ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

デトロイト

エーディーシー・バンド (ADC Band)

ADC Band今回もまたまた黒人ファンク系で〜す!出自はなかなかゴージャスなのに、70年代ディスコブーム期にディスコ化してもさっぱり売れなかった残念さもさることながら、気を取り直して今聴いてみたら「やっぱりいいじゃん!」となってしまう麗しいグループ「ADCバンド」であります。

このバンドを下支えした人物にジョニー・メイ・マシューズ(Johnnie Mae Matthews)という女性がいます。彼女は、米アラバマ州出身の中堅ソウルシンガーだったのですが、実は1958年もの昔、アメリカで初めて黒人女性がオーナーのレコードレーベル「ノーザン・レコーディング・カンパニー」を米デトロイトで設立し、後にテンプテーションズで活躍するデビッド・ラフィンらを育成。2年後にべリー・ゴーディ(Berry Gordy)が同じデトロイトで設立した「黒人音楽の殿堂」モータウン・レーベルに対し、多大な影響と示唆を与えた偉大な人物だったのです。

そんなパワフルな先駆者だったジョニーさんは、1972年、ADCの前身であるブラック・ナスティ(Black Nasty)を結成し、これまた「70年代黒人音楽の雄」であるスタックス系のレーベルからデビューさせます。メンバーには、自分の子供2人(ArtwellとAubrey)も含まれていました。

このブラック・ナスティはアルバム1枚で終わってしまい、えもいわれぬがっかり感が残ってしまいましたが、バンド名をADCに変更した1978年、上写真のアルバム「Long Stroke」を今度はアトランティック系レーベルのコティリオン(Cotillion)から発表します。プロデュースは「デトロイトママ」ジョニーさんが自らご担当。これは時代を映して非常にディスコファンクな内容で、ずっしりキックの効いたバスドラやお約束のハンドクラップなんかも満載。ちょいとスローでいかしたディスコファンクブギーのアルバム同名曲は全米R&Bチャート6位まで上昇する大ヒットとなりました。

けれども、あれあれどうしたことでしょう、この曲以降はぱったりとヒットはナッシング。Cotillionのレーベルメイトのマス・プロダクションの全面プロデュースを得た3枚目「ルネサンス(Renaissance)」(80年)と4枚目「ブラザー・ラック(Brother Luck)」では、「In The Moonlight」とか「Hangin' Out」とか「Super Freak」みたいに、うにょうにょシンセや大重量ドラムやびろんびろんベースや哀愁漂うホーンセクションや「泣きのギター」(?)を織り交ぜつつ、かなり鋭角的なディスコファンクで押しまくったのですけど、やっぱり浮上できませんでした。

その後、ファットバックバンドのメンバーが全面的にプロデュースして5枚目「ロール・ウィズ・ザ・パンチズ(Roll With The Punches)」(下写真)を1982年にリリース。このアルバムも、アルバム同名曲や「Girls」などを含めて、さらにノリノリでダンサブルな展開を見せるものの、セールスは伸びず。これを最後に表舞台から消え去ってしまいました。まあ、ボーカルにしても曲作りにしても演奏にしても、まとまりはあって及第点はとれるにせよ、どうにも特色が薄かったのが敗因といえましょうか。

「Roll With The Punches」には、ジャケットからも分かる通り「(ボクシングなどで)攻撃をうまくかわす」「物事を柔軟に切り抜ける」といった意味があります。このアルバムのジャケット裏面には、"後見人"ジョニーママさんの「いろんな複雑な考えが頭に浮かんで、私たちはそれをうまく説明しようと努力する。でも、結果的には内面の不安や不満を上手く説明して切り抜けることができる(just roll with the punches)」といった内容のメッセージが載っています。…う〜ん、うまく切り抜けられませんでした。

ただし、私自身は、当時のディスコでも耳にしたことはありますし、その無邪気なディスコぶりがそもそも大好きでしたので、ずいぶん昔にLPを買い漁ったものでした。しかも、「CD化なんて無理だろう」とあきらめていたら、最近、ラストアルバムの「Roll With The…」が国内盤(ワーナーミュージック)で発売となって腰を抜かしました。おまけに価格1000円という熱血かつ出血ぶり。ほかのアルバムもこの際どど〜ん!とCD化してもらいたいものです。

ADC Band 2

ブレインストーム (Brainstorm)

Brainstorm_Stormin'今回は久々にノリノリ絶好調な「王道ディスコ」と参りましょう。左写真を見てお分かりのとおり、脳天串刺し稲妻パワー全開の「ブレインストーム」(ブレインストーミングではない)であります。

米デトロイトで1976年に結成した9人組ディスコ・ファンクグループ。後に売れっ子となるプロデュースチームのジャム・アンド・ルイスやSOSバンド、アレクサンダー・オニールたちを輩出した米Tabuレーベルが、創業と同時に最初に世に送り出したアーチストです。

代表曲は、なんといってもデビューアルバム「Stormin'」からの2枚目のシングルカット「Lovin' Is Really My Game」(77年、米ディスコチャート14位、R&Bチャート14位)。これまたホント冗談抜きに「これを踊らずに死ねるかぁ!」と、人目をはばからず雄たけびを上げたくなるような盛り上がりぶりで、全米のディスコで大人気となりました。

15年前にアメリカで公開された、ニューヨーク随一の放蕩ディスコ「54(フィフティーフォー)」の回顧映画「54」でも、アホアホなフロアを彩る嵐(Storm)のイケイケチューンとして使用されております。昨年5月に63歳の若さで亡くなったべリタ・ウッズ(Belita Woods)の歌声はなかなかに迫力があり、ヘッドホンで聴くと文字通り脳天を突き抜ける浮揚感覚を味わえます。

脇を固める華麗なギターやストリングスのほか、ベース、ドラムのリズム隊もしっかりと存在感を発揮しており、70年代生演奏ディスコの神髄を見るかのようですね。実際、驚くほどキャッチーな名曲として、ベティ・ライトシルベスターもリメイク(その1その2)しています。

ただ、その常軌を逸したハイテンションゆえに、事実上この1曲で終わってしまったのが辛いところ(つまり一発屋のトホホ)。「Stormin'」以降、78年に「Journey To The Light」、79年に「Funky Entertainment」と、「ディスコブームに乗っとけ乗っとけ!」とばかりに立て続けにアルバムをリリースしますが、セールス的にデビュー作ほどの勢いはありませんでした。その後はメンバーが1人抜け、2人抜けして壊滅状態……う〜ん、ディスコ堂的にはよくあるお話ですが、残念であります。

それでも、中身はきちんと折り目正しいミュージシャンだったのは疑いをいれません。各アルバムをじっくりと聴いてみると、デビュー作では最初にシングルカットされた「Wake Up And Be Somebody」という「Lovin’ Is Really…」同様の“四つ打ち”アップリフティングなディスコ曲が入っております。2枚目収録の「We’re On Our Way Home」は、イントロの「ぐるぐるうにゃうにゃベース」が渋みを効かせる秀逸なミディアムダンスチューンに仕上がっていますし、3枚目の「Hot For You」も、グルーブ感あふれる典型的なディスコファンクの佳作になっております。

しかも、デビュー作収録の隠れた名曲「There Must Be Heaven」に見られるように、美メロバラードも律儀にこなすところがプラス評価です。メンバーのうち、べリタ・ウッズはジョージ・クリントン軍団のP-Funk All Starsに、ベース担当のJeryl BrightはCameoにそれぞれ移ってしばらく活躍を続けています。実力があっただけに、一発屋の扱いにしておくのはちょっともったいないようなグループだったといえるでしょう。

CDについては、一応アルバム3枚とも再発で出ています。とりわけデビュー作は長らくCD化されていなかったのですが、本家Tabuが最近になって再発盤をリリースしました(写真上)。古い音源ということもあって音質は今一つな感もありますが、「Lovin' Is Really…」のレアな12インチバージョンがボーナストラックとして収録されていますので、今のうちに触手を伸ばすのもよいかもしれません。

レア・アース (Rare Earth)

Rare Earth不滅のディスコソングである「ゲット・レディー」は、このレア・アースの作品としても有名。生粋のロックミュージシャンではありますが、1969年にモータウン・レーベルと契約し、異色の白人グループとして、同年に発表したアルバム「ゲット・レディー」の同名シングル曲が大ヒット(70年に全米ビルボード一般チャート4位)したのでした。

前身は1961年に結成され、デトロイトのローカルバンドとして活躍していた「Sunliners」。デトロイトといえば、以前に紹介したマイク・シオドアとデニス・コフィーでして、彼らがまず「Sunliners」を発見していくつか曲をプロデュース。67年にレア・アースに改名後、しばらくしてモータウンが「こいつらはイケる」と契約しブレイクしたわけです。

代表曲「ゲット・レディー」は、もともと同じモータウンの看板グループのテンプテーションズが66年に放ったヒット曲のリメイク。しかし、同チャートで29位だった原曲を凌ぐ人気となったのです。ちなみに原曲の作者はスモーキー・ロビンソンであります。

ディスコでは70年代、さらには80年代以降にも、世界中で普通に定番化していました。古臭さは否めないものの、70年前後生まれの文字通りレアなディスコといえると思います。この手の「古いロックやけどディスコでオッケー」な曲としては、ショッキング・ブルーの「ビーナス」(69年)なんかも挙げられると思います。

レア・アースは「ゲット・レディー」の後、「(I Know)I'm Losing You」(70年、同7位)、「I Just Want To Celebrate」(71年、7位)といったヒットを出しましたが、ディスコ的には78年の「Warm Ride」(同39位)も忘れがたい名曲です。お馴染みビー・ジースの作品で、「いかにもビージーズ」のバージョン(歌ったのは弟のアンディー・ギブ)とは違い、ロック、ポップ、ディスコが融合したようなユニークな仕上がりになっています。

それにしても、レア・アースのゲット・レディーは、アルバム原盤に収録されているヤツは21分半もあるライブバージョン。観衆の前で張り切って演奏が長くなりがちなライブものとはいえ、もうホント長過ぎて、さすがに飽きます。私が持っている12インチの中でも最長不倒記録です。

写真は、その“だらだらバージョン”が入った米盤ベスト「The Millennium Collection」ですが、短いシングルバージョンがいろんなコンピに入っているので、そっちで十分かもしれません。ディスコブームの70年代後半あたりに、きちんとしたディスコバージョンを作っておいてほしかったところです。90年前後に日本でも流行ったCarol Hitchcockやテンプテーションズのユーロビート・リメイク・バージョンも悪くはないですが、やはりちょっとイジられ過ぎている感があります。

80年代以降、いつの間にか表舞台を去っていったレア・アース。私としては、そろそろ「Warm Ride」の入ったアルバム「Band Together」あたりのCD化を望みたいところです。

シージェー・アンド・カンパニー (C.j. & Co.)

CJ & Co.今回紹介するのは1977年に全米ディスコチャート1位になったC.j. & Co.。オーケストラサウンドに少し電子音をアレンジした典型的ディスコグループです。

デトロイト生まれのグループで、前々回のマイク・シオドアとデニス・コフィーのコンビがプロデュースしています。つまり「デトロイト・ディスコ」の一つ。77年にディスコブームに乗ってファーストアルバムを発売し、代表曲「Devil's Gun」が大ヒットしたというわけです。この曲は全米R&B、一般チャートでもそれぞれ2位、36位まで上昇しています。

レーベルは地元デトロイトのインディー系ファンク&ディスコレーベルのウェストバウンド(Westbound)でしたが、配給がかの黒人音楽の“殿堂”アトランティックだったため、セールスを後押ししました。

Devil's Gunはまずイントロが印象的です。ベースから入って、次にピアノ、ホーンセクション、ストリングス、そしてボーカルとだんだん厚みが増して盛り上がっていくパターン。踊らせますねえ……。メロディーも申し分ありません。……と、クレジットをよくみると、ミックスはこれまた「ディスコの王様」トム・モールトンであります。微妙にムーグあたりの初期シンセの「みにょ〜〜ん」「ぼにょ〜〜ん」という電子音が入ったりして、さすがですよ。

この曲、ベースラインはジョルジオ・モロダーが作ったディスコバンドMunich Machineの大ヒット曲「Get On The Funk Train」(77年、全米ディスコチャート7位)にちょっと似ています。発売時期はほぼ同じなので、どっちかが真似したのかもしれません。この程度のパクリはディスコでは超よくあることなので、大した問題ではありませんが。

この人たちは78年にセカンドアルバム「Deadeye Dick」を出し、それが不発に終わったために解散に追い込まれてしまいます。ホント一発屋なのですが、私はアメリカディスコ史に残るグループの一つだと思います。アトランティックが絡んだ「ディスコオンリー」の黒人グループであることや、フィリー・サウンドとかバリー・ホワイトのようなオーケストラサウンドを持ち味としていることなどから、まさにアメリカ・ディスコの王道を行くような音なのです。

写真はそんなC.j. & Co.の唯一のCD(米Ace盤)。しかもそんなにレアではなく、音質もOKであります。Devil's Gunのほか、「We Got Our Own Thing」「USA Disco」「Deadeye Dick」など、質が高く元気いっぱいなディスコ曲がフルバージョンで計10曲収録されています。

このCDのなかなか詳しいライナーノーツを読んでみたら、マイク・シオドアがこんな風にコメントしていました。「ディスコに対する反発が異常に強かったため、“Devil's Gun”をメジャーなラジオ局でかけてもらうのは困難を極めた。一般的な“全米トップ40”をやるような局では相手にされなかったのだ。ヒットはしたものの、そんなひどい差別があったために、ある程度のレベルにとどまってしまったのだ」

いやあ、黒人&ゲイ&マイノリティーで作り上げたディスコ文化は、アメリカではどうしても差別の憂き目に遭っていたようです。そんな重圧をはねのけて、ディスコ以外でもヒットしたのですから、曲自体の価値はもっと高かったといっていいのではないでしょうか。

マイク・シオドア・オーケストラ (Mike Theodore Orchestra)

Mike Theodore Orchestra前回紹介のキング・エリッソンがディスコをリリースしたレーベル「Westbound」からは、マイク・シオドア・オーケストラというディスコグループもヒットを出しました。

文字通りマイク・シオドアというミュージシャンが中心人物。1977年発売のアルバム「コズミック・ウィンド」のうち、「コズミック・ウィンドザ・ブル/ベリー・ブギー」のA面3曲がセットでディスコチャート2位まで上昇しました。いずれも70年代後半の「シンセ無しディスコ」時代の典型的な曲で、良い意味でのディスコ的ミーハーさには欠けるものの、イージーリスニング風で、どこでも安心して聴けるようなややのどかな音色です。

マイク・シオドアは米中西部の自動車生産基地であるデトロイトの出身。キング・エリッソンのプロデュースを共同で担当したギタリストのデニス・コフィー(Dennis Coffey)とは同郷の白人同士の盟友ですが、二人とも黒人音楽の影響をモロに受けています。デニスはこの「コズミック・ウィンド」にも参加しています。ちなみにミックスは、またもやトム・モールトンです。

特にデニスは、これまた同じデトロイトのソウル/R&Bの有名レーベルである「モータウン」(モータウン=モータータウン=自動車のマチ=デトロイトの俗称)との関係が深く、独特の音色を奏でる腕っこきギタリストとして、マービン・ゲイやテンプテーションズなどのさまざまな大物黒人アーチストとコラボレートしたことでも知られています。自身名義でも「スコーピオ」(72年)なんていうファンク風の名曲を出していますね。

私がマイク・シオドア・オーケストラに注目したいのは、「デトロイト系ディスコ」という点に尽きます。ニューヨーク、米西海岸、フロリダが中心だった米国ディスコ界にあっては、ちょっと珍しい存在なのですね。

マイク、デニスともに、ディスコの枠では収まらない人々ですけど、「車工場のマチからディスコが飛び出した」という意味でけっこう異色だといえます(モータウン・レーベルがデトロイト起源ということ自体がそもそも異色だが)。後の90年代にデトロイト・テクノが隆盛を誇ったことや、同じ中西部地区にあってデトロイトと近いシカゴで世界初のハウス・ミュージックが発展していったという事実も、ディスコ/クラブ史を考える上では興味をそそります。

五大湖の豊富な水資源に恵まれたデトロイトには20世紀初頭、フォード社が大工場を建設し、米国南部から大量の黒人労働者を集め、工業都市として発展した歴史があります。意外にソウル、ファンクなどの黒人音楽がデトロイトで開花したことについても、こうした労働者たちが音楽文化を伴って移入してきたという背景があるわけです。

マイク・シオドア・オーケストラは、その後1979年にも「High On Mad Mountain」というディスコ・アルバムを出しています。このうち「Disco People」という曲が米ディスコチャート8位まで上昇しました。このアルバムは、ディスコブームがピークを迎えた年の発売だったこともあり、さらにディスコ色が濃厚です。

WestboundはなぜかCD再発率が高いレーベル。マイク・シオドアについても、上記のディスコアルバム2枚が1枚にカップリングされて発売されています(写真)。コアなディスコファンにとっては、ありがたいことではないかと思っています。そんなに売れないでしょうが。
CDのライナーノーツ書きました(自己宣伝)


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著書です!(自己宣伝)


キーワードは意外に「ディスコ」。
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