ウェザー・ガールズ「彼女たちにはドレスなどいらない。飾り立てる宝石もいらない。その歌声があれば十分なのだ」。シルベスターは、彼女たちを評してこう言いました。「彼女たち」の名は「トゥー・トンズ・オブ・ファン(Tow Tons O' Fun)」。別名「ウェザー・ガールズ」でも知られる、ド迫力ボイスのマーサ・ウォッシュとアイゾラ・レッドマンで構成する、文字通りビッグ女性デュオであります。

70年代後半、バックボーカリストを探していたシルベスターが、サンフランシスコでオーディションをした際、応募してきたゴスペル・コーラスの歌手マーサ・ウォッシュの歌声が気に入ってすぐに採用。「あなたのほかに、あなたと同じようなボーカルの子はいる?」とシルベスターから聞かれたマーサが連れてきたのが、アイゾラでした。

シルベスターのバック・ボーカリストとしての活躍はもう、言うまでもありません。でも、あの迫力ボイスをレコード会社がほうっておくわけもない。「トゥー・トンズ…」の2人だけでもレコードを発売し、「I Got The Feeling」(80年、ディスコチャート2位)、さらにはハイエナジー音楽の一つの到達点とも言える「イッツ・レイニング・メン」(82年、同1位)のヒットを放ちました。

とりわけ、レイニング・メンは日本のディスコでも大人気でした。ガンガン飛ばすハイパーな曲でして、ド迫力ボイスの面目躍如であります。MTVでも変てこなビデオクリップが流れてましたからね。「空から男が降ってくる」なんて、「アホか?」とは思いますが、理屈抜きに踊れます。

ド迫力ボイス系のディスコディーバといえば、ジョセリン・ブラウンとかロレッタ・ハロウェイの名が浮かびますが、彼女たちの歌声も負けず劣らずです。

前回投稿でも触れたように、「レイニング」のころは、既にエイズ問題が表面化していました。深刻な状況に差し掛かったゲイ系ディスコではありましたが、なんとか一矢報いたともいえます。

もちろん、その前の「I Got The Feeling」も彼女たちの代表曲でありまして、侮れません。おススメはやはり、故パトリック・カウリーがリミックスした12インチバージョンですね。ものすごくタイトなダンスミュージックに仕上がっております。

2人のうち、マーサの方は、ハウスミュージックが盛んになってきた90年代に入っても、ダンス音楽界屈指のボーカリストとして活躍を続けました。「ストライク・イット・アップ」などでおなじみの「ブラック・ボックス」や、「ゴナ・メイク・ユー・スウェット」で知られる「C&Cミュージック・ファクトリー」でも、その歌声が堪能できます。ただ、アイゾラの方は、「レイニング」の後はやや地味な活躍ぶり。2004年、60代前半でひっそりと生涯を終えています。

理屈抜きに元気を与えてくれるのがディスコであります。確かにエイズは、(誤解も含めて)非常に悲しい「アクシデント」ではありましたが、踊りをやめられない人間たちにとっては、“ハイエナジー”な音楽は常に求められているわけです。それを証明したのが、ディスコに厳しい目が注がれていた時代にもかかわらず、米国で大ヒットした「レイニング」だったのではないでしょうか。

写真のCDはやはりユニディスクのベスト盤。「I Got The Feeling」のパトリック・リミックスはもちろん、今ではアナログだと貴重で高価になっている「Do You Wanna Boogie, Hunh?」と「Earth Can Be Just Like Heaven」のそれぞれダンスミックが収録されていておススメで〜す。