Patti Labelle前々回の投稿では「圧倒的な厚底」をフィーチャーいたしましたが、今回はもう圧倒的以上に「超絶的な」声量を誇るディスコディーバ「パティ・ラベル」を紹介しましょう。

ソウル界では、これまでに当ブログで紹介したダイアナ・ロス、チャカ・カーン、アレサ・フランクリン、ディオンヌ・ワーウィックといった歴史的ディーバたちがいますが、私が思うに、声量の点ではパティがディスコ界、いやソウル、ポップス界最強です。

子供のころに黒人教会のゴスペル音楽に目覚めた彼女の歌声は、「良心の呼び声」(実存主義哲学者ハイデッガー)ならぬ「魂の呼び声」そのものです。アフリカにルーツがある黒人としての文化・歴史的背景、それにアジア人や欧州人には決して真似ができない独特の声質があればこそ、呪術的な響きさえ帯びて胸に迫ってくるのだと思われます。ず〜っと聴いていたら耳が変になるほどですね。聴く方にも気合と根性が求められます。

さて、そんなパティさんは1944年、フィラデルフィアに生まれました。10代で早くも頭角をあらわし、60年代にボーカルグループ「パティ・ラベル&ブルーベルズ」としてヒットをいくつか飛ばし、さらに70年代に「ラベル(LaBELLE)」という女性3人のコーラスグループのリードボーカルとして大ブレイクを遂げました。

ラベルを大スターにしたヒット曲は、ご存知「レディー・マーマレード」(74年、全米一般チャート、R&Bチャート各1位、ディスコチャート7位)。街娼をテーマにしたソウル音楽の問題作でもあり、ディスコ黎明期の代表曲でもあります。曲自体のインパクトはあまりにも強く、その後何度もリメイクされています。

ラベルの脇を固める2人はノナ・ヘンドリックスとサラ・ダッシュで、いずれ劣らぬ強力ボイスの持ち主でしたが、やはりパティの破壊力にはかないませんね。

当時の彼女たち3人は、イギリスのデビッド・ボウイなどのグラムロックの影響もあって、オウムかインコみたいなド派手な衣装で聴衆にアピールしていました。ですので、コンサートなどでの興奮度(暑苦しさ)もひとしおだったと思われます。

けれども、ラベルとしてのヒットはこの程度でした。ミディアムスローの「What Can I Do For You?」(75年、R&B8位)、けっこうディスコ色が濃厚な「Missin' With My Mind」(同、19位)などがありますが、マーマレードに比べれば小粒なのです。

間もなくパティは、満を持してソロに転向。エピック、フィラデルフィア・インターナショナルの各レーベルから、「Patti Labelle」(77年)、「It's Alright With Me」(79年)、「 The Spirit's In It」(81年)などのディスコ系のアルバムを次々と発表しましたが、セールスはいまひとつでした。

ところがどっこい、ダイナマイト・ボイスは健在でした。83年にリリースしたバラード「If Only You Kew」がR&Bチャート1位に輝き完全復活。85年には人気映画「ビバリーヒルズ・コップ」のサントラにも使用されたディスコ曲「New Attitude」(米ディスコ1位、R&B3位)と「Stir It Up」(ディスコ18位、R&B5位)をリリース。この2曲はテンポが速めなのですが、私も当時、ディスコで耳にしてなかなか熱狂させられました。

この時期、彼女はグローバー・ワシントンJrやボビー・ウーマックといった有名歌手との“デュエット作戦”も敢行し、いずれもヒットを記録。86年には、マイケル・マクドナルドとのデュエットで発表したバラード「On My Own」が一般チャートとR&Bチャートで1位を記録したのでした。

その後、90年代に入ってもコンスタントにヒットを放ち、結果的には息の長〜い歌手としても名を残すことになったわけです。 パティの勝因は、アップテンポの迫力ディスコもさることながら、なんといってもバラードで魅力をアピールできた点にあります。声量で圧倒するだけでなく、意外に繊細さも兼ね備えていたといえましょう。

ちなみに、ラベルの残りの2人は、いずれもディスコ界で地味ながら佳作を発表しています。ノナ・ヘンドリックスは「Bustin' Out」(81年、米ディスコ2位)、「B-Boys」(83年、同25位)などのパワフルな曲でフロアを盛り上げましたし、サラ・ダッシュも典型的70年代ディスコの「Sinner Man」(78年、同9位)、メガトンレーベル系ハイエナジーの「ラッキー・トゥナイト」(83年、同19位)といったややメロディアスなディスコ路線でまずまずの結果を残しました。

まあ、「ダイアナ・ロス&シュープリームス」のように、トリオの中でも突出した実力を誇ったパティとの差は歴然ですけどね。

パティがリリースしたアルバムは山のようにあるのですけど、再発CDについては、いくつも出ているベスト盤以外は、あまり充実しているとはいえません。そんな中、写真の英国盤CD「The Spirit's in It/I'm in Love Again/Patti」は数少ないアルバム単品モノで、80年代前半のフィラデルフィア・レーベル時代の3作が2枚のCDに収められています。「パティさん in Disco」を味わうには、ぴったりの内容といえましょう。