Bionic Boogie 1st「ザ・ソウル」な重鎮が2人続いたので、今回は再び原点に返って「ザ・ディスコ」ということで。アメリカディスコの重要人物グレッグ・ダイアモンド(1949年生まれ)が手がけたディスコ・セッショングループ「バイオニック・ブギー」であります。

米ペンシルバニア州出身のグレッグさんは、ジャズピアノやドラムを演奏する腕っこきプロミュージシャンでしたが、70年代後半にディスコ界に参入して大変貌を遂げます。77年にスタジオミュージシャンたちによるバイオニック・ブーギーを編成して同名アルバム(上写真、LP)をプロデュースしたところ、瞬く間にディスコチャートを駆け上ったのでした。

このアルバムの代表曲、というかこの人の生涯を通じた金字塔は「リスキー・チェンジズ」(全米ディスコチャート1位)であります。とにかくこの躍動感!。もうのっけからピアノがビロンビロンと弾けまくり、「踊んねえと泣きをみるぜ」状態です。ソウルフルなボーカル(Zachary Sanders)が疾走しまくり、サビのコーラスが入るころにはもう、フロアは人いきれでむせ返っていることでしょう。ピアノ、コーラスだけでなく、煽り立てるようなストリングス、中間奏で前面に出てくるベース、パーカッションの絡み具合も絶妙であります。私はここに、70年代オーケストラ・ディスコの一つの頂点を見たのでありました。

といきなりベタ褒めしてしまいましたが、それほど思い入れのある曲となっております。個人的ディスコランキングをつけるとすれば、間違いなくベスト30位以内には入るでしょう(ほかにも沢山あるのでちょっと弱気だが)。

勢いに乗ったグレッグさんは、翌78年にはバイオニックの2枚目のディスコアルバム「Hot Butterfly」をリリース。中でもA面1曲目「Hot Butterfly」はルーサー・バンドロスがリードボーカルを務めていることで有名ですが、これはディスコっぽくないメロウ・ダンスナンバー。けれども、2曲目以降、かつて当ブログでも紹介したボマーズに似た感じがある「Chains」、「いま席に戻ったばっかだけど、また踊りに行くべきだよな」と思わせるような「When The Shit Hits The Fan」「Paradise」などの軽快アップリフティングナンバーが並んでおります。このアルバムも全6曲込みの扱い(オールカッツ)で米ディスコチャート8位まで上昇しました。

この時期、グレッグさんはまさに破竹の勢いでした。自身の名義でも「Star Cruiser」などのアルバムを発表し、「Danger」(79年、ディスコ21位)、「Tiger Tiger」(80年、同33位)といったヒットを出していますし、グロリア・ゲイナーアンドレア・トゥルー・コネクション、ジョージ・マックレーなどの人気歌手のプロデュースも次々に手がけています。「売れ線ディスコ請負人」の名をほしいままにしていたといえましょう。

しかし、またもや残念! 80年ごろを境にディスコブームが終わり、大衆にウケる曲調ががらりと変わってしまうと、すごすごと退散したのがグレッグさんです。「さらばグレッグ!」ということで、表舞台には二度と姿を現さなくなったわけですが、ディスコ史的には、その貢献度は申し分ありません。

さてCDですが、これまた残念! とりわけバイオニックのファーストアルバムは、各方面から待望されているものの未だ幻です。せめて「Risky Changes」が入ったコンピぐらいほしいものですけど、これも激レア輸入盤しかなく、ほとんどお手上げ状態です。

ただし、2枚目の「Hot Butterfly」はなぜか日本盤でのみCDが入手可(下写真)。再発元レーベルは、特にソウルファンにはお馴染みのP−Vineです。円高の折、輸入価格も高くつく海外のディスコマニアからは垂涎の的になっていますけど、日本ではまだまだ入手容易のようです。音質は文句なしですし、ディスコファンはとりあえず持っていて損はないと思います。でも、やっぱりバイオニック(グレッグさん)といえば「Risky Changes」ですから、ファーストのCD化を望みたいところですな。

Bionic Boogie