アレサマイナー系に疲れてきたので、今回はアレサ・フランクリン(1942年生まれ)ということで。ビルボードR&B1位獲得曲20曲、グラミー賞獲得20回! 押しも押されぬ“クイーン・オブ・ソウル”ですが、ディスコという点ではどうでしょうか。

いやあ、あらためて調べてみましても、この人はさすがにディスコ全盛期にもソウルな姿勢を崩しておりません。アルバムも77年の「Sweet Passion」、78年の「Almighty Fire」ともに、R&B1位となった「Break It To Me Gently」をはじめとする格調高いバラードや、彼女らしいゴスペルシャウト調の正統派な曲が多い。少しダンス系で目立つのは、電子音がちょこっと入っていてファンキーな「Almighty Fire」(R&B12位)あたりでしょうか。

まだ10代だった60年代初頭からずっと、トップスターとして君臨してきただけに、風格を感じさせる人ではあります。私自身は、「もっと素直に、ディスコで弾ければよかったのに……」と惜しんでしまうのですけどね。

ところが、本国アメリカでのブームが終わった80年ごろ、なぜかディスコに開眼したのがアレサさんであります。まず79年秋に「La Diva」というディスコアルバムを出します。これはセールス的に失敗でしたが、続いてプロデューサーに「流行ブラコンものなら任せとけ!」のルーサー・バンドロスを迎え、ベースにはあの「かっ飛びチョッパー野郎」のマーカス・ミラーを起用するなどして、シンセサイザーをギンギンに使ったファンキー・ナンバーを次々と繰り出すわけです。

私が最初に「いやあ、こりゃディスコだべ」とフロアで感激したのは、やはり82年の「Jump To It」(R&B1位、全米ディスコチャート4位)ですね。続いて83年には、私の大好きなアゲアゲ調の「Get It Right」(R6B1位、ディスコ9位)が発売され、「アレサのディスコワールド」が確立するのでした。

その後も勢いは止まらず、85年には「Freeway Of Love」がR&B、ディスコチャートともに1位を獲得。同年の「Who's Zoomin' Who」もディスコ1位となり、もはや「いまさらのディスコ・クイーン」状態でありましたとさ。

この人のエラいところは、旧来のソウル・ゴスペルファンのキョトン顔(不満顔)をものともせず、次々と“電子音ダンサー”をこれでもかと送り出したところです。もうセールス的には完全に勝ち組。ついでにクラブ/ハウス時代となった90年代にも「A Deeper Love」(94年、ディスコ1位)、「A Rose Is Still A Rose」(98年、同1位)、「Here We Go Again」(98年、同1位)と、何食わぬ顔でヒットチャートを席巻していったのでした。

強引にまとめますと、アレサさんの60−70年代は不動のソウル女王、80年代以降はディスコ/クラブシーンを舞台にした活躍ということになりましょうか。

それでも、ディスコと距離を置いていたはずの70年代半ば、つまりディスコが最初に光を浴びたころに、アレサさんが「ディスコとの出会い」をそれなりに果していたことが判明しました。いや、再びYouTubeで面白い映像を見つけたということなのですが、76年のグラミー賞「R&Bインストゥルメンタル部門」での、アレサさんによるノミネート曲の紹介シーンが非常に印象的だったのです。すぐ消される可能性も高いですが以下、張っておきます。



もう本人、“私はクイーンなのよ”とのプライドを覗かせつつもノリノリで、ヴァン・マッコイとかB.T.エクスプレスなんかを紹介していってます。傍らで踊るのは、ブレイクダンス、ロックダンス、ポッピングダンス、エレクトリック・ブーガルーダンスなどの創始者とされる伝説のダンスチーム「The Lockers」の面々。この頃はまだスリムだったアレサさんがLockersたちと楽しくバンプを踊るなどして、観衆も大喝采です。

こうしてみると、アメリカでディスコがアンダーグラウンドからメーンストリームに出てきたばかりで、まだ嫌悪感がなく、逆に熱狂的に迎えられていた時代だったことがよく分かります。アレサもステージ上で「今年のR&B界の最大のトピックスは、ディスコが表舞台に登場してきたことね!」などと明るく言っています。ディスコ的にはとってもよき時代だったわけですね。実際、この年の「R&Bインストゥルメンタル部門」は、ノミネートされた5曲すべてがディスコ。受賞したのはシルバー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」でした。

さて、アレサさんのCDですが、あまりにもたくさん出ているので絞りきれません(笑)。それでも、長〜いキャリアの中でこぼれ落ちてCD化がされていないものも多いようで、前述した「Sweet Passion」、「Almighty Fire」のアルバムもCDはないようです。あれば欲しいところです。写真は私の一番のお気に入り「Get It Rght」が入った同名アルバムのアリスタ・レーベル盤のCDです。