ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

アイルランド

ノーランズ (The Nolans)

Nolan Sisters 2今回は肩の力を抜いて、ノーランズと参りましょう。ご存知、イギリスが生んだガールポップ・グループで、1970年代末〜80年代前半に本国や日本で大人気となりました。

グループ名は、アイルランド人歌手の両親にもとに生まれた6人姉妹に由来し、うち年長の5人がアイルランド生まれ。62年にイギリス西部の「社交ダンスのメッカ」であるブラックプールに一家で移住しました。

人気が出たのは70年代後半ですが、既に63年には、地元ブラックプールで両親や2人の兄弟と一緒に「シンギング・ノーランズ」として活動していました。このとき、後にノーランズの一員となる末っ子のコリーン(Coleen、65年生まれ)はまだ誕生していませんでしたが、総勢9人もの大所帯ファミリー・ボーカル・グループだったのです。

後の1974年、姉妹は親や兄弟と離れて、EMIに所属して本格的なレコードデビューを果たします。当時のグループ名は「ノーラン・シスターズ」で、テレビのコメディやバラエティ番組に出演して人気者となりました。ただし、ヒットには恵まれませんでした。

転機が訪れたのは1979年のこと。アルバム「Nolan Sisters」収録のシングル「Spirit, Body and Soul」が英国チャートで34位になった後、セカンドシングルの「I'm In The Mood For Dancing」(邦題:ダンシング・シスター)が3位まで上昇。その人気が日本やオーストラリア、ニュージーランドにも飛び火したのでした。ガールポップ・コーラスグループや女性コーラスグループはほかにもたくさんありましたが、姉妹だけで(しかも大勢)構成していること自体が非常に珍しく、そんな新奇性も人気を後押ししたと思われます。

リードボーカルは、コリーンの次に若いバーニー・ノーラン(Bernie Nolan)。つい2年前、がんにより52歳の若さで亡くなってしまいましたが、あどけないルックスの割には、ときどきド演歌顔負けの“こぶし”をきかせるけっこうな迫力ボイスの持ち主でした。

この曲の歌詞は、この手のグループにありがちな夢見る乙女のロマンチックな恋心を綴ったような内容ではなく、「とにかく踊らば踊れ!頭のてっぺんから爪先まで!」「いやあ、踊りたくてたまんねえぜ!」などと(英語で)連呼するかなり積極的なダンシングぶりを見せつけており、おなじみのあの旋律も、王道を行くディスコポップとでも言うべき能天気な明るさが持ち味です。かっちりとした8ビートのリズム進行に身をゆだねれば、なかなか爽やかに踊り続けられそうな曲でしたけど、その爽やかさが仇になったのか、ディスコで聞くことはありませんでした。

80年にはノーランズと改名。イントロの「おとぼけアナログシンセ」のピコピコ音が脱力感を誘う「Gotta Pull Myself Together」(恋のハッピーデート)のほか、小粋なカントリー&ウエスタン風に攻め立てる「Attention To Me」(アテンション・トゥ・ミー)、再びバーニーさんのド迫力ハイトーンボイスが弾ける「Sexy Music」(セクシーミュージック)といった印象深いヒット曲を出しました。特に日本での人気はなかり持続しました。「ダンシング・シスター」なんて、日本語バージョンがあったくらいです。

けれども、80年代半ばにはセールスは急降下。メンバーがソロ活動に重心を移すなどして、気がつけばあえなくフェードアウトしていたわけです。同時代のイギリス産「男版アイドル」のベイ・シティー・ローラーズと違い、アメリカで人気が出なかったのも、世界的にはいま一つ印象が薄くなってしまった要因といえます。

それでも、6年前には再結成ツアーを行って好評を博しています。気をよくして2013年にもツアーをやると発表したのですが、バーニーさんの病状悪化により中止になりました。彼女は中心ボーカルでしたから、ここに本当の意味でノーランズは幕を下したといえましょう。

再発CDは、ベイシティー・ローラーズと同様に、ベスト盤を中心に比較的出回っています。写真もその一つで、2004年に発売されたSony Music盤のものです。

デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ (Dexys Midnight Runners)

Dexies Midnight Runners時間があるので、さっさと次行きま〜す。ジグソーばりの一発屋といえば、この人たちも私にとっては印象深い。80年代にいきなり大ヒットを飛ばした途端、さっそうと表舞台から走り去ってしまった「デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ」であります。

82年に出したアルバム「Too-Rye-Aty(邦題:女の涙はワザもんだ!!)」からのシングルカット「カモン・アイリーン」があれよと言う間に全米1位(ビルボード一般チャート)を獲得したのですが、それっきりになってしまいました。

この曲は、しょんぼりしたアルバムジャケット(写真)とは対照的に、やけに陽気なアコースティックかつフォークダンスな曲調です。なんだか、日本人なら誰でも知っている米国民謡「オクラホマ・ミキサー」(原曲はTurky In The Straw)みたい。そんな牧歌的フォーク&カントリーにソウル、ロックの要素を組み合わせた英国発ニューウェーブサウンドです。シンセサイザーが使われていないディスコ曲は既にほとんどなくなっていた時期だけに、異色のダンスヒットとなりました。

このグループは、アイルランド系英国人のケビン・ローランド(Kevin Rowland)が中心になって結成し、自らリードボーカルも務めています。「ミッドナイト・ランナーズ」とは、「(薬物などでハイになって)夜通し踊る人々」の意味。彼はもともとパンクロッカーだったのですが、自身のルーツでもあるアイルランド音楽、さらにはアイルランド人の先祖にあたるケルト人の民族音楽を基調としたユニークな音に目覚め、結果的に(1曲だけだが)名作を世に残したのです。バイオリンやバンジョー、アコーデオンといった生楽器を導入し、独自の世界観を創り上げたのでした。

先に述べた「フォークダンスぶり」は、彼がアイルランド系であることに起因します。18世紀以降、隣の大国・英国の圧迫や飢饉から逃れようと、貧しきアイルランド人が大量に米国に移住してゆきましたので、米国の民謡(フォークソング)や民族舞踊(フォークダンス)といったルーツ音楽には、ケルト音楽やアイリッシュダンスといったアイルランド風味がふんだんに盛り込まれています。「デキシーズ…」と「フォークダンス」の親和性、相似性には、そんな背景があると考えます。

私自身、「カモン・アイリーン」は当時のディスコでよく耳にしました。直前にかかっていたマイケル・ジャクソンデュラン・デュランなどのシンセでポップな流行曲との“繋がりの悪さ”を薄々感じながらも、フロアはけっこう老若男女で埋め尽くされたものです。ほかの曲では絶対にそんなことなかったのですが、後半に曲のテンポが加速度的に上がっていく部分があったりして、その違和感がかえって人々の意表を突き、「歓喜の舞」へと駆り立てたのでした。

このアルバムには、ほかにもカモン・アイリーンを多少速くした曲調の「ケルティック・ソウル・ブラザーズ」のような小気味よいダンス曲がありました。「カモン…」以降は人気が急落してしまったのは残念ですけど、かつて新天地を求めて米国に渡ったアイルランド移民のごとく、不況で失業者が急増していた80年代欧州の若者の憂さを晴らすかのような、元気な音楽を残してくれたわけです。

CDはほかのアルバムやベスト盤(?)を含めて各種出ておりますが、ディスコ的には「ワザもんだ!!」が1枚あれば十分だと存じます。
CDのライナーノーツ書きました


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