Captain and Tennilleいやあお久しぶりで〜す。今回は、これまで何度となく取り上げてきた「ディスコで復活狙い」のパターンを再び。楽器もやるけどダ・カーポやチェリッシュみたいな米国の仲良し夫婦ポップデュオ「キャプテン・アンド・テニール」を紹介しておきましょう。

1942年生まれのDaryl Dragon(ダリル・ドラゴン。ニックネームは「キャプテン」)、40年生まれのToni Tennille(トニー・テニール)の夫婦2人ともに、1970年代前半にはビーチ・ボーイズのキーボード担当のバックミュージシャンでした。

結婚したのは1975年で、その年にデュオとして初のアルバム「 Love Will Keep Us Together」(邦題・「愛ある限り」)をA&Mレコードからリリース。シングルカットされたニール・セダカの曲のカバーで軽快極まるアルバムタイトル曲が、いきなり全米ビルボード一般チャート1位に輝きました!

その後毎年、A&Mからアルバムを発表し、ジャングル風のイントロからいきなり弾むように展開する爽やか系「Lonly Night (Angel Face)」(全米一般チャート3位)などのヒットを連発しましたが、78年に出した4枚目「Dream」があまり売れず、A&Mとの契約は解除になってしまいました。

そこに目を付けたのが、ドナ・サマービレッジ・ピープルが在籍していた「ディスコの殿堂」カサブランカ・レコードの社長、ニール・ボガートです。2人を説得して移籍させて、アルバム「Make Your Move」(写真、YouTubeで視聴可)をリリースしました。このアルバムからはしっぽりバラードの「Do That To Me One More Time」がなんと全米一般チャート1位となり、再びトップスターの座に返り咲くことになったのです。

このアルバムは夫ダリルがプロデュース。「Do That…」などのバラード数曲をのぞくと、けっこうなディスコ路線(カサブランカだから当たり前)です。特にA面4曲目「How Can You Be So Cold」は、もう最初からどんどこ四つ打ちディスコビートが炸裂し、そこにトニーのややハスキーなアルト&メゾソプラノの歌声が伸びやかに躍動するパターン。中盤ではディスコDJが次の曲と繋ぎやすいように長めの間奏(ブレイク)が入ってきて、印象的なベースラインやホーンセクションが織り込まれています。

B面2曲目「Happy Together」も正統派ディスコのノリを踏襲しています。やはり60年代に活躍した米国のロックバンド「ザ・タートルズ」の代表曲のカバーなのですが、途中でシタールの音色や馬の足音が入ってくるなど、珍妙なオリエンタル感覚で攻め立てています。

2005年に米ユニバーサル・ミュージックから発売された「Make Your Move」の再発CDのライナーノーツには、トニー自身が寄稿しているのですが、このアルバムについて「ダリルの一風変った解釈が詰まっている『中東の砂漠風ディスコ』なのよ」と説明しています。まあヒットしたのはバラードの「Do That…」だったわけですけど、かつてはポップスで一世を風靡したこの人たちにも、立派に「ディスコ期」があったわけです。

この後、2人は80年にカサブランカからもう1枚、アルバムを出しますが、これは不発に終わり、音楽業界の表舞台からは遠ざかっていきます。今は2人とも70代半ばになりますが、つい2年前に離婚しており、それぞれ米国内で静かに余生を過ごしているようです。