Joe Simonかれこれ13年目を迎え、もはや風前の灯の当ブログではありますが、今回もまた涙をこらえて元気よく、1960年代から70年代にかけてメロメロメロウな風を吹かせまくったソウルバラードの伝道師、ジョー・サイモンさんと参りましょう!

さて、1943年、アメリカ南部ルイジアナ州で生まれたジョーさんですが、他の多くの黒人歌手同様、地元の黒人教会でゴスペルを歌いながら、歌手の道を志します。50年代後半に家族でカリフォルニア州に移住した後、63年に「Let's Do It Over」というバラードを発表。それが米ビルボードR&Bチャート13位に入るヒットとなり、早くも頭角を現しました。

当時まだ20歳そこそこなのに、中年のおじさんみたいな大人っぽい太い声質で、そんなギャップも魅力のひとつでした。ここに彼は、歌声一本で激動のショービジネスを渡り歩く一人前の歌い手の仲間入りを果たしたのです。

その後もR&Bチャートをにぎわす曲を発表し続け、69年には「Choking Wild」がついに同チャートで1位に輝きます(一般総合チャートでも13位)。「Farther On Down The Road」(70年、R&B7位)、「Your Time To Cry」(70年、R&B3位)、「Drowning In The Sea Of Love」(71年、R&B3位、総合11位)、「Power Of Love」(72年、R&B1位、総合11位)などなど、メロウ系のソウルヒットを飛ばし続けました。

ここで注目したいのは、後半の2曲「Drowning In…」と「Power Of...」です。いずれも、このブログでは何度も登場した「フィリー・サウンドの立役者」であるギャンブル&ハフのチームがプロデュースしているのです!大成功したメロウな展開に身を委ねつつも、ジョーさんは秘かに「ザ・ダンサブル路線」を模索していたわけです。

70年代半ばに入っても勢いは止まらず、75年に発表したアルバム「Get Down」からのシングルカットで、ジョーさんにとって3曲目のR&Bチャート1位曲となった「Get Down Get Down (Get On The Floor)」を世に送り出します。この曲は一般総合チャートでも8位まで上昇し、彼の最大のヒット曲になったのでした。

このアルバムなんかはもう、「Get Down(さあ踊れ)」「Get On The Floor(フロアに飛び出して踊ろう!)」のフレーズからも分かるとおり、ほぼ全編を通してひたひたと押し寄せる大ディスコブームを掛け値なしに意識した内容となっております。初期アナログシンセサイザーのうにょうにょ音とか手拍子なんかもふんだんに盛り込まれており、なかなかどうして汗だくで踊れます。

このころのジョーさんは、長年ならしてきた甘い歌声をうま〜くダンスビートに乗っけておりまして、ディスコの深夜帯なんかにぴったりです。同じようにスイートボイスながらもディスコ寄りになってきた70年代中期の元テンプテーションズのエディ・ケンドリックス( 「Girl You Need A Change Of Mind」など)やマービン・ゲイ(「I Want You」など)に勝るとも劣らない、ボーカル力をいかんなく発揮したスムーズディスコの真髄を見せ付けたのでした。

しかし、70年代も後半になると、セールス的には急激に落ち込んでしまい、チャートの上位に入る曲は皆無となります。前々回投稿の「シャイ・ライツ」でも触れましたが、時代が変わり、主力の黒人リスナーの嗜好が「もっと愉快なダンサブル上等にしろ!」の方向へと変化したことと、ミュージシャンのみんながディスコに便乗しようとして過当競争状態になったことが背景にあります。

そこで、「何とかしなければ」と起死回生の一打として打ち出したのが、何を隠そう確信犯の「ザ・昇天いけいけディスコ路線」の加速でした。安易といえば安易ですが、あれほどまでにメロメロメロウだった天下無敵のソウルフル男が、いよいよ出血全開大放出状態になったブームに乗り遅れまいと、開き直って軽快極まるダンスナンバーを連発したのです。

このころになると、「お〜ハニー〜、べいび〜」と惜しげもなく連呼しまくる仰天のダンシングせくすぃー路線まっしぐら!78年発表のアルバム「Love Vibrations」からは、まったり哀愁メロディーが逆に踊り心をくすぐる「Love Vibration」、お約束の「びょんびょん」シンセサイザー音も嬉しい「Going Through These Changes」といった重いドラムビートを特徴とするメロディアスなダンスナンバーをあれよと言う間に繰り出しました。

79年のアルバム「Happy Birthday, Baby」では、テンポ数も音数も上がり、ついでに心拍数もハッピー度数も大幅アップ!ついでにレコードジャケットも、お誕生祝いのケーキにかぶりつくおとぼけジョーさんの無邪気な姿全開です。特に、「ぽんぽこぽ〜ん」のシンセドラムを駆使したどんどこ路線の名曲「I Wanna Taste Your Love」、臆することなく「ハッピーバースデー!」と連呼してやまないアルバムタイトル曲、正統派四つ打ちディスコのグルーブ感あふれる「You Gotta Treat Me Right」、恐ろしくアップテンポでついていくだけで心臓破りな「Make Every Moment Count」などが、ディスコフロアではけっこうな人気となりました。...でも、残念ながらヒットチャートをにぎわすまでには至らなかったのです…(トホホ)。

疾風怒濤のショービジネスで一時代を築いた正統派ソウル伝道師のジョーさん。80年代以降は音楽業界の一線からは距離を置き、自らのルーツに立ち戻り、文字通りキリスト教の博愛を説く伝道師(evangelist)として再出発しました。80年代の鋭角的なシンセサイザーの音色に乗せた彼の歌声も聴きたかった気もしますけど、あの「ハッピーバースデー!」で浮世のお仕事はもう十分にやり尽くしたということなのでしょう。

CDですが、ディスコ好きにはありがたいことに、70年代後半の「Love Vibrations」と「Happy Birthday, Baby」が、CD1枚にカップリングされた「2 in 1」形式で再発されていますので、まずはお勧めです(写真)。華麗なるディスコ化の嚆矢となったヒットアルバム「Get Down」の再発CDも、手ごろな価格で入手可能となっております。