ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

ジョージ・クリントン

ブームは来なかったがタカ・ブーム (Taka Boom)

Taka BoomRed Hot」(79年、米ディスコチャート19位)などのディスコヒットで知られるタカ・ブームは、チャカ・カーンの1歳年下の妹。お姉さんがあまりにも偉大過ぎて影が薄いのは確かですが、ディスコ界での活躍ぶりはなかなかのものです。

1954年、シカゴに生まれたタカの本名はイボンヌ・スティーブンス(Ybonne Stevens)で、チャカお姉さんはイベット(Yvette)という名でした。芸名がタカ・ブーム(日本語ではブーンと読む場合もある)ということですけど、なんと「タカ・カーン(Taka Kahn)」と名乗ることもあったといいますからややこしい。

ユニークな「ブーム」の名は、元夫(サックス奏者のJohn Brumbach)のかつての職業が土木建築作業員で、依頼主の家のプールを庭に作る際などに、「ドカン!(Boom!)」とよく爆薬を爆発させて作業していたことに由来するといいます(Miss Funkyflyy's Web Pagesのインタビュー記事より)。これもなんかヘンです。

チャカ・タカ姉妹は幼いころから仲が良く、一緒に大好きな歌の道に入ることを決心。60年代前半にThe Crystalettesという少女グループを結成し、無名ながらレコードも出しました(激レアYoutube)。

このThe Crystalettesは間もなく解散。チャカタカ姉妹は The Shades of Blackというボーカルグループを新たに結成してライブ活動を続けました。それでも芽は出ず、「やっぱり中途半端はよくない!」と、2人とも通っていた高校を中退して歌手活動に専念することにしました。うちチャカはロサンゼルスに移り住み、後にR&Bグループ「ルーファス&チャカ・カーン」のリードボーカルとして頭角を現すことになります。

タカもギャップ・バンド、ブラッド・ストーン、ジョージクリントンのP-Funk軍団、それに姉のいるルーファスなどでバックボーカルを務めるようになりました。今年9月に死去したモータウンレーベルの元大物プロデューサーで、テンプテーションズなどを手がけたノーマン・ホイットフィールドに頼まれ、ファンクグループ「The Undisputed Truth」のボーカルとして活動した時期もあります。

1979年には念願のソロデビューアルバム「Taka Boom」を発表し、ディスコを中心にヒットを記録しました。姉チャカも助っ人バックボーカルとして参加。収録曲は「Red Hot」のほか、サックスをフィーチャーしたアゲアゲ調のクラブクラシック「Night Dancin'」(R&B20位)などが含まれております。

タカについてはディスコブーム期、グラス・ファミリーというディスコグループのボーカリストになった時期もありました。78年に「Mr. Dj You Know How To Make Me Dance」という曲がディスコチャート11位に入り、大健闘しました。

姉チャカは80年代に入り、ソロ歌手として大ブレイクしたというのは周知の通り。タカも80年代半ば、姉チャカを始めとする豪華ミュージシャンの助太刀を頼み、「Boomerang」と「Middle Of The Night」の2枚のソロアルバムを出しました。が、セールス的には寂しい状態でした。中身的にはダンサブルでディスコ好きには納得がいくのですが、世間の風は冷たかった・・・・・・というわけで。

チャカ、タカともに、素人にはマネのできない伸びのある迫力ボイスが魅力。しかし、声質は基本的に似ているものの、パワーや声量という点では姉チャカの方がやはり上であります。比較するとどうしてもタカにとって分が悪いのですね。80年代には「チャカ・ブーム」はあったわけですけど、名前通りの“タカ・ブーム”はやって来ませんでした。

それでも、見事に多彩なディスコ歴は特筆すべきでしょう。彼女のアルバムに参加するミュージシャンが豪華なのも、少女時代からの長年の経歴の中で培った人脈が豊かであるが故なのです。

ちなみに、タカは90年代後半になって、ハウスミュージックの分野で成功を収めたプロデューサーであるJoey Negroに見出され、「Joey Negro Featuring Taka Boom」のアーチスト名で「Can't Get High Without U」(98年、米ディスコチャート1位)という曲も大ヒットさせています。

タカ・ブームは長年、ディスコファン(一部マニア)からはCD化が待望されていたのですが、最近になって「Middle Of The Night」(85年、写真)だけがなぜかCD化されて驚きました(英FTG Records盤)。しかも、ボーナストラックとして、ホイットニー・ヒューストン風で時代を感じさせる表題曲と、これの前の83年のアルバム「Boomerang」に入っていた軽快ファンクチューン「Love Party」(これはVernon Burch の Get UpやZoomのSaturday, Saturday Nightに似ている)のそれぞれ12インチバージョンが入っているのが嬉しい!

・・・・・・と思ったら、このCDの2曲目「Rock Yo' World」には致命的な「音飛び」が2カ所もあることが判明。マスタリング時のバグと思われます。輸入盤ではたま〜にあることですが、姉チャカもバックボーカルで参加しているアップテンポで結構よい曲なだけに、最後はトホホな気持ちになりましたとさ。

パーラメント (Parliament)

Parliament70年代から80年代にかけて活躍した企画モノの超どファンク集団であるパーラメントは、ゴリゴリ、コテコテの重量感が音楽的な持ち味。ステージ衣装もド派手で、特筆すべき暑苦しさであります。

中心人物は、「P-Funk(ピュア・ファンク)党総裁」を名乗り、変人ぶりをいかんなく発揮したジョージ・クリントン。それに、ユニークなベースワークで名を馳せたブーツィー・コリンズなどもいました。総勢でなんと約40人ものメンバーで構成しており、これで音に厚みが出ない方がおかしいでしょう。「踊りやすさ」という点では全体的に今ひとつですが、独特のリズム感、グルーブ感があります。

パーラメント結成は1956年にまでさかのぼります。代表曲は「フラッシュライト」(78年、R&Bチャート1位)とか「アクアブギー」(同1位)、「Tear The Roof Of The Sucker」(76年、同5位)など。後のヒップホップ界に与えた影響は計り知れず、後のアーチストに頻繁にサンプリングされていることでも知られます。

この人たちは、厳密には「ファンク」「ヒップホップ」のジャンルに属しているとされます。ジョージさん自身、ブームになったディスコを毛嫌いし、「ファンク」という名称に特段にこだわった人物でした。

けれども、特に70年代後半は、立派なディスコを世に送り出していたと私は思いますね。まず、必要以上にカネをかけたステージや衣装、それに大いに人を食った曲調のバカさ加減とインフレぶりが、いかにも過剰で確信犯的な「ディスコ」であります。70年代半ばからずっと、ディスコの名門レーベル「カサブランカ」に所属していたというのも、重要な点ではないでしょうか。

80年代以降は、奇想天外で無限の広がりを持った彼らのハイパーファンクも失速していきます。考え様によっては、ディスコとともに宇宙の彼方に消えていった、と言えなくもありませんね。しかし、体全体に染み込んでくるような黒人音楽の一つの象徴として、今もなお語り継がれているグループです。

ちなみに、ジョージさんは当時、パーラメントのリズムセクション部隊で構成した「ファンカデリック」、女性ボーカル部隊で構成した「パーレット」という下部組織グループも統括していました。いずれもディスコ/ダンス系のヒット曲を数多く出しています。

再発CDについては、相当なメジャーグループだけに、パーラメント、パーレット、ファンカデリックともに数多く出回っています。上写真のCDは、「フラッシュライト」を収録した77年のアルバム「Funkentelechy Vs. the Placebo Syndrome」であります。

今回、なぜパーラメントを紹介したかというと、彼らやディスコ音楽をテーマにしたかなり出来のよいドキュメンタリー番組の一部を、YouTubeで発見したからでした。近いうちに消される可能性もありますが以下、貼り付けておきます。

プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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