Mandu (Banjo)浮かれた時代の1980年代、燃え盛る真夏の若者の楽しみと言えば、ディスコとナンパでした……という与太話は別にしまして、元気いっぱいハイエナジー特集、今回はあのカトマンズであります。……えっ? あまりメジャーじゃないって? 確かに。しか〜し、私にとって代表曲「ザ・ブレイク(The Break)」(79年、全米ディスコチャート3位、YouTube音声ではじけてください)は、なんとな〜く思い出に残る一曲なのであります。歌もないのに。

「歌がない」。そう、つまりインストの名曲だということなのです。「エンジェル・アイズ」とか「ギルティー」とか「思いがけない恋(Unexpected Lovers)」などのヒット曲で、80年代ディスコフリークには大いに知られるカナダ発ハイエナジーのアーチスト「ライム(Lime)」の中心人物デニス・ルパージュが、70年代後期に手がけたディスコ・グループなのでした。

グループ自体の中心人物は南アフリカ出身の黒人アーチストであるジミー・レイ氏。この人自身、ギターのかなりの名手でして、ロックにディスコに、さまざまな売れ線アーチストのギタリストとして活躍もしていました。

さらに、彼は歌もそんなに下手ではありません。カトマンズのもう一つの代表曲である「アイ・ワナ・ダンス(I Wanna Dance)」では、ファンク風の華麗な(ただしいまいちインパクトの弱い)ボーカルを披露しております。

この人たちはこの「ブレイク」「アイワナ」だけでほぼ終わりなのですが、私にとって特に「アイワナ」はかなりの印象を残しています。なんと使用楽器の一つとして、珍しやバンジョーを使っているのですね。そう、アメリカのカントリー音楽なんかでよ〜く耳にする弦楽器です。意外なところでいきなり「ジャンジャカジャン」とバンジョーが入るディスコって、ほかになかなかありません。好事家にはうってつけのディスコの珍曲と言えるでしょう。

もちろん、最も売れた「ブレイク」もなかなかに良い曲です。ほんとライム的なアップリフティングないけいけディスコで、ライムの初期のインスト名曲「エージェント406(Agent 406)」と繋ぐとバッチリなのですね。実は今もちょこっと「ブレイク」と「エージェント」の2曲を聴き比べながらこれを書いているのですが、サタデーナイトの真夜中だからでしょうか、アラ不思議、リズムに合わせて体が自然に動き出して困ります(トホホ)。

実態が不明な点もあるライムと同様、ほとんどデニス・ルパージュの分身といえるカトマンズではありますが、東洋的ヒンズー的な粋なネーミングもさることながら、思いっきり「ハイエナジーといっても70年代だからシンセもしょぼいので、こんなもんでいいでしょ?」的な潔さと男らしさを感じさせるグループです。

アイワナについては私自身、「さあ、ひとしきり汗だくで踊ったことだし、トイレ行ってフリードリンクの薄い水割り飲んで休憩しようかな」っていうタイミングでかかると最高(?)だと思います。……いや、こういう一見場つなぎの曲って、実は自宅で聴く分には名曲だったりするのです。皮肉ではありますが。

写真のCDはそんなカトマンズのベストCD。やはりカナダのUnidiscレーベルで出ているやつで、これがほとんど唯一無二のCDです。比較的新しいリミックスバージョンが多く含まれていてちょっと残念ですが、貴重な再発モノです。ごく初期のハイエナジーの雰囲気を味わうには最適なグループであります。

さて、次回あたりからは久しぶり、こてこてファンクやらソウルやらブラコンやらへと移行することといたします。