Betty Wrightまず左の写真をご覧ください。……「なにもそこまで…」とため息が出そうですが、この方が何を隠そう、今回ご紹介する“無冠のディスコディーバ”ベティ・ライトさんです。

ベティさんといえば、まだ十代のころに出した「Clean Up Woman(クリーンアップ・ウーマン)」(71年、全米R&B2位、一般6位)や「Baby Sitter」(72年、R&B6位)を思い浮かべるソウルファンも多いことでしょう。確かに、ソウル界ではなかなかの知名度となっております。

けれども、ディスコファンにとっては写真のアルバム「Travelin' In The Wright Circle」(77年)が事実上の“ディスコデビュー”です。思わず「やっちゃったよ…」と同情的につぶやいてしまいそうな、前に紹介したシェリー並みの艶やかなディスコ姿でございます。

このアルバムは売れませんでしたが、ディスコ的にはとてもよい内容です。全9曲のうち半分ぐらいはバラードの構成とはいえ、あとはアップテンポの「I'm Tellming You Now」、ミデアムテンポの「Child Of The Man」、“四つ打ち”アップテンポの「Open The Door To Your Heart」、そして極めつけハイパーディスコ「Listen To The Music (Dance)」(最後4曲目)などの佳作が並んでいます。いずれもシンセサイザーを少々取り入れ、ダンスミュージックならではノリのよさをうまく引き出していると思います。

少女時代から頭角を現したベティは、“早熟ゆえの悩み”ということで70年代半ばに入って息切れし、セールスが落ち込んでいました。ディスコ姿で大復活を!というわけで、ブルーを基調としたド派手衣装で大いに張り切って臨んだのです。

……しかし、やっぱりあまり売れませんでした(しょんぼり)。「クリーンアップウーマン」の栄光も今は昔、徐々に人々の記憶の彼方へと遠ざかっていくのでした。

とはいえ、ダンスフロア向けには、その後もなかなかヨイ曲を発表し続けています。「もうこーなったら、毒を食らわば皿まで!」とばかりに、“マイアミ・ディスコの殿堂”TKレーベルに活動拠点を移し、ディスコ街道を激走。本人名義でのヒットは出せなかったものの、TK所属のディスコプロデューサーだったピーター・ブラウンの大ヒット曲「ダンス・ウィズ・ミー」(78年、ディスコチャート4位、R&B5位、一般8位)では、存在感のある「スペシャル・バックボーカリスト」として名を連ねています。

80年代に入ってからは、米ジャマイカレーベルから「One Step Up, Two Steps Back」(84年、米ディスコチャート35位)、「Sinderella(シンデレラ)」の2曲の印象的なハイエナジーディスコをリリース。どちらも私自身、ディスコフロアでよく耳にしましたが、彼女のド迫力ボーカルが縦横無尽に駆けずり回っているような(ややせわしなさも感じるが)、元気はつらつのアップリフティング・チューンです。

この人のCDは、70年代前・中期の純粋ソウル時代のヒット曲を中心としたベスト盤がほとんど。10年ほど前、英ウエストサイド・レーベルから写真の「Travellin'...」が入ったCDが一応、発売されたのですが、前述した"ドンドコハイパー"「Listen To The Music」は収録されておりません。とってもがっかりです。