こんにちは。ご無沙汰しております。本日は、圧巻のディスコ・コンピレーション「ディスコ・ディスチャージ」(英Harmlessレーベル)を取り上げてみましょう。
このディスコシリーズ、一昨年から断続的に発売されている2枚組みCDで、現在は計12巻に達しています。価格も1巻2000円前後とお手ごろ。いずれの収録曲も「ディスコやFMラジオでかかっていたなあ・・・でも最近はすっかりご無沙汰だなあ」と思わせる珍曲の12インチバージョンがほとんどである上、英文ながら詳細で興味深いライナーツもくっついているのでありがたい。音質も、マスターテープが手に入りにくい珍盤ぞろいにしては全体的に上々です。
しかも、各巻のライナーノーツは、私のディスコ親友でもあるユッシ・カントネンさんのディスコ解説本「Saturaday Night Forever」の共著者Alan Jones(アラン・ジョーンズ)氏が執筆しております。
中でも写真の「Disco Discharge --- Crusing The Beats」と銘打った“クルージングビートの巻”は、うれし恥ずかし「おバカさん路線」全開で最高5つ星です。CD1をみると、まず1曲目はボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」(1982年)のロングバージョン。ご存知、米サンフランシスコのモビーディック・レーベルが生んだディスコスターです。2曲目は、80年代に人気が大爆発したダン・ハートマンの代表曲「リライト・マイ・ファイア」(78年)の約10分にわたる長尺バージョンとなっております。
この2曲とも「あれあれ?普通じゃん。珍しくないじゃん」という反応必至なのですが、実はここからが本番。3曲目のラテン風ディスコ「Golden Eldorado」(Voyage Voyage、78年)に続き、4曲目には新宿などの日本のディスコで昔かなり流行した「Palace Palace(パレス・パレス)」(Who's Who、79年)という軽快フレンチディスコが入っています。
特にパレス・パレスの12インチレコードは近年、ホント希少盤化しており、海外のオークションサイトでも日本円で1万円近くすることもありましたからなおさら重宝です。久しぶりに聴くその曲調も、70年代のチープでごきげんなシンセサイザー音と「哀しみのサンバホイッスル」の嵐でして、遺憾ながら(うれし)涙がほほを伝ってしまいます。
「ブギウギ・ダンシンシューズ」(78年)のディスコヒットで知られるクラウディア・バリーが、同じく80年前後に「Video Games」(80年)などの愉快なディスコヒットを連発したロニー・ジョーンズとデュエットで歌い上げる「Two Of Us」(81年、CD1の10曲目収録)も珍しくかつ楽しい。とにかく高揚感いっぱいのキラーチューンで、イントロは2人ののっそりしたバラード調で始まる「じらし系」なのですけど、間も なく「ドンバ、ズンバ、ドンバ、ズンバ♪」とお馴染み四つ打ちビートが五臓六腑を貫きます。
ツボを心得た佳曲はまだまだあります。例えばSleeping Lions(スリーピング・ライオンズ)の「Sound Of My Heart」(83年、CD1の9曲目収録)。これは発売当時、ラジオやディスコでけっこう耳にしていて熱中した曲の一つだったのですが、長らく自分の中で休眠中でした。この曲名を見つけたときには「うおぉぉ!懐かしいやんか!」と、道産子なのにいきなり(似非)関西弁で叫ぶ始末。曲調はとにかく哀愁ディスコ路線のど真ん中で、モータウン風のドラム演奏と時流に乗った「フリーダム」(ワム)ばりのニューウェーブっぽいメロディー、それにせつな過ぎる女性ボーカルが再び感涙を誘います。
哀愁ついでに、CD1の8曲目に収録のNora Lewis(ノーマ・ルイス)の「Maybe This Time」(83年)も、ディスコフロアで「泣きながら踊る」タイプ。原曲は大ヒットミュージカル「キャバレー」の挿入歌。その美しいメロディーとボーカルに、しんみりと聴き惚れる人は多いはずです。80年代前・中期のハイエナジー、さらに後期のユーロビート時代にはこうした曲調は大流行だったのですが、私はこの「Maybe・・・」と「Memory」(Menage、83年)、それに「We Are Invincible」(501's、84年)を個人的にハイエナジー界の“ザ・哀愁トリオ”と呼んでいます。
続いて、80年代半ばから後半にかけて、「今は昔」のバブル景気に浮かれた日本国中の"哀愁好き"の胸を熱くさせたのは、「Believe In Dreams」(Jackie Raw、85年、CD2の3曲目収録)ですね。まずはやはりYouTubeでお聴きください・・・。どうですか?もはやアホみたいにアゲアゲなおバカさぶりを発揮しているのではないでしょうか。
まさに若きエネルギーのディスチャージ(放出)であります。数年前に大ヒットした映画「Always 三丁目の夕日」は、日本の高度経済成長が本格化した昭和30年代前半が舞台でしたが、この夢の成長期がホントの意味で終焉を迎えようとしていた昭和の終わりの時代、若者たちはバブルディスコでいわば"最後の宴"に酔いしれていたわけです。間もなく、伸びきった成長のゴムひもが「パチン」と切れたかのように、バブル崩壊という悪夢が襲ってくるとも知らずに・・・。いや確かに、私も踊り狂っておりました(トホホ)。
このほか、以前にも紹介したオランダ発の究極の"おとぼけメルヘンディスコ"「Mama Told Me」(Fantastique、81年)、無敵のヘビー級ボクシングチャンピオン、ムハマド・アリのステップ「アリ・シャッフル」を思わせる"軽やかシャッフルダンス・ディスコ"である「Manhattan Shuffle」(Area 212、79年)、これまたメロディーがアバっぽくて美しくて札幌のディスコ通い時代を思い出させる「Can We Try Again」(Technique、84年、モビー・ディックのプロデューサーの 故Michael Lewisが制作=Moby Dick Recordsサイト参照)、演奏、アレンジ、ミックスの完成度が高くて「これぞヨーロピアンディスコ」と思わせる「Gay Paris/French Pillow Talk」(Patrick Juvet、79年)などなど、ほかではあまり入手できないマイナーな曲が入っていて、思わず拝みたくなります。
このシリーズ、とりわけ「Crusing The Beats」は結局、幸か不幸かバブルを経験した中年世代である私自身のツボにぴったりとはまってしまったのでした・・・。他の11巻についても、心ときめく珍曲、名曲が目白押しとなっております。70-80年代ディスコの無常の宇宙が、ここではまだ果てしなく広がっているのです。
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<追記PR>今週10日発売のビジネス雑誌「The 21」(PHP研究所)の英語特集コーナーに私のインタビュー記事が載ります(写真は恥ずかしいけど)。洋楽、特にディスコに鍛えられた英語の独学修行法について語っておりますので、ご興味があればぜひ・・・。
このディスコシリーズ、一昨年から断続的に発売されている2枚組みCDで、現在は計12巻に達しています。価格も1巻2000円前後とお手ごろ。いずれの収録曲も「ディスコやFMラジオでかかっていたなあ・・・でも最近はすっかりご無沙汰だなあ」と思わせる珍曲の12インチバージョンがほとんどである上、英文ながら詳細で興味深いライナーツもくっついているのでありがたい。音質も、マスターテープが手に入りにくい珍盤ぞろいにしては全体的に上々です。
しかも、各巻のライナーノーツは、私のディスコ親友でもあるユッシ・カントネンさんのディスコ解説本「Saturaday Night Forever」の共著者Alan Jones(アラン・ジョーンズ)氏が執筆しております。
中でも写真の「Disco Discharge --- Crusing The Beats」と銘打った“クルージングビートの巻”は、うれし恥ずかし「おバカさん路線」全開で最高5つ星です。CD1をみると、まず1曲目はボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」(1982年)のロングバージョン。ご存知、米サンフランシスコのモビーディック・レーベルが生んだディスコスターです。2曲目は、80年代に人気が大爆発したダン・ハートマンの代表曲「リライト・マイ・ファイア」(78年)の約10分にわたる長尺バージョンとなっております。
この2曲とも「あれあれ?普通じゃん。珍しくないじゃん」という反応必至なのですが、実はここからが本番。3曲目のラテン風ディスコ「Golden Eldorado」(Voyage Voyage、78年)に続き、4曲目には新宿などの日本のディスコで昔かなり流行した「Palace Palace(パレス・パレス)」(Who's Who、79年)という軽快フレンチディスコが入っています。
特にパレス・パレスの12インチレコードは近年、ホント希少盤化しており、海外のオークションサイトでも日本円で1万円近くすることもありましたからなおさら重宝です。久しぶりに聴くその曲調も、70年代のチープでごきげんなシンセサイザー音と「哀しみのサンバホイッスル」の嵐でして、遺憾ながら(うれし)涙がほほを伝ってしまいます。
「ブギウギ・ダンシンシューズ」(78年)のディスコヒットで知られるクラウディア・バリーが、同じく80年前後に「Video Games」(80年)などの愉快なディスコヒットを連発したロニー・ジョーンズとデュエットで歌い上げる「Two Of Us」(81年、CD1の10曲目収録)も珍しくかつ楽しい。とにかく高揚感いっぱいのキラーチューンで、イントロは2人ののっそりしたバラード調で始まる「じらし系」なのですけど、間も なく「ドンバ、ズンバ、ドンバ、ズンバ♪」とお馴染み四つ打ちビートが五臓六腑を貫きます。
ツボを心得た佳曲はまだまだあります。例えばSleeping Lions(スリーピング・ライオンズ)の「Sound Of My Heart」(83年、CD1の9曲目収録)。これは発売当時、ラジオやディスコでけっこう耳にしていて熱中した曲の一つだったのですが、長らく自分の中で休眠中でした。この曲名を見つけたときには「うおぉぉ!懐かしいやんか!」と、道産子なのにいきなり(似非)関西弁で叫ぶ始末。曲調はとにかく哀愁ディスコ路線のど真ん中で、モータウン風のドラム演奏と時流に乗った「フリーダム」(ワム)ばりのニューウェーブっぽいメロディー、それにせつな過ぎる女性ボーカルが再び感涙を誘います。
哀愁ついでに、CD1の8曲目に収録のNora Lewis(ノーマ・ルイス)の「Maybe This Time」(83年)も、ディスコフロアで「泣きながら踊る」タイプ。原曲は大ヒットミュージカル「キャバレー」の挿入歌。その美しいメロディーとボーカルに、しんみりと聴き惚れる人は多いはずです。80年代前・中期のハイエナジー、さらに後期のユーロビート時代にはこうした曲調は大流行だったのですが、私はこの「Maybe・・・」と「Memory」(Menage、83年)、それに「We Are Invincible」(501's、84年)を個人的にハイエナジー界の“ザ・哀愁トリオ”と呼んでいます。
続いて、80年代半ばから後半にかけて、「今は昔」のバブル景気に浮かれた日本国中の"哀愁好き"の胸を熱くさせたのは、「Believe In Dreams」(Jackie Raw、85年、CD2の3曲目収録)ですね。まずはやはりYouTubeでお聴きください・・・。どうですか?もはやアホみたいにアゲアゲなおバカさぶりを発揮しているのではないでしょうか。
まさに若きエネルギーのディスチャージ(放出)であります。数年前に大ヒットした映画「Always 三丁目の夕日」は、日本の高度経済成長が本格化した昭和30年代前半が舞台でしたが、この夢の成長期がホントの意味で終焉を迎えようとしていた昭和の終わりの時代、若者たちはバブルディスコでいわば"最後の宴"に酔いしれていたわけです。間もなく、伸びきった成長のゴムひもが「パチン」と切れたかのように、バブル崩壊という悪夢が襲ってくるとも知らずに・・・。いや確かに、私も踊り狂っておりました(トホホ)。
このほか、以前にも紹介したオランダ発の究極の"おとぼけメルヘンディスコ"「Mama Told Me」(Fantastique、81年)、無敵のヘビー級ボクシングチャンピオン、ムハマド・アリのステップ「アリ・シャッフル」を思わせる"軽やかシャッフルダンス・ディスコ"である「Manhattan Shuffle」(Area 212、79年)、これまたメロディーがアバっぽくて美しくて札幌のディスコ通い時代を思い出させる「Can We Try Again」(Technique、84年、モビー・ディックのプロデューサーの 故Michael Lewisが制作=Moby Dick Recordsサイト参照)、演奏、アレンジ、ミックスの完成度が高くて「これぞヨーロピアンディスコ」と思わせる「Gay Paris/French Pillow Talk」(Patrick Juvet、79年)などなど、ほかではあまり入手できないマイナーな曲が入っていて、思わず拝みたくなります。
このシリーズ、とりわけ「Crusing The Beats」は結局、幸か不幸かバブルを経験した中年世代である私自身のツボにぴったりとはまってしまったのでした・・・。他の11巻についても、心ときめく珍曲、名曲が目白押しとなっております。70-80年代ディスコの無常の宇宙が、ここではまだ果てしなく広がっているのです。
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<追記PR>今週10日発売のビジネス雑誌「The 21」(PHP研究所)の英語特集コーナーに私のインタビュー記事が載ります(写真は恥ずかしいけど)。洋楽、特にディスコに鍛えられた英語の独学修行法について語っておりますので、ご興味があればぜひ・・・。