Sho Nuffいやあ天気もたぶんよさそうだし、あしたは富士山に行こう!……というわけで、今回は息抜きに「ショー・ナフ(Sho-Nuff)」と参りましょう。

う〜ん、正直困りました。左写真のレコードジャケットを見てもおわかりの通り、確かにホントは「いくぶん陽気なおじさんソウルディスコ」の人たちであると思うのです。でも、その笑顔の裏に隠されたとて〜も恥ずかしい一面についても、ここでは触れなければなりません。

まずはこの人たちの素性について。アメリカ南部のサザンソウル音楽の本場であるミシシッピで結成された5人組ファンクバンドで、Sho-Nuffとは、英語の「そんで案の定」とか「いやはや思ったとおりに」などの意味を持つ「Sure enough,...」の黒人スラングの発音形です。ディスコブーム絶頂期の1978年、サザンソウルの中心レーベルであるスタックス(Stax)から「From The Gut To The Butt」というデビューアルバムをリリースしました。

続いて1980、82年には、同じくサザンソウルの発信源だったMalacoレーベルから「Tonite」と「Stand Up For Love」というアルバムをそれぞれリリース。しかし、これ以降はすっかり音沙汰がなくなってしまいました。

3枚のアルバムともに、情感豊かに歌い上げるバラード群を主軸に置きつつ、「Tonite」や「Smile」みたいにファンク/ディスコの雰囲気にも溢れていて相当に楽しめるのですけど、ヒット曲は皆無。78年に「I Live Across The Street」(米R&Bチャート93位)、「What Am I Gonna Do」(81年、82位)というバラードが下位にチャートインした程度です。

ところが、本国で行き場がなくなってしまった直後の1983年のこと、世にも不思議なディスコシングルをなんと日本で秘かに発売していたのです。邦題は、のっけから意味不明な「ヤキ!ヤキ!不思議な媚薬」(洋題は「Yakki Yakki」=今ならeBayでちょっと視聴可能)となっております。

この曲は、ずいぶん前に紹介した「ディスコ歌謡」CDシリーズのキングレコード編に収録されておりまして、あらためて聴いたところ、曲調は一般的なファンクディスコの風情でありながら、歌詞内容はやっぱり奇妙奇天烈摩訶不思議、抱腹絶倒笑止千万なお気楽ぶり。イントロから「イ〜モ〜、イシヤキ〜モ〜。ハイッ!イラシャイマセ!ドモドモ!ヤキ、ヤキ、ヤキ、ヤッキイモ〜〜〜♪」てな調子で脱力必至の「変なガイジン日本語」がぽんぽん飛び出します。

ついでに、「フジヤマ、ゲイシャ、スキヤキ、ギュウドン」などなど、まったくやきいもに関係のない単語まで容赦なく降り注ぐ有様。もうせっかく渋くてゴスペルフレーバー満載のサザンソウルなグループだったのに、正真正銘のおちゃらけディスコバンドに変貌してしまったわけです。

もっとも、70年代から80年代半ばにかけて、お笑い和製ディスコはけっこう世に出ておりましたから、こんなことも不思議ではありません。特に、同じキングレコードからは、同様に落ち目だったサザンソウルのグループ「エボニー・ウェッブ(Ebony Webb)」の「ディスコお富さん」という猛烈におバカさんな最高傑作が1978年にリリースされて、かなりヒットしましたし。ディスコの真髄「なんでもあり精神」からすれば、むしろ大歓迎の展開だったといえるかもしれません。

それにしても、サザンソウルから「やきいも」とはあまりにも哀しい。どんな誘い文句ではるばる日本に出稼ぎにやってきて、どんな気持ちでレコーディングに臨んだのでしょうか。私も聴いていて最初は大笑いしてましたけど、やがて涙が止まらなくなってしまいました。

この人たちのCDは、ときどき思い出したように発売されます。上写真は、最後の3枚目アルバム「Stand Up For Love」をあしらった96年発売の国内P-Vine盤で、「Stand Up…」とその前の「Tonite」の全曲が1枚のCDに収録されています。最近、この2枚のアルバムが再び日本から紙ジャケット仕様でCD発売されていますが、またすぐにレア化して、忘却の彼方へと旅立つことでしょう。