Strawberry Switchbladeなんだか気になる英国ニューウェーブアーチストとして、今回は女性デュオ「ストロベリー・スイッチブレイド」を取り上げてみましょう。

代表曲は「ふたりのイエスタディ(Since Yesterday)」(1984年)。26年前、FMラジオで初めて聞いたときには、あまりのメルヘン&ファンタジーぶりに気が遠くなりそうでした。

というのも、風貌はいかにもモノトーン調で暗〜いゴシックなパンク少女(ただし既に20代半ば)なのに、曲はとっても明るくて踊れるものが多かったからです。ディスコではあまり耳にしませんでしたけど、シンセサイザーをふんだんにつかった変なエレクトロ・ディスコとして印象深いアーチストです。

この2人はスコットランド出身。もともとパンクに関心が高く、インディーレーベルで地味に活動していたのですが、やがて「あまりに珍しい」とメジャーレーベルに見出されてデビュー。上記「イエスタディ」が英国チャートでベスト10に入るヒットとなります。同時に、この手のアニメチックなノリを好む日本でもけっこうな人気となり、来日公演も行っています。

この曲は、特に12インチバージョンが秀逸で、シングルバージョンにはないクラリネットまたはオーボエと思われる管楽器の音色が随所に入ってきて心なごませます。冷涼なスコットランドの田園風景をも思い起こさせ、フロアでもしかかったら、なんだか薄霧の中で夏草を食む牧牛たちと戯れているような気分になることウケアイです。

もう一曲、ディスコ的には「ジョリーン」もユニークです。かの絶唱カントリー歌手ドリー・パートンと、歌姫カントリー歌手のオリビア・ニュートンジョンの往年の曲をなぜか80sゴスロリの2人がリメイク。しかし、ギター、パーカッションの音色がシンセサイザーと妙に融合し、意外にダンサブルな出来栄えになっております。

ところが、この人たちはなかなか気の強い人々だったらしく、間もなく「自分たちのやりたいように音楽活動させてくれない」などと不満を抱き、レコード会社との関係が悪化。ついでに個性のとても強い2人の間にも不協和音が生じます。85年に「イエスタディ」が入ったアルバムを発表した翌86年には、あっさり解散してしまったのでした。このあたりの経緯は、最近の彼女たちへのインタビューや往時の写真が載った英文サイトstrawberryswitchblade.netに詳しく書かれています。

チャート的には「イエスタディ」のもろ一発屋に終わったストロベリーたち。けれども、空前絶後の際物デュオは、25年の時を経た今でも、強烈な印象を残し続けています。

CDは日本ワーナー盤から網羅的な再発モノ「ふたりのイエスタディ」が出ています。これで十分ですが、「イエスタディ」「ジョリーン」などの12インチバージョン集であるカナダ盤「The 12'' Album」(上写真)もあると楽しめるでしょう。

次回からはまたまたR&B系に回帰する予定です。