ohioplayers-honey-galお久しぶりでございます。年の瀬の今回は渋〜い黒人ファンクバンド、オハイオ・プレイヤーズでごわす。

ディスコ的には、「ファイヤー」(74年、全米一般チャート1位、R&Bチャート1位、ディスコチャート10位)と「ラブ・ローラーコースター」(75年、一般1位、R&B1位)が代表曲になりましょう。いずれも彼ら独特の粘っこいボーカルとホーンセクションのみならず、ドライでシャープなギターリフがとても印象的です。

特に「ラブローラー」のイントロのギターリフは何度もサンプリングで使用されており、かのレッド・ホット・チリペッパーズも惚れ込んで自分たちの曲に取り入れたほどです。最近では、iPodのCMで使われた70年代ファンクテイスト満載のトミー・スパークスの「She's Got Me Dancing」にも、秘かに、いやモロに取り入れられていると感じました。

さて、ことほどさようにファンキーな彼らは、今からちょうど半世紀前の59年にオハイオ州はデイトンで「オハイオ・アンタッチャブルズ」として結成。その後、60年代に現在名に改称するとともに、メンバーチェンジを何度も繰り返して現在に至っております。

とにかく、70年代前半から中盤にかけての約5年間、爆発的に売れたという珍しい短期集中型バンド。「ラブローラー」が収録されたアルバム「Honey」(写真上、雑誌プレイボーイのモデルEster Cordetをフィーチャー)に代表されるエロジャケットでも、大いに名を馳せたグループであります。

この人たちの全体的な曲調としては、似たような老舗ファンクグループであるバーケイズをもっと泥臭〜く、そしてやや田舎臭くした感じでしょうか。踊りやすさはシンセサイザーなどオモシロ音をも効果的に使うバーケイズに軍配、といったところですが、とにかくジャケットに象徴されるようなブルージーな大人の色気がたっぷり詰まっています。「Honey」に入っている大ヒットバラード「Sweet Sticky Thing」(一般、R&Bともに1位)も、たいていの人が耳にしたことがあるはずの名曲の一つです。

ところで、「ラブローラー」には都市伝説がありまして、2コーラス目の後のブレイク部分で、ちょうどレコーディング時間中にスタジオ付近で殺された女の悲鳴が聞こえるとか聞こえないとか。その殺された女とは、謎めいた生活を送っていた「Honey」のモデルEsterそのものだという説まであります。まあどうでもいいことですが。

彼らは75〜76年のピーク期を過ぎた後、70年代後半のディスコ全盛期、さらに80年代の“ブラコン期”にもコンスタントにアルバムを出し続けたのですけど、典型ディスコになびいたわけではなくけっこう頑固。でも音楽的に時代に取り残されてしまったようで、セールスがどんどん落ち込んでいって哀しみもひとしおでした。

私などは、「Ouch!」とか「Graduation」といった80年代前半のアルバムに入っている「Star Of The Party」、「Fast Track」、「Follow Me」などのダンス系の曲がけっこう好きなんですが、この時代に入った途端に特別に重要になったシンセサイザーの使い方がとにかく野暮ったくて、「こりゃ売れないよな」と妙に納得させる内容にはなっています。

それでも、これまでも、そしてこれからも繰り返し思い出される名ファンクバンドであったことは確かです。CDの再発ぶりもまずまずで、まずはたいていのヒット曲が収められているベスト盤「Gold」(下写真)から入るのが妥当かな、という気がします。いやいや、男性諸兄などの「エロジャケ買いじゃ!」という展開も可です。

でもまずは、上写真「Honey」にも「Gold」にも入っている「ラブ・ローラーコースター」――結局この線から、めくるめく彼らなりのダンスシーンを語るのが筋というものでしょう。

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