France Gal今回はメジャーもメジャー、フランスが生んだ2人の“永遠のアイドル”、フランス・ギャルとシルビー・バルタンを紹介しちゃいましょう。もちろん本来ディスコ人じゃないのですけど、ディスコをやった時代があるということで、一度紹介しようと思っておりました。

まずは「歌ヘタかわいい」と大人気だったフランス・ギャル(1947年生まれ)。この人は60年代から「夢見るシャンソン人形」「ベビー・ポップ」などのお馴染みの国際的ヒットを繰り出し、勢いが衰えた70年代後半に「ディスコ化」。「ダンシング・ディスコ(Dancing Disco)」という見事に分かりやすいタイトルのアルバムを発売し、注目を集めました。続く翌78年には邦題「誘惑のダンス」で知られる「Viens je t'emmene」というシングルを発表しています。

まあ、どれも内容的には、少女アイドル時代の延長線上ですので、「ザ・フレンチポップ・ディスコ」といった感じの軽〜いダンスチューンです。アバに代表される欧州歌謡ディスコ、つまりこのところ紹介し続けている“シュラーガー”のノリに溢れているわけです。実際、フランス・ギャルは65年には、欧州の音楽祭であるユーロビジョン・コンテストで優勝もしています(アバは74年に優勝)。

この人は、シンセサイザーがディスコ楽器の主役になった80年代に入っても、ダンス系のアルバムを出しました。中でも上写真の「Babacar」(87年、表題シングル曲Youtube)は「大人の女」の雰囲気に溢れておりして、元ゴーゴーズのベリンダ・カーライルあたりを思わせるロック系の“踊らせる”ディスコ曲が収録されています。

一方、こちらは「少しは歌がうまい」シルビー(1944年生まれ)も、60年代に「アイドルを探せ」「あなたのとりこ」、おまけに「わんさか娘」などの国際的ヒットを連発。

70年代には「そよ風のブロンド(Qu'est-ce qui fait pleurer les blondes? )」(75年)でディスコ化の口火を切り、78年には「ディスコ・クィーン (Disco Queen)」(78年)というあからさまな曲を発表。翌79年には英語バージョンの「I Don't Want The Night To End」というディスコアルバムを出しています。特にこのアルバムの表題曲は、全米ディスコチャートでも37位に入るなど、かなりの人気となりました。もともとフランス・ギャルより大人っぽいアイドルでしたので、少々ワイルドな「熱血ディスコ」に仕上がっております。

さらに、シルビーには1985年に出した「One Shot Lover」という意味深な英語の“発情ハイエナジーディスコ”(!)もあり、これまた80年代の“ロックディスコ”歌手ボニー・タイラーばりのアゲアゲな歌いっぷりを披露しています。

両人ともに、もはやピークをとっくに過ぎた時期に、安易に「ディスコ頼み」に走ったというトホホな事情も見え隠れ。セールスも往時と比べると「しょんぼり」の結末。でも、あまり耳慣れないフランス語圏のディスコというのも、“音度”がほんわかして味わいがあると思います。

ところで、国際的に知られるフランス語のディスコは少ないにせよ、「フランス発のディスコ」というのはけっこうあります。アーチストで言えば、前々回に紹介したオッタワン、セローンのほか、フランスを舞台に活躍したスイス人のパトリック・ジュベ(Patrick Juvet)などがいます。

しかし、もっと大事なのは、ディスコという言葉自体がもともと「音楽レコードをかけて客に踊らせる飲食店」という意味のフランス語「Discotheque(ディスコテーク)」に由来するという史実ですね。よく知られている話ですが、第二次世界大戦中、ナチスドイツに占領されていたフランスのパリで、「Zazou(ザズー)」と呼ばれたナチスや親ナチスのフランス政府に抗う反体制的な若者たちが、「闇の踊り場」つまり「Discotheque」を運営していました。それが後の英語「Disco」へと転化・発展していったわけです。

ザズーたちが「闇のディスコ」に持ち寄ったのは、ナチスが忌み嫌うアメリカの黒人が生み出したスイング・ジャズのレコードでした。異常に細いネクタイ、底の高い木靴、デカいレンズの眼鏡といった奇妙な「ザズー・ルック」に身を包んだ男女が、官憲の目を逃れて、モグラのように地下に潜り込んで夜な夜な“退廃の宴”に酔いしれていたのであります。

このブログで繰り返し述べてきたとおり、ディスコとは「理想的アナキズム空間」かつ「自由の象徴(!)」でありますから、こんなエピソードにも納得がいくというもの。反戦や厭戦の証としてフランスで始まった若者文化は、約30年の時を経て、過剰なまでのエネルギーを孕んだ「世界の祝祭空間」へと変貌を遂げたわけです。

戦後に咲いた「平和の象徴」でもあるフレンチポップのフランス・ギャルもシルビー・バルタンも、ディスコとの相性は今ひとつだったと言わざるを得ませんが、「あの大スターがディスコだなんて!!」という面白さに満ちています。

この2人のCDは、ベスト盤であればものすご〜くたくさん出ていますが、ディスコ時代のアルバムは案の定とても少ない。フランス・ギャルについては、前述の「Babacar」とダンシング・ディスコ(下写真)がCD化されています。

France Gall dancing disco