Kleeer今回はKleeerと参りましょう。1970年代後半から80年代にかけて、前回紹介のKlique同様にディスコファンク・バンドとして一定の支持を得た4人組ですが、既に70年代初頭に活動を開始しています。

彼らが79年に出したアルバム「I Love To Dance」の再発CD(2013年発売、英Funky Town Grooves盤)のライナーノーツによると、米ワシントントンDCで1972年に結成し、当初はザ・ジャム・バンド(The Jam Band)という名前でした。「チョイス・フォー」(Choice Four)という同じワシントンのソウルグループとか、ちょっと売れたディスコグループ「ディスコ・テックス・アンド・ザ・セックス・オーレッツ」(Disco Tex & The Sex-O-Lettes)のバックバンドとして活動を始めた後、75年にはパイプライン(Pipeline)という名前に変更しました。

パイプラインとなった彼らは、独り立ちしてコロムビア・レコードと契約し、「Gypsy Rider」というシングルを76年に発表。なかなか仕上がりの良いロック風味のファンクチューンでしたが、ほとんど売れませんでした。前述ライナーノーツでは、ギター担当の中心メンバーのリチャード・リー(Richard Lee)が「このときは、コロムビアのマーケティング担当者が、黒人ロックとかファンクロックをやるパイプラインをどう売り出したらいいか、分からなかったんだ」とほろ苦く述懐しています。せっかく満を持してのデビューだってえのに、不本意だったみたいです。

それから間もなく、パイプラインは売れっ子ディスコ・プロデューサーであるパトリック・アダムズ(Patrick Adams)、グレゴリー・カーマイケル(Gregory Carmichael)らのディスコ・プロジェクトチームに編入されました。ここでのグループ名は、今度は「ユニバーサル・ロボット・バンド」(Universal Robot Band)。なんだかいきなり変てこな名前ですけど、とにかく、いよいよ本格的にディスコグループとしての活動に入ったのであります。

この「ユニロボ」時代の76年には、「Dance and Shake Your Tambourine」(直訳:踊ってタンバリンを鳴らそう!)という驚愕のおとぼけディスコをリリース。しかも、ちょこっと売れたのです(米R&Bチャート48位、ディスコチャート25位)。「お聴きいただいて納得」と思いますが、ムーグ(Moog)あたりのアナログシンセサイザーの音色が縦横無尽、往年の幼児向け番組「ロンパールーム」のBGMみたいにピニュピニョと飛び交っている有様。ディスコ堂的には大歓迎の展開になっていくのでありました。

結局、ユニロボとしての活動は2年ほどで終局。79年にようやくKleeerというグループ名に相成り、名門アトランティック・レコードから、前述「I Love To Dance」というあからさまなディスコアルバムを皮切りに、ラストアルバムを出した85年までの間に計7枚のアルバムを発表しました。

代表曲を見ていきますと、70年代には、「I Love To Dance」に収録された「Keep Your Body Workin'」(R&B60位、ディスコ54位)、「Tonight's The Night」(R&B33位)や、2枚目アルバム「Winners」収録の「Winners」(R&B23位、ディスコ37位)などのディスコ曲がヒット。80年代には、小気味よいリズム展開とコーラスワークが特徴の「Get Tough」(R&B15位、ディスコ5位)、「Taste The Music」(R&B55位、ディスコ31位)といった、シンセファンクの雰囲気も持つダンサーが人気曲となりました。

Kleeerになってからは、いずれの曲も確信犯の脱力ユニロボ時代とは打って変わり、ダンサブルながらも落ち着いた感じのディスコファンクの装いになってきています。例えば、アース・ウィンド・アンド・ファイヤーとかクール・アンド・ザ・ギャングみたいにスター性の強い歌い手がいるわけではなく、ボーカル力は今ひとつで凡庸との印象がありますが、商業的にまずまず健闘したとはいえると思います。それに、なにはともあれ前身が「ユニロボ」だという点が私的にはプラス評価です。

再発CDは近年、けっこうな勢いで発売されています。写真は、私が一番気に入っている「Get Tough」収録の「License To Dream」(81年)。ほかの多くのアルバムもCDになっています。ベスト盤としては、米Rhino盤の「The Very Best Of Kleeer」が網羅的で、かつディスコフロア向けロングバージョンが多く収録されていてお得感があります。