Devotion Spacerいやあすいませ〜ん。落下傘で降りてきちゃいました!……というわけで、今回はパラシュートに赤いコスチューム(でも目は笑っていない)、さらに周囲には謎の怪鳥プテラノドンが飛び交う意味不明なジャケットでお馴染みのシェイラさんであります。

シェイラさん(本名:Anny Chancel)は1945年フランス生まれ。実は以前に紹介したフランス・ギャル、シルビー・バルタンと同様、60年代にはフランス発の少女ポップス音楽である「イェイ・イェイ(ye-ye)」のトップスターとして鳴らしました。70年代後半には、男性ダンサーをくっつけて「シェイラ&B.ディヴォーション」というグループ名となり、ディスコスターとして活躍しています。

「イェイ・イェイ」の歌手たちは、英語で言う「ガール・ネクスト・ドア」(隣のお嬢さん)的な身近な存在であり、昔のアメリカで言えばオリビア・ニュートン・ジョン、日本で言ったら松田聖子なんかのアイドルに近い。女性アイドルには大きく「セクシー系」と「非セクシー系」があるといえますが、シェイラさんは後者の方で、「あらシェイラさん?こんにちは」とあいさつすれば、「こんにちわ〜!」と明るい笑顔で返ってきそうなところが魅力でした。確かに、隣に住む“セクシー系の権化”マリリン・モンローやマドンナやビヨンセに「あらあらこんにちは!」なんて声を掛けても、貫録たっぷりにシカトされそうです。

そんな親しみ安さ抜群のシェイラさんの人気も、70年代にイェイ・イェイ・ムーブメントが終わると陰りを見せました。そこですかさず目を付けたのが、大流行し始めていたディスコ。もともとアイドルとディスコの親和性は高いので、いくつかのヒットを飛ばすことができたわけです。

「ディボーション」としての最初のアルバム「Singin' In The Rain」(77年)からは、タイトル曲が欧米でヒット(米ビルボードディスコチャート30位)。2枚目の“意味不明ジャケット”の「King Of The World」(80年、写真)からは、「Spacer」という曲がヒット(同44位)しました。特に2枚目はナイル・ロジャーズとバーナード・エドワーズがプロデュースしており、「Spacer」を聴くと、イントロのピアノソロが非常に印象的である上、いかにも彼ららしい流麗なメロディーやギター&ベースリフが展開していて秀逸です。ただし、シェイラさんの歌声は今一つなので覚悟する必要がありますが。

2枚のアルバムの発売以降は、ディスコブームが終わったこともあり、人気がパラシュートのように急下降してしまったのは残念なところ。でも、数あるフレンチディスコの代表例として、疾風怒濤のディスコ界に一定の貢献を果たしたといえます。CDは、2枚のアルバムの再発、それにベスト盤が欧州ワーナーミュージックから出ています。