Sly & The Family Stones_dance to the music最近またぜんぜん更新してねえ〜〜というわけで、今回はディスコタイムマシーンでぐんぐん時代を遡り、スライ & ザ・ファミリー・ストーンでございます。

スライ・ストーン(本名:シルベスター・スチュアート、1944年テキサス州生まれ)を中心に1966年に結成したファンクバンド。男女、白人・黒人混成で、音的にもロックとソウルの要素をダンサブルに融合させた当時としては画期的なアーチストでした。

そんな「なんでもあり」な雰囲気を持つ彼らの音楽は、後に隆盛を極めるディスコのまさに元祖と言えると思います。ソウルミュージックの系譜を受け継ぐ一連のモータウンアーチストやジェームズ・ブラウンアイザック・ヘイズラベルあたりとも比肩できる重要な“ルーツ・オブ・ディスコ”のグループなのでありま〜す。

彼らの代表作はまず、なんといっても1968年に発表したアルバム「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」(写真上)です。そこからのシングルカット「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」はもう、曲名が示すとおり、ディスコ的なメリハリのきいたビート進行、それにおバカな陽気さがあふれていて、「こんなのが60年代に既にあったとは!」と驚かされます。

ソロとしても活躍したベース担当のラリー・グラハムが奏でる、ドラムビートを補完する「スラップ・ベース」テクニックも、「躍らせる」という意味で大切な役割を果たしていました。

その後、1969年に出した「Stand!」もバカ売れしました。シングルカットされた「エブリデイ・ピープル」は、ビルボード一般チャート、R&Bチャートともに1位に輝きました。少々落ち着いた曲調ではありますが、ディスコ的にも十分ダンスフロアで使えるノリを醸しています。

60年代後半は黒人運動、反戦運動といった政治の時代だったわけですが、そういった人種や国籍、民族性、性別といった壁を思いっきり取り払う新鮮さ、独創性が、ちょいと重苦しいメッセージソングに食傷気味だった大衆の心を捉えたのだと思われます。…そう、そんな適度な「アホアホ平和」ぶりこそが、ちょうど10年後の「ディスコ大爆発」への伏線になったのでした。

ところが、1970年代に入ると、スライさんをはじめメンバーたちは、またぞろコカインなどの薬物にのめりこんでしまうのですね。スライさん自身、妙に哲学的で内省的な(つまりクラい)音楽を志向するようになり、レコードセールスもレコード会社からの信頼度も急降下。おまけにコンサートをしょっちゅうすっぽかすとか、音楽的にも精彩を欠いていくとか、ありがちな転落劇を演じてしまい、75年には事実上、解散してしまうのでした。

いやあ、実はこのあたりの生き様自体は、「享楽主義オッケー」のディスコぶり(負の側面とはいえ)を見せ付けているわけですけどね。

そして、果たせるかな1979年、彼らはほんの少し「ディスコ的に」復活します。上記「ダンス・トゥ…」や「エブリデイ…」のリミックス7曲を収録したディスコバージョンのベストアルバム「Ten Years Too Soon」(写真下)を発売し、全米ディスコチャートにチャートイン(最高36位と微妙ではあるが)するなど、70年代としてはまだ珍しかったセルフ・リミックスアルバムとして話題を呼んだのでした。

以下2曲、並べますのでオリジナルと聞き比べてみてください。けっこうヨイと思いますがね。





まあ、総じてこの人たちは、スライさんの突出したキャラクター(再び写真下)に負うところが大きかった。彼の不摂生、さらには音楽的志向の変化に伴って、求心力が失われてしまい、一気にスターダムから転げ落ちてしまった――そんな切ない印象を抱きます。

CDについては、アルバム「ダンス・トゥ…」を含めてまずまず出ています。ベスト盤も各種あります。ただ、ディスコという意味での最重要リミックスアルバム「Ten Years Too Soon」のCDはかなり前に廃盤になり、入手困難になっています。
Sly & The Family Stone_ten years too soon