ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

カナダ

タップス (Tapps)

Tapps今回はカナダつながりでタップスです。トロントを拠点に活動していた3人グループで、中心人物はポルトガル生まれのアラン・コエルホ(Allan Celho)なる人物。1983年に発売したハイエナジーディスコ「My Forbidden Lover」(マイ・フォービッデン・ラバー=禁断の恋人、YouTubeご参考)が世界的な人気を獲得しました。

この曲は、当時流行り始めてきたイタリア系ディスコ(イタロディスコ)にも似た、シンセサイザーを軸としたメロディーとビート展開を特徴としています。

私は当時、ディスコのフロアで初めて聞いた時、イントロから入ってくる「ぴゃらん、ぴゃらんら、ぴゃらん、ぴゃらららら〜♪」(描写困難)という感じの、ちょっと人を食ったような、さらには「ハンメルの笛吹き」(?)のような「おとぼけメルヘンシンセ」のリフに強く印象付けられたものです。同時期にヒットしたブロンスキー・ビートの「スモールタウン・ボーイ」のリフにも少し似ておりまして、今も耳の奥にこびりついて離れないのでございます。

グループは、学生時代の級友であるAllan、Tony DaCosta、Paul Silvaの3人で結成。ボーカルとして加えた女性は、Barbara Doustという人ですけど、コンサートなどでの「表向きの顔」として、Candy Berthiaumeという別の女性を起用していたそうです。本物の人は、なんだかかわいそうですが。

TAPPSという名前は、級友3人のファーストネームを繋ぎ合わせた造語。彼らを紹介したウェッブサイトなどによると、最初は、ポルトガル系移民がたくさんいたトロントで、音楽好きの若者が集まって「地元で人気者になろう」とスタートしたようですが、ディスコグループとしては世界的にも知られるようになりました。

彼らは代表曲となった「My Forbidden・・・」の後も、「Runaway」とか「Harricane」、それに「In The Heat Of The Night」といったハイエナジー曲を次々と世に送り出し、そこそこの人気を保ったのですが、80年代後半には失速。「ハイエナジー」というジャンル自体の影が薄くなり、やはり消えていく運命となりました。

「ポルトガル系ディスコ」(?)の珍しいグループだったTappsですが、CDはあまり出ていません。写真は、80年代モノを数多くCD化している米Thumpレコードが15年ほど前に発売したCD「Greatest Hits」ですが、あまり巷では見かけなくなりました。12インチをこつこつと集める方がずっと賢明だと思われます。

なんだか地味だったかな、TAPPS……。それでも、私の耳の奥では今も、あの「おとぼけのリフ」が鳴り響きます――「ぴゃらん、ぴゃらんら、ぴゃらん、ぴゃらららら〜♪」(やっぱり描写困難)。

ジノ・ソッチョ (Gino Soccio)

Gino Soccioメガトン・レーベルはハイエナジーの花形。でも、本流ディスコは1979年後半には既に、アメリカでは悲惨な瀕死の時代を迎えていました。「もう派手なドナサマーな曲はいらない。でもやっぱり踊りたい」ということで、アメリカ人が選択したのは、抑制的な「隠れディスコな曲」でした。

全米ディスコチャートをみると、1979年の年間上位の曲には「コンタクト」(エドウィン・スター)、「フライ・アウェイ」(ヴォヤージ)、「恋のサバイバル」(グロリアゲイナー)といった、「ああ、やっぱりね」という派手なのが目立つのですが、80年になると一変して、「セカンド・タイム・アラウンド」(シャラマー)、「アンド・ザ・ビート・ゴーズ・オン」(ウィスパーズ)、「ストンプ」(ブラザーズ・ジョンソン)など、ちょっとブラコンな落ち着いた曲がトップに立つようになったのでした。

そんな狭間シーズンに生まれ、そして消えていったディスコ・アーチストの一人として挙げられるのが、今回紹介する「ジノ・ソッチョ」であります。

まず、「いきなり『そっちょ』って言われてもねえ…」と変な名前なのですが、なかなかしたたかに「アメリカの80年」をサバイバルしたディスコ野郎には違いありません。代表曲は「ダンサー」(79年)、「トライ・イット・アウト」(81年)、「イッツ・オールライト」(82年)などですが、とりわけ「ダンサー」と「トライ・イット・アウト」は、難しい時代だったにもかかわらず、ディスコチャートでそれぞれ6週連続1位というバカウケ状態だったのです。まさにアメリカでの時流に乗ったとしか言いようがありません。

ソッチョさんはカナダ生まれ。70年代後半には、まだチープながらも凝ったシンセディスコを世に送り出していた「ケベケレクトリック」(これも変な名前)というバンドにも参加していたという、ディスコのプロ。ソロでの活動が中心になってから、やや渋めなシンセディスコをリリースして、まんまと成功したわけです。

曲調は、単調なイタロサウンドといった風情。ギターとホーンセクションをやや強調してます。特に「血沸き肉踊る」というディスコではないのですけど、「ええ? オレ? べつにフィーバーしてないよ」と、涼しい顔でなんとなく身体をくねらせる、といった気分のときには最適ではないでしょうか。……でも、なんだか嫌だな、そんなぬるいディスコ……。

とまあ、不満もありながらも、前回のメガトン!のように、一方では「いけいけピョーン!!」なディスコも、同じアメリカに存在していたわけですから、こういった“洗練された音”(?)にも、選択肢として一定の理解を示すことにいたします。実際、当時のディスコでは私も、ピークとピークの合間の時間帯に、チロっと聞いた記憶があります。つまり、場つなぎの曲として、存在感をアピールするタイプですね。ホントに「狭間なアーチスト」であります。

写真のCDはカナダの「ユニディスク・ミュージック」のベスト盤。ほかにもいくつか出ていますが、これが最上の出来だと思います。

Bombers (ボマーズ)

Everybody Get Dancin'カナダのバンドBombersは、1979年「Everybody Get Dancin'」が大ヒット。米ビルボード・ディスコチャートで3位まで上昇しました。この曲は色んなバージョンがあるのですが、ほぼ同じ頃に作られた「12インチ・リミックス」というのが良い。多少、音は「薄い」のですけれども、メロディーが幾分切なくてキャッチーで、私は好きです。

まあ、日本では無名中の無名です。けれども、けっこう当時のディスコシーンには影響を及ぼしたので(断定)、紹介したというわけです。

この人たちはファーストの「Bombers」と、「Everybody」が入っている「Bombers 2」の実質2枚しかアルバムを出していません。が、一枚目にはかの「メキシカン」という面白い曲も収録されています。

メキシカンは84年、これまで何度か名前を出したディスコDJ兼リミキサーのジェリー・ビーンがまずリメイクして、ディスコヒットさせています(84年にビルボード・ディスコチャート1位)。

メキシカンの原曲は、70年代前半にちょっとだけ活躍した英国のロックバンド「ベーブルース」がリリースしてヒットさせています。ジェリービーンは2度目のリメイクということになります。原曲も、2回のリメイク曲も、ラテン系の音色に迫力ボーカルが乗っかった、かなりの良曲だと思っています。

さらに、このボマーズ自体、なかなか変てこな歴史を誇っています。前身はKebekelektrik(ケベケレクトリック、ケベックエレクトリック)というけったいな名前のエレクトリック系バンド。このバンドには、後に「Try It Out」などのヒットを飛ばしたGino Soccioや後の「ライム」のDenis LePagegが参加していたのです。

電子音を得意とするカナダの若きアーチストが腕をふるっていたのですよ。おまけに、名ディスコミキサーのトム・モールトンも参加しています。

ただし、Kebekelektrikについては、あまりおススメできません。資料的価値しかないと思います。音がボマーズよりもさらに非常に「薄い」のです。「何でこんな音になっちまったのか?」といささか残念です。いくら電子楽器がまだ黎明期だったとはいえ、これでは踊る気になりません。ボマーズになってから幾分、垢抜けたという印象です。

ボマーズもKebekelektrikもカナダだけに、カナダのディスコ復刻レーベルのユニディスクからちゃんとCDが出ています。まあ、かなりマイナーだし、曲の出来にもムラがあります。ダンクラ系のDJライブで、珍しいとこ狙いでかけるのだとしても、ボマーズのEverybody…とメキシカン以外は、チョットきつい気がします。
プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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