Chas Jankel80年初頭に日本で大ヒットしたディスコ曲に「愛のコリーダ」(81年)というのがあります。その作曲者こそチャス・ジャンケル。今回紹介する一風変わったシンセサイザーの名手です。

1952年にイギリスに生まれたチャスは、子供のころからギターとピアノに熱中。もともとはアメリカのダンサブルなジャズやソウルに傾倒していました。70年代後半、70-80年代のブリティッシュ・ロックのカリスマであるイアン・デューリーのバンドに加わったことで、一気に頭角を現していきます。

イアン・デューリーはロック&ブルース畑とはいえ、米ディスコチャートでもチャートインした「Hit Me With Your Rhythm Stick」(79年、ディスコ79位)などの踊れる曲も80年前後には出していますから、チャスは主にリズム&ビート面の音作りで貢献していたのです。

そんなチャスは80年代に入って、ソロとして次々とシンセサイザー系のダンス曲を世に送り出しました。その一つが、日本の大島渚監督の問題作映画としてイギリスでも知られていた「愛のコリーダ」から名前を取った「Ai No Corrida」でした。

この曲は、以前紹介したクインシー・ジョーンズに見出され、お得意のジャズ・フュージョン風に加工されてディスコでヒットしたわけですが、9分を超す原曲チャス・バージョン(80年)の方が意外にも四つ打ちビートの「もろディスコ」ですので、ディスコ堂的にはクインシー・バージョン以上に必聴となっておりますですよ。

それともう一つ、チャスさんの良質ディスコでいえば、「グラッド・トゥ・ノウ・ユー(Glad To Know You)」(81年、米ディスコチャート1位)ですね。2年後にキティー・グラントという女性歌手も一味違った女性ボーカルバージョンを出しています。どちらも私自身、日本のディスコで非常によく耳にしたものです。

ほかにも、あまりヒットはしなかったものの「3,000,000 Synths」「Number One(貴重な本人登場ビデオクリップYoutube)」「 Get Yourself Together」「109」などのダンス曲があります。いずれも地味ながら、ジャズ、フュージョン、ファンク、ラテン、それにロック、ヒップホップといったさまざまな要素が詰まったユニークな音作りが特徴となっております。筋金入りの鍵盤の名手チャスさんによるシンセサイザーの演奏が、とてつもなく斬新でしっかりしていますから、70-80年代の初期のシンセ好きの私にとってもやたらと印象深いアーチストとなっております。

しかしその反面、とて〜も真面目な実力派ミュージシャンであるが故に、ディスコっぽい能天気なおバカさにいかにも欠けています。あまりに突っ込みどころがなく、踊る方も生真面目な表情になりがちなのが難点といえば難点ですけど、「年をとっても安心して聴けるディスコで賞」ということで、今回、満を持して紹介させていただきました。

この人のCDは正直あまりありません。でも、3年前に発売された写真の英Tirk盤のベスト「My Occupation---The Music Of Chaz Jankel」については、主なヒットを網羅していて音質も良く、入門盤として最適だと思います。