D Trainおちゃめな「Dワールド」へようこそ!――というわけで、今回は1980年代初頭に天下御免の「ぶいぶいシンセ・ファンク」ぶりを発揮していたディスコ野郎Dトレインさんを取り上げてみましょう。

D-Trainは実際には2人組のディスコプロジェクトです。リードボーカルを務める中心人物「Dトレイン」ことJames "D-Train" Williamsと、もう一人、彼の高校時代からの友人でプロデュースや楽器演奏を担当したHubert Eaves III(ヒューバート・イーブズ3世)で構成していました。このイーブズさんは70年代、83年に「ジューシー・フルーツ」を大ヒットさせたエムトゥーメイ(Mtume)に所属したこともあります。

彼らはスタートダッシュがよかった。デビューアルバム「You're The One For Me」に入っている同名シングル曲が、いきなり米ディスコチャートで1位になる大ヒットを記録(1981年、米R&Bチャート4位)になりました。この曲のアルバムバージョン(フランソワ・ケボーキアン・ミックス)は、出だしがアカペラっぽく「With the love I have inside of me……」てな感じでゆったりと入り、やおら「デンデコデン!♪」と展開する「じらし&期待感」で切り込むタイプ。この手法は、後のヒット「Music」でも見られます。

ちなみに、この曲は同時期にポール・ハードキャッスルぶいぶいにリメイクしています。「19(ナインティーン)」の大ヒットで知られるシンセサイザーの名手だけに、こちらもなかなか聞きごたえがありますですよ(ボーカルはD Trainの方がずっといいけど)。

さらに、「Keep On」(82年、ディスコ2位、R&B13位)、ディオンヌ・ワーウィックアイザック・ヘイズのヒット曲のディスコリメイク「Walk On By」(同、ディスコ45位、R&B42位)、ダブ・バージョンがカルト的な人気だった「''D'' Train Theme」など、シンセベースがうなりを上げるぶりぶりディスコを立て続けにフロアに送り出しました。

1983年には2作目となる「Music」を発表。この中からは前述の同名シングル曲(ディスコ12位、R&B20位)、「Keep Giving Me Love」(ディスコ24位、R&B55位)のほか、名画「いそしぎ」のテーマ曲「The Shadow Of Your Smile」のユニークなディスコリメイクがヒットしました。

翌84年には「Something's On Your Mind」を発表。この中からは同名曲がシングルとして発売されました。メロディーを重視したスローテンポ曲ということもあり、ディスコではさほど売れませんでしたが、R&Bチャートでは5位に入りグループとして最高のヒットになりました。

岐路を迎えつつあるディスコ界に新風を吹き込み、破竹の勢いが持続するかと思われたのですが、これを最後にグループは解散。D Trainがソロで活動をつづけました。ソロ名義では、Somethign On Your Mindのミデアムスロー路線を踏襲した「Misunderstanding」(86年、R&B10位)という曲がまずまずのヒットとなりました。

いやあ、こうしてみると多彩な芸歴を誇っているアーチストのような気がしてきます。けれども、なんだか初期のヒットはみんな似たような感じなのが残念。私も当時のディスコでは頻繁に耳にしたのですが、「なにがどれでなんて曲だっけ」という感じでした。まあ、それだけ短期間で何曲もヒットを出したという証でもあるわけですが。

Dトレインのデビューからの3枚のアルバムは、すべてお馴染み米プレリュード・レコードからのリリース。現在はディスコものの再発で知られるカナダのUnidiscが盤権を持っていますので、CDはひととおり揃っています。「うひひっ!」と笑顔はじけるおちゃめなDトレインさんが写っている上写真のCDは、「ザ・ベスト・オブ・Dトレイン」。主なヒット曲がロングバージョンで収録されておりますので、「最初の1枚」としては最適かと存じます。