ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

オハイオ

ワイルド・チェリー (Wild Cherry)

wild cherryまたまたお久しぶりで〜す!昨日たまたま自分のこのブログを見ていたら、訪問者数の累計カウンターが「555555」の5並びになって腰を抜かしました。思わずスクショです(下写真)。なんとなく得した気分になって参りましたので、今回は渾身の力を込めて「ワイルド・チェリー」を取り上げてみましょう!

ご存知、「Play That Funky Music(プレイ・ザット・ファンキー・ミュージック)」(1976年、米ビルボード・ポップチャート1位、R&Bチャート1位、ディスコ12位)で一世を風靡したナウでイカした白人5人組バンド。この曲は、初っ端から繰り出されるパンチの効いたギターリフが、音楽史上に輝くほどに印象的。日本でも例えば、北海道が生んだド迫力ボイスの女性ボーカリスト大黒摩季さんの90年代の大ヒット曲「別れましょう私から消えましょうあなたから」(タイトルやたら長い)のイントロでも、ちょいとパクった感じで使われています。

バンド自体は1970年、アメリカの中西部と呼ばれる地域のオハイオ州出身のミュージシャンRob Parissi(ロブ・パラッシ)さんが、地元の仲間を集めて結成。All Music Guide系サイトなどによると、バンド名は、ロブさんが体調を崩した時になめていたという、アメリカで今も発売されている咳止めドロップの「Wild Cherry」に由来します。

彼らはオハイオ州に隣接するペンシルバニア州のピッツバーグを拠点にライブ活動を展開。これが評判を呼び、間もなくレコードデビューも果たしますが、あまり売れませんでした。そこで、アメリカ有数の工場地帯で労働者としての黒人居住者も多い地元での知名度を上げるべく、オハイオ州が本場でもあるファンクミュージックとロックを融合させたような曲「Play That Funky…」を制作して発表すると、瞬く間にヒットチャートを駆け上ったのです。

この曲は当時、全米で燎原の火のごとく広まっていたディスコブームにも完璧に乗っかっていました。何しろ、歌詞の前半に「俺はロックンロールをガンガン歌うシンガーだったんだが、何もかもがイヤになった時があった。試しにディスコを覗いてみたら、みんな踊りまくってノリノリだった。そしたら誰かが俺の方を振り向いて『あのファンキーな音楽をプレイしてくれ!』って叫んだのさ」といった具合に、「ワイルド・チェリー様ご一行、ディスコへの旅立ち」がしっかりと歌われているのです!

「Play That…」が入った9曲入りデビューアルバム「Wild Cherry」(上写真)も、当然ながら大ヒット。ウィルソン・ピケットのカバー「wild cherry 99 1/2」、「Don't Go Near The Water」、コモドアーズのカバー「I Feel Satisfied」などなど、似たような感じのもろファンキーなダンス曲が目白押しです。モータウンやアトランティックといった黒人音楽レーベルの影響を濃厚に映し出しています。

すっかり気をよくした5人は、その後も次々とアルバムを発表します。…でも、これがどうしても売れませんでした。79年に出した4枚目のアルバム「
Only The Wild Survive」を最後に、あえなく解散。どれもファンキー・ロック路線を踏襲しており、ディスコ好きにはなかなかの佳作だと思うのですけど、やはり「Play That...」のインパクトが強すぎて、それを超えるモノが発表できなかったというわけです。せっかくディスコに開眼して世に出てきたのに、ブームが下火になったのと軌を一にして終焉を迎えてしまったのでした。

彼らは「あの曲」によって正真正銘の一発屋となりました。とはいえ、そんな“奇跡の1曲”があったからこそ、末永く記憶されるバンドになれたのも確かです。デビューアルバムはCD化もされていて普通に入手できます。でも…ほかの3枚は中古LPしかなく、これからも末永くCD化されることはないでしょう(トホホ)。

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ギャップ・バンド (The Gap Band)

The Gap Band重低音シンセ炸裂のぶいぶい黒人ファンク・ディスコといえば、ギャップ・バンドを挙げたいところ。とりわけ、「イントロ効果音で車のエンジン鳴り響き〜の急ブレーキかけ〜の」の「バーン・ラバー・オン・ミー」(80年、米ディスコチャート19位、R&Bチャート1位)は、全開バリバリダンクラチューンであります。

ローニー、チャーリー、ロバートの「ウィルソン3兄弟」が主要メンバーで1967年結成。オハイオ州の石油産出地として知られるタルサの出身で、父親は牧師でした。本来はR&Bを志向しつつも、プロデビュー当時は同郷のロック&ブルースのスターであるレオン・ラッセルのバックバンドとしてスタートしたという変り種。ですから、最初はかなりマッチョな白人ロック風のアルバムを出すなどしてアイデンティティーを見失い、セールス的にもさんざんな結果でした。

3兄弟、「俺たちは何やってるんだ……っていうか何をやりたいんだ!」と人知れず苦悩していたところ、ロニー・シモンズ(Lonnie Simmons)という音楽マネージャーと出会い、運命が変わったのでした。70年代後半、そう、ディスコブームの波がザッバ〜ンと押し寄せていたころです。

シモンズさんは最初、なぜか「よし、黒人のビージーズを目指そう」と考えて、柔らかディスコ風に3兄弟を売り出そうとしました。「やべえ、また変な方向に行っちゃいそうだ」と兄弟たちは不安になりましたが、79年にシモンズのプロデュースで出来上がったアルバム「ザ・ギャップ・バンド」は結果的には黒っぽい曲調で大評判。シングルカットされたアースorクール風の「シェイク(Shake)」はR&Bチャート4位まで上昇する大ヒットとなったのです。

このアルバムでは、Baby Baba Boogieという曲が、典型的なディスコチューン(ディスコチャート48位)。「ブーギー」という“ディスコ用語”からも察せられるように、四つ打ちビートに跳ねるようなギターリフ、軽快なホーンセクション、それに「ダンス!」「ブーギー!」「ゲッダウン!」のお決まりの女性コーラスとハンドクラップとくれば、もう完璧です。

ただし、この人たちの本領が発揮されるのは、よりシンセファンク色が強まる80年以降。バーン・ラバーも、この年に発売された「ザ・ギャップ・バンド掘廚房録されています。この曲を特徴づけるイントロの効果音は、車2台を使って制作されたそうですが、レコード会社側は当初、「『キキーッ!!』という急ブレーキの音が、(カーラジオのリスナー向けの)ラジオ局から敬遠されそうだからヤメロ」と削除を命じたそうです。結果的には売れたから、全然オッケーだったというわけですね。

続くアルバム「ザ・ギャップ・バンド検廖82年)は前作よりももっと売れて、収録曲ではこれもディスコ定番の「アーリ・イン・ザ・モーニング」(ディスコチャート13位、R&B1位)、「ユー・ドロップ・ア・バム・オン・ミー」(同39位、同2位)、「アウトスタンディング」(同24位、同1位)の特大ヒットを飛ばしました。

「アーリー…」については、「コケコッコー〜」というこれまた有名なイントロの脱力系効果音が特徴なのですが、これは逆に“ラジオ局向け”のマーケティング戦略だったそうです。「朝の車での通勤時間に、ラジオ局のDJに流してもらおう」と考えて挿入したところ、実際にラジオでのオンエア率が上がったのでした。

さらに次のアルバム「ザ・ギャップ・バンド后廖83年)にも、「パーティー・トレイン」(R&B3位)のようなご機嫌な(PVも)ダンサーが収録されていて、非常に楽しめる内容になっております。

この人たちの曲は、とにかく「ぶいぶいシンセと野太いボーカル」で攻めまくりなのが良い。ズシズシ低音が全身を揺さぶり、踊りがいがあるアーチストでもあります。とはいっても、全体的に上品さを感じさせますし、バラードも悪くないと思います。「ザ・ボーイズ・アー・バック・イン・タウン」(79年)のような、フォークっぽい美メロの曲だってあります。

パーラメントとかブーツィー・コリンズのような重量級ファンクのアーチストとも、よく対比されます。でも、彼らについては「あれ?宇宙からの使者さんですか?」的な奇天烈な雰囲気が、私などには「胃もたれ感」をもたらしますね。

ピークは80年代半ばだったギャップ・バンド。ですが、その曲の数々は、90年代以降も、シャキール・オニールをはじめさまざまなアーチストたちによって、カバーないしはサンプリングされて生き続けました。80年代ディスコファンクの代表であることには違いないと思われます。

ギャップ・バンドは激しくCD化されています。中でも、写真の「ファンク・エッセンシャル・シリーズ」の米盤ベストは、選曲と音質面で優れています。同じシリーズで「ギャップ・バンド12インチコレクション」というのもあって、こちらもなかなかの充実ぶりです。
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