Dayton_Hot_Funこんにちは、突然思い出したかのように、またまたこっそり“ステルス更新”と参ります!鬱陶しい梅雨空の下、なんだか無性にディスコが聴きたくなりました。……というわけで今回は、意外にバカ明るいディスコファンク界の伏兵「デイトン」を、若干明るく紹介いたしま〜す。

デイトンは、文字通り米オハイオ州デイトンを拠点に活動していた黒人中心のグループ。同じオハイオ産ファンクのオハイオ・プレイヤーズレイクサイドやザップのライバルとまではいきませんでしたが、かな〜りキレッキレでぶいぶいなダンスナンバーを連発していた人たちです。

このグループはディスコブームが終わった直後の1980年、サン(Sun)という正統派ファンクグループにいたリードボーカルのクリス・ジョーンズ(Chris Jones)らが中心となって結成しました。

80年といえば、世界的なディスコブームが終わってしまった直後のころ。そんなこともあり、同年に発売されたデビューアルバムは、オハイオファンクの伝統を受け継ぐシブいファンク路線回帰かと思いきや、どこか吹っ切れたかのようなストレートで明快で分かりやすいディスコ調!いわばシャラマーやダイナスティがいたソーラーレーベルとかEW&Fを髣髴とさせるゴキゲンぶりなのでした。

そのデビューアルバム「Dayton」は、やや重量級ファンクの1曲目「Dank」に続き、70年代後半に戻ったかのようなどんどこアップテンポの「Eyes On You」が炸裂。パーカッションが印象的なラテンフレーバーの3曲目「Let's Go」で多少落ち着きを取り戻し、4、5曲目に再び賑やかなパーティーチューン「Tonight」と「Dayton(Jam)」が繰り出されるという展開。

その後、ザップなどが多用した変てこエフェクター「トークボックス」(トーキング・モジュレーター)を駆使しつつ、キーボードの名機クラビネットの音色がびろんびろんと駆け巡る「Livin' For Today」、お口直しバラードの「So Glad」と続き、最後の8曲目にまたもや70年代後半風ファンクディスコ「Daytime Friend」を持ってきて締めくくるという内容です。

彼らは翌81年には早くも2枚目のアルバム「キューティー・パイ(Cutie Pye)」を発表し、この中から表題曲の軽快なダンスナンバー「キューティー・パイ」がまずまずのヒット(米ビルボードR&Bチャート62位)。メルバ・ムーアらを手掛けたラーニ・ハリス(Rahni Harris)をプロデューサーに迎えた3枚目のアルバム「Hot Fun」(82年)でもファンクディスコ路線を継続し、スローかつメロウなダンスナンバー「Hot Fun In Summertime」が同チャート17位に食い込みました。

さらに83年に発表した4枚目アルバム「Feel The Music」ではややジャズ・フュージョンな風味を取り入れ、ラーニが作曲した「It Must Be Love」(同84位)と「The Sound Of Music」(同89位)が小ヒットしています。

特に後者「The Sound Of...」は、前作の「Hot Fun In…」と同様の爽やかさが溢れかえっており、なんだかEW&Fにも似ています。電子音を取り入れて豪快さとゴージャスさを演出つつ、同時に奥行きのある繊細なメロディーが大展開しています。北海道出身の私などには、昔学校帰りに戯れで近づき過ぎて後ろ足で蹴られそうになったこともある乳牛の群れが、夏の朝霧の中で牧草をのんびりと食んでいる光景がよみがえります。当時のディスコフロアでも聴いたことがありますが、BPMも遅めなので(112ぐらい)、思わずホルスタインのようにゆったり、もっさりと踊ってみたものでした。

さて、ここまで順調に80年代前半を駆け抜けてきたデイトンさんですが、4枚目のアルバムの後はどうにも波に乗り切れませんでした。ヤマハのDXシリーズを始めとするデジタルシンセサイザーが主流になってきた85年に電子音全開の5枚目アルバム「This Time」を発表したものの、セールス的に振るわず、そのまま表舞台からフェードアウトしてしまったのです。

この80年代半ば当時、R&B界の大スターとなったホイットニー・ヒューストンジャネット・ジャクソン、それにカメオバーケイズ、ミッドナイト・スターといった老舗グループがこぞってデジタル技術満開のシンセサイザー音を取り入れて大成功していたのですが、その中で特徴を出し切れず埋もれてしまったようです。

今では私自身もほとんど聴く機会がなくなってしまったデイトン。でも、この投稿を書くために昔のCDをちょいと引っ張り出して聴いてみたら、アラ不思議。予想以上にアゲアゲなダンサブルさに感激ひとしおです。もちろん、前記「The Sound Of Music」では、40年前の学校近くの牧草地を思い起こし、感涙にむせぶこと暫し。矢も楯もたまらず、往年のディスコキング時代(ウソ)の華麗なダンスを思い出し、居間でくねくね踊ってみたら、腰を思い切りひねってしまいましたとさ(トホホ)。

CDはほぼ全部のアルバムが再発されており、いずれも3,000円前後で入手可能です。写真は代表作「Hot Fun」(紙ジャケ国内盤)。80年代前半の過度にエレクトロ化していない時代のファンクを好む向きには、とてもお勧めです。