Hot Blood10周年、細く、長〜く、せめて月イチ更新で…というわけで今回、奇妙奇天烈摩訶不思議、抱腹絶倒笑止千万な奇人変人と自ら称してはばからない私mrkickが満を持してお送りするのは、「チーン、チーン…♪」ってな具合に、珍妙な柱時計の効果音で始まる究極のへなちょこおバカさんディスコ、「ソウル・ドラキュラ」で〜す。

これ、当時流行った「エクソシスト」なんかのホラー映画に影響を受けた、一発狙いの欧州系ディスコ・プロジェクトであることは間違いないのですが、あまり情報がない謎のグループでもあります。でも、「ドラキュラ」だけは、多くの人が一度は聞いたことがあると思います(ラジオとか駅前の喫茶店の有線とかで)。

各種資料や欧州の友人のディスコDJにあたっても、「実体ははっきりしない」との答えが返ってきます。単に「camp(低俗)でcheesy(安っぽい)なホラーものでしたな」という感じ。それにしても、「Hot Blood(熱い血)」って、ホット・コーヒーとかホット・ココアみたいな感覚で、人様の生き血をすすってはいけません。

素性がよく分からない人たちではありますが、レコードのクレジットをよくよく見ると、ボニーMのディスコリメイクの名曲「サニー」(76年)などのアレンジャーでもあったステファン・クリンクハマー(Stefan Klinkhammer)らが中心的に関わっていたようですので、旧西ドイツのミュンヘン・ディスコの範疇であることが浮かび上がります。日本のウィキペディアでは「フランスのグループ」と記載されていますが、根拠は不明。楽曲データベース「Discogs」や「Disco Delivery」をはじめ海外のサイトではことごとく「ドイツのグループ」となっておりますので、やはりドイツの線が濃厚です。

しかも、最初にフランスのCarrereレーベル(ディスコものをよくリリースしていた)からシングル(写真)が発売されたのは1975年ですから、かなり早い段階の「ミュンヘンひねりワザ恐怖ディスコ」となります。

この「ドラキュラ」は日本を中心に大ヒット。翌1976年には、2枚目のシングル「Le Chat (邦題:快傑!ソウル・キャット 」を発売し、特にフランスで大ヒットしています。フランス語の分かる海外の友人によると、「歌詞がすごいスケベ〜だから、面白くて売れたんだよ」といいます。まあ、歌うことより踊ることに重きを置くディスコの歌詞ってのは、大概はそんなもんです。

その翌1977年には、「ドラキュラ」など7曲が収録されたアルバム「Dracula And C°」を発売しましたが、これが最初で最後のアルバムになってしまいました。でも、内容的には、「Blackmail」とか「Baby Frankie Stein」など、例によってエコーを利かせた「トゥールッ、トゥルットゥ♪、ワッハー、シュワシュワハー♪」の女性ボーカルと低音の男性ボーカルにストリングスを乗せたオーケストラディスコが縦横無尽に展開していて、至ってまともな印象です。

薄暗いフロアでかかったら、踊りながら背後霊を感じてしまいそうな世にも恐ろしい「ホラー・ディスコ」。似たような例としては、同時代では以前にちょっと紹介した“吸血鬼ディスコ”のサントラ「Nocturna」(79年)とか、クラウディオ・シモネッティらがいたゴブリンの「Tenebre」(82年、映画「シャドー」のテーマ。ゴブリンはイタリア・ホラーの傑作「サスペリア」の音楽も担当)、イージー・ゴーイングの「Fear」(79年。シモネッティはこのグループにもいた)、ラロ・シフリンの「ジョーズ」(76年)、そしてマイケルジャクソンの「スリラー」(笑。82年)あたりが思い浮かびます。純粋なホラーではないにせよ、ドナ・サマーの「Deep」(77年)なんかも緊迫しててけっこうコワい。あからさまな直球勝負のホット・ブラッドも、そうした系譜に連なる存在といえましょう(実体不明にせよ)。

ホット・ブラッドのアルバムの再発CDは、ロシアの変な海賊盤以外はありません。正規盤があったら欲しいけど、謎が謎を呼ぶグループだけに原盤権探し自体が難しそうです。「ドラキュラ」を収録したディスココンピであれば、以前に紹介したものも含めてたくさんあります。