Rofo今回もイタロディスコの代表選手ロフォ。ベルギーのミュージシャンFonny De Wulfらが主軸を担ったディスコグループです。

重厚で斬新なシンセサイザー・アレンジとボコーダーの歌声が印象的な「Flashdance On The Discofloowr」(上写真、1983年)のほか、「You've Got To Move It On」(84年)、「I Want You」(85年)といったダンスフロアヒットを欧州、日本を中心に飛ばしました。私自身もディスコで聞いて、“あくまで陽気かつ複雑な”シンセの音色が気に入り、すぐさまレコードを買いに走った記憶があります。80年代初期を代表する、完成度の高いイタロディスコだと今でも思っております。

ロフォは80年代半ば以降は、後にソロでもイタロ系のディスコヒットを連発したジョン・サウリをボーカルに迎えました。中でも上記の「I Want You」については、同じベルギーの“歌姫”サマンサ・ジルズ(以前の投稿参照)とデュエットした「リミックス」バージョン(下のヘンな犬ジャケ写真)があります。マニアの間では非常に人気があるバージョンで、後半の2人の男女ボーカルの掛け合いが見事で、とても聴き応えがあります。

「I Want You」の後も「Beach Love」「Rofo´s Theme」、 「Tonight Is The Night」 といったイタロの佳作を発表しておりますが、ご他聞に漏れず90年代に入ると人気は失速していきました。

80年代の日本と欧州で隆盛を極めたイタロディスコは当然ながらイタリアが発祥ですが、実に多種多様であり、イタリア産だけとは限りません。ドイツ産もあればスペイン産、オランダ産、北欧産もあります。つまり、Italo DiscoはジャンルであってItalian Discoではないのです。欧州全般のディスコを指す「ユーロディスコ」の範疇に入るといえます。イタロ・ディスコ(Italo Disco)という表現自体、ドイツの大手レーベル「ZYX」が80年代前半に最初に使用し始めたといわれています。ロフォにしても、国籍で言えばベルギーなわけですからね。

イタロディスコの最大の原点は、ジョルジオ・モロダーをはじめ、セローン、スペース、イージー・ゴーイング、テレックスといった70年代後半の欧州各地のアーチストによるシンセサイザー・ディスコにあります。80年代に入り、微妙にスタイルは違えども、パトリック・カウリー、ボビー・オーランドなどの米国勢やストック・エイトケン・ウォーターマン(SAW)、イアン・レヴィーンなどの英国勢、トランスX、ライムなどのカナダ勢、モダン・トーキング、 ファンシーなどのドイツ勢も同系列の戦線に加わり、まさに百花繚乱の状況となりました。

とりわけ日本での人気は絶大で、ちょうど円高のバブル経済期と重なったこともあり、大量にイタロディスコが輸入された時期があります。シンセサイザー(YAMAHA、ROLAND・・・)になじみがある“電子テクノロジー立国”だというだけはなく、イタロディスコが醸し出すどこか牧歌的で叙情的なメロディーが“和の懐かしさ”を呼び起こすのでしょうか。その後も、輸入イタロを継承する形で、Avexレーベルなどが推進した日本独自の「ユーロビート」の音楽文化を確立し、世界ポピュラーミュージック・シーンの中でも独特の位置を占めています。

では、本家欧州でのイタロの行く末はどうなったのでしょうか。スペインに住む私の「ディスコ友達」(!)で、スペインのディスコ・クラブ系レーベル「Blanco y Negro」に勤めるJosep Punset氏(42)はちょうど2〜3日前、メールでこんなことを言っていました。「昔、『Max Music』というレーベルでイタロディスコの音楽エンジニアとして働いていたころ、スペインを含む欧州には良質な曲が大量にあった。毎週のように新しくて面白い曲が世に出ていたよ。(輸出先として)日本は大市場で、私自身音楽エンジニアとして何度も制作に関わったことがあるデヴィッド・ライムが、日本で大人気だということも有名だった。ただ、近年はこの系統の曲は、まったく面白みがなく売れそうもない曲が多い。エレクトロなどの新しい楽曲を試聴してもどれも同じに聞こえるし、スタイル的にも80年代や90年代のパクリだ。Blanco y Negroも経営的に苦しい状況なんだよ。給料も安いんだ…」。

シンセサイザー系のダンス曲がどれも同じに聞こえるというのは、私も長年感じていましたし(だから80年代まででダンスミュージックを追っかけるのをほぼ止めた)、ほかにもいろんな所で耳にする不満ではあります。サンプリングなどの“曲の再利用”技術が発達する一方、シンセサイザーも過度に進化して“人間離れ”してしまった今、「イタロ発祥の地」欧州でもダンスミュージックは過渡期にあるようです。

さて、ロフォのCDですが、アルバムについては絶望的な廃盤状態。「Flashlight・・・」や「I Want You」といったヒットシングルについては、上記Blanco y Negroなどが出しているCDコンピにときどき入っています。

Rofo