残暑厳しい折、今回は唐突にロック系ディスコをいくつか。……といってもかなり地味〜でして、でも当時、「こんなのがディスコで聞ければいいなあ」などとひそかに流行るのを期待していた(でも流行らなかった)曲たちです。

まず1曲目は、Flash And The Pan (フラッシュ・アンド・ザ・パン)というオーストラリアのポップ・ロックデュオの「Hey St. Peter(ヘイ・セイント・ピーター)」(77年)です。高校時代に聴いていたNHK-FMの深夜音楽番組「クロスオーバー・イレブン」でやたらとかかっていて、なぜかじわりと気に入ってしまった代物であります(Youtube動画↓)。



77年といえば「サタデーナイト・フィーバー」の影響でディスコブームが到来したばかりのころでした。チャートアクション的には、全米一般チャートで最高76位とふるわず。日本を含めてディスコでもほとんど無視でしたが、コーラスの「ヘイ!ヘイ!」なんてのはベタにノリがよく、中間奏の迫力のピアノもストリングスも鬼気迫る過剰さで身体を揺さぶります。フィルターがかったボーカルは、後のバグルズのヒット曲「ラジオスターの悲劇」(80年)を思い出させますね。

実は、この人たちは80年代に入ってから、「Media Man」(80年、米ディスコチャート82位)、「Waiting for a Train」(83年、英国チャート7位)、「Midnight Man」(85年、米ディスコチャート19位)などのダンス系ヒットを出しています。しかし、私はフラッシュ・アンド・パンといえばもう真っ先に思い出すのが「ヘイ!ピーター!」なのでした。

お次も同じくオーストラリアの正統派ロックバンド「Dragon(ドラゴン)」であります。本国ではそこそこ人気があったものの、世界大衆音楽史的には「Rain(レイン)」(84年、米ディスコ43位、米一般チャート88位)程度のプチ一発屋です。



ところが、このレインは非常にダンサブルでして、驚くほどに「シンプル・イズ・ベスト」な一品。ドラムビートの刻み方が「さあ踊れや踊れ」といわんばかりにソリッドかつ鋭角的である上に、コード進行やメロディーが奇をてらわずとても素直で、かの“真の一発屋”ロマンティックスの「トーキング・イン・ユア・スリープ」を彷彿とさせます。「さわやか哀愁ロックでダンシング!」てな気分になることウケアイです。

さて、しんがりを務めますは今回のイチ押し、ご存知「Golden Earring (ゴールデン・イヤリング)」で〜す!……えっ?知らない?……なんとまあ、こんな素晴らしい人々をないがしろにするとはもったいないことでございまする。

というのは冗談です。これまた実際地味な人たちでして、本国オランダでは絶大な人気を誇るのですが、ほかの国での知名度はいまいち……。けれども、82年に全米一般チャート10位まで上昇した「Twilight Zone (トワイライト・ゾーン)」は珠玉のダンサブルロックだと思っております(ディスコチャートには入らなかったが、しかもディスコフロアでも一度も聞かなかったが)。



この曲も上記フラッシュパン、ドラゴンと同様、律儀なベース&ドラム展開といい、2人の男性がうまく掛け合うボーカルといい、「おうお〜!!」というややトホホな掛け声といい、「男ロックだぜ魂」でストレートに身体にしみこんでくるタイプ。でも、旋律はなかなか切なくて泣かせる感じもある。フロアでかかったら、そこそこ人気が出たはずだったのではないでしょうか、と個人的には思います。

この人たちのデビューはなんと1965年で、2003年ごろにもニューアルバムを出しているという大ベテランです。まあ、ほぼ一発屋ですけど、私はこの一曲のためだけに再発アルバムCD「Cut」(下右写真)を購入したのでした。上掲Youtubeではライブ映像しかなかったのですが、このアルバムのスタジオ録音バージョンはずっと重量感があって、しかも8分近くある長モノです。

思えば、とりわけ80年代はロック系ディスコが花盛り。ほかにも、私がフロアで聞いたことがあるアーチスト名と曲名だけでも挙げておきますと……グレッグ・キーン・バンド(「ジェパディー」ほか)、スティーブ・ミラー・バンド(「アブラカタブラ」)、Jガイルズ・バンド(「堕ちた天使」ほか)、プリテンダーズ(「チェイン・ギャング」ほか)、ナック(「マイ・シャローナ」だけ)、ビリー・アイドル(「ホワイト・ウェディング」ほか)、ジョン・ウエイト(「ミッシング・ユー」)、スティックス(「ミスター・ロボット」だけ)、フォリナー(「アージェント」)、ミッドナイト・オイル(「パワー・アンド・パッション」)、メン・アット・ワーク(「ノックは夜中に」ほか)、スレイド(「ラン・ラナウェイ」)、ZZトップ(「レッグス」)、ロッド・スチュアート(「ベイビー・ジェーン」)、フランク・スタローン(「ファーフロム・オーバー」)、スターシップ(「ウイ・ビルト・シティー」)などなど。

いやあ、国もスタイルもさまざまで、個性が際立つ人々ばかりです。90年代以降にジャンルや客層が細分化する前の、華々しくも、やがて哀しき“ごった煮フロア全盛期”を実感いたします。

Golden Earring