Jigsawこの人たちは、もう絶対にあの曲しか浮かびません。……いや、いくらなんでも、もう1曲ぐらいあったはずだぞ……やっぱり、残念ながらどうしても浮かびませーん。……ハイそうです、「スカイ・ハイ」。

というわけで、今回は「天下御免の一発野郎」ジグソーであります。まあ、いまさら「リング・マイベル」「ディスコ・ダック」なんかの例を出すまでもなく、ディスコってやつは一発屋を大量に生んだジャンルですので、別にどうってことはないのですが、それにしても切な過ぎる、この一発ぶりは。

この曲は1975年の発売。文字通り天にも昇るような明るさと、親しみやすいにもほどがあるポジティブ・メロディー&リズム進行を特徴としています。米ビルボード一般チャートで3位まで上昇するなど、世界的に記憶される名曲の一つとなりました。ただし、詞の内容は「どうして僕たちの愛は終わらなければならなかったのか! 君が空高く吹き飛ばしてしまったんだぞ!」といった感じで、失恋を明るく歌っているようですが。

とりわけ日本での人気は別格で、当時テレビで大人気だったプロレスラーのリング入場曲に使われたこともあります。近くのスーパーの特売セールや子供向けイベントの会場などで、誰もが一度は必ず耳にしたことがあるはずです。当然ディスコでも流行りましたが、ホントにかかっちゃったら恥ずかしくて踊れなくなることウケアイです。

さて、そんなジグソーとはどんな人々なのでしょうか。実は、60年代から80年代にかけてかなり長期間、活動した英国のグループで、デビュー当初は相当に過激なハードロックバンドでした。あまりにも売れなかったからなのか、70年代には節操なくビートルズみたいなソフトロック路線に変更。それでもあまり売れなかったけれども、ディスコっぽさを導入した75年にかろうじて「スカイハイ」をヒットさせたのでした。

それでも、よくよく聴いてみれば、他の曲もそんなに悪くはありません。リードボーカルのデス・ダイヤー(Des Dyer)を中心としたコーラスワークは美しくまとまっていてなかなか印象的ですし、演奏もアレンジもしっかりしている。随所にシンセサイザーのような新しい技術を導入するなど、工夫の跡もみられます。

例えば、ギルバート・オサリバンみたいなポップロックの「Who Do You Think You Are」とか、いかにも70年代なバラード「My Summer Song」とか、メロウソウルな雰囲気の「You Bring Out The Best In Me」(素敵なMC付きのYouTube動画でどうぞ)なんて、(ディスコではないにせよ)もっとヒットしていても不思議はないほどの佳作だと思います。でも如何せん、ハードロックからディスコ、R&Bまでがむしゃらに手出しした分、キャリアを通してのバラバラ感や個性の乏しさ、軽さはどうしても否めません。

やっぱり、すべてにおいて「天下御免のスカイハイ」の大成功が災いしたのではないでしょうか。この曲はあまりにもインパクトが強過ぎました。もう完全に「ジグソー=スカイハイ=天下御免」が成立しています。もちろん、「不発の無名」よりはずっといいわけですけどね。

ジグソーのCDは、一発屋とはいえベスト盤がいろいろ出ています(全曲スカイハイというわけではなく)。5、6年前には、日本盤で個別アルバムもいくつかCDで発売されていまして、写真はその1枚の「Pieces Of Magic (邦題:恋のマジック)」(ビクター)。「スカイハイ」の後の77年に発売されたものですが、mrkickとしては恐る恐る買ってみたわけです。知らない曲ばかりでなんだか怖かったのですけど、意外や意外、ポップあり、かなりアゲアゲなシンセサイザー・ディスコあり、ファンク風あり、バラードありと、けっこう楽しめました(やっぱりバラバラなわけだが)。