Marilyn McCoo秋も深まってまいりました。今回は「こみ上げ系ソウルディスコ」の代表格として一時代を築いた夫婦(めおと)デュオ、マリリン・マックー&ビリー・デイビス・ジュニアと参りましょう。

2人とも、聴いているうちに宇宙の果てまで飛んでいくこと必定の「アクエリアス」をはじめ、60年代から70年代にかけて豪快でサイケなヒットを連発した米国のソウル・ボーカルグループ「フィフス・ディメンション」の主力メンバーでした。

2人は1976年、「フィフス」を脱退して夫婦で仲良く初のアルバム「I Hope We Get To Love In Time」を発表。この中のミデアムテンポのダンスシングル曲「You Don't Have To Be A Star」(邦題:星空のふたり)が、全米ビルボード一般、R&Bチャートでともに第1位を記録する特大ヒットとなります。

このアルバムからは、ダンサブルながらも哀切な香りを放つ「Your Love」(一般15位、R&B9位)もヒット。2人の息のあったボーカルは、以前に紹介した同様の仲良し夫婦ディスコデュオのアシュフォード&シンプソンにも似た感じ。特に、妻マリリンさんの伸びのあるド迫力4オクターブの歌声を軸に展開する、流麗なメロディーラインが出色であります。もちろん、いくつか収録されているバラードも聴きごたえがあります。

2人は翌77年、2枚目のアルバム「The Two Of Us」をリリース。この中からは、シングルカットされた正統派ダンスナンバーの「Look What You've Done To My Heart」やミデアムスローの「Wonderful」、妙な緊迫感とおトボケ感がある「The Time」あたりがディスコ向けの曲になっていますが、ヒット曲は生まれませんでした。

この後、ディスコブーム最盛期の78年には、3枚目のアルバム「Marilyn & Billy」を大手コロムビア・レーベルから発売。「Shine On Silver Spoon」という爽やかなアップテンポの曲が、ディスコではまあまあのヒットになりました(米ディスコチャート32位)。ユニークなところでは、後にホイットニー・ヒューストンがカバーしてヒットさせた「Saving All My Love for You」のオリジナル曲も収録されています。

結局、金字塔の「星空のふたり」以降はさしたるヒットには恵まれず、夫婦(めおと)アルバムの制作はここでひとまず終了となりました。でも、妻マリリンさんの方は、名門UCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)出身という知性と美貌を生かし、80年代に米国で一世を風靡した音楽番組「Solid Gold」の司会を務め、人気を博しました。

ついでにマリリンさんは、そのまんま「Solid Gold」とタイトルをつけたソロアルバムを83年に発売します。そのシングル曲であるこれまたそのまんまの「Solid Gold」は、80年代らしく、フラッシュダンスみたいなわざとらしい盛り上がりを見せるけっこうなロックディスコで、私も当時はFM番組からカセットテープにエアチェック録音して、一人ウキウキ気分で聴いていたものでした。

このソロアルバムには、そのころ流行っていたヒット曲のカバーがいくつか収録されています。とりわけデビッド・ボウイメン・ウィズアウト・ハッツのヒット曲のメドレー「レッツ・ダンス〜セーフティ・ダンス」は、なんだかもっさりしていて変てこです。ここでちょいとずっこけてしまうわけですが、彼女の歌唱力は折り紙つきであるだけに、全体としては、アゲアゲで文字通りソリッドな内容にはなっているとの印象です。

この人たちのアルバムは長らく、CD化されていたとしても超レアものだったのですが、なぜか最近になって海外で次々とCD発売されています。上写真は前述のデビューアルバム「I Hope We Get To Love In Time」。まずは、このアルバムが基本になると思われます。