Barbara Mason私的に「オトナのディスコ」として思い出されるのが、バーバラ・メイソンです。「アナザー・マン」(1983)が金字塔。BPM110程度のミデアム・スローで、深夜などのブリッジタイム(つなぎ時間帯)には最適でした。

80年代半ば以降の「ブラック・コンテンポラリー(ブラコン)」の特徴なんですけど、よく聴くとこの曲も、伴奏はシンセオンリーで作られています。ぐにぐに、うねうねと、電子音が脳内を駆け回る感触。いやあ、私はこれが大好きでして、いつもヘッドフォンで音量を大きくして楽しんでいます。

しかし、一番の魅力は、そんな伴奏に乗っかったバーバラのボーカルですね。ときどき「語り」がまったりと入ったりして、やはり“オトナ”であります。

この曲は、三角関係について歌っています。「妻から夫を奪う女」が主人公なのですが、実は3人ともゲイなんだそうですよ。「また出たゲイディスコ!」というわけです。米国では敬遠されてラジオなどではほとんど流されず、主に欧州でヒットとなりました。欧州の方が性におおらかでゲイにこだわりがない、ということかもしれませんねえ。

バーバラは1947年生まれ。17歳のときに自分で作ったバラード「イエス・アイム・レディー」が全米一般チャート5位まで上がる大ヒットを記録し、一躍脚光を浴びることになります。この曲は、79年にKCサンシャインバンドのKCとテリー・デサリオのデュオがリメイクして再びヒットさせております。

ディスコ的にはほかに、フィラデルフィア系ディスコ野郎バニー・シグラーとのデュエット「Lovked In This Position」(77年)、「レット・ミー・ギブ・ユア・ラブ」などがあります。ただし、いずれも小ヒットでした。

ソウルシーンにはそれなりの足跡を残した人ですが、ディスコではやはり「アナザー・マン」に尽きる気がいたします。バーバラ自身、ディスコを毛嫌いしていたフシがあり、70年代後半のディスコブームには乗っからず、ひたすら「ディスコ以前」の自分流の音楽に執着していたといわれます。

写真のCDは「イエス・アイム…」が入ったプレリュード盤のベスト。これ以外にもけっこう色んな再発CDが出ています。

10代でスターとなった早熟のバーバラも、「アナザー・マン」以降は、ディスコでも一般音楽シーンでもまったく鳴かず飛ばず。今はレコード会社との契約もなく、米国内のステージでたまに歌う程度になっているようでございます。ああ、諸行無常。