Maynard Furgasonいやあ、久しぶりの更新です!アクセス数も半分近くに減っておりま〜す。……というわけで、豆まきも無事終えた今回は、耳をキンキンつんざくスーパーハイトーンの名ジャズトランペッターとして名を馳せつつも、70年代にディスコ界にちょいと寄り道したメイナード・ファーガソンさんと参りましょう!

1928年生まれのファーガソンさんは、半年前の前回投稿で紹介したパーシー・フェイスと同じカナダ出身。幼少期から音楽の道を志し、高校を中退して、自ら率いるジャズバンドの活動に打ち込みます。売り物のトランペットの超絶高音演奏が評判を呼び、やがてアメリカの著名ミュージシャンからも共演のオファーが来るようになりました。

1940年代後半にはアメリカに移住し、ボイド・レイバーンやチャーリー・バーネット、スタン・ケントンといった大物が率いるジャズの大編成ビッグバンドで活躍。50年代半ばには一流ミュージシャンを集めて「バードランド・ドリームバンド」を結成し、バンドマスターとして数々のツアーやレコーディングをこなし、米国ジャズ界に大きな足跡を残しました。

60年代半ばになると、ビッグバンドそのものの人気が失速。ファーガソンさんは一時、精神を高揚させるため幻覚剤のLSDを常用したり、インドの霊的指導者サイババの思想にのめりこんだりと、なかなか60年代らしいサイケでスピリチュアルな暮らしを送っていましたが、70年ごろになると再び音楽の王道に回帰。今度はイギリスに移住してバンドを結成しました。

イギリスでは「もう正統派ジャズをやってる場合じゃな〜い!」とばかりに、ジャズに当時台頭してきたロックやフュージョンのテイストを加えた新しい音楽を精力的に演奏し始めました。70年代半ばにはアメリカのニューヨークに戻り、「スターウォーズ」や「スタートレック」、「ロッキー」といった大ヒット映画・テレビドラマのテーマ曲をダンサブルにアレンジしたリメイク曲の入ったアルバムを次々と発表。これが大人気となりました。

中でも、ビル・コンティによるオリジナル曲が米ビルボード総合チャート1位に輝いた「ロッキーのテーマ(Gonna Fly Now)」(1977年、アルバム「Conquistador」に収録)は、リメイクでありながら米ビルボード総合28位、米ビルボード・ディスコチャート37位に入る健闘ぶり。古くからのジャズファンや評論家からは予想通り総スカンを食らいつつも、映画「サタデーナイト・フィーバー」が製作されたこの年、世の大ディスコブームにしっかりと乗っかって商業的な成功を収めたのであります。

一言付け加えておきますと、「Theme From S.W.A.T.」(特別狙撃隊S.W.A.T.のテーマ)のディスコヒットで知られるRythm Heritageも、この「ロッキーのテーマ」のディスコ版を発表しております。スター・ウォーズも、Mecoというアーチストがディスコリメイクを発表し、大ヒットさせております。ヒット映画(ドラマ)の便乗ディスコって、当時は珍しくなかったわけです。

さて、ファーガソンさんはディスコ最盛期の79年には、怒涛の勢いで人気を持続させた「ロッキー」の続編「ロッキー2」のテーマ曲の全力ディスコバージョン「Rocky Disco」(アルバム「Hot」収録)を発表。これが文字通り、ディスコの王道をゆく血湧き肉躍る一品となっております。

中間奏部分では、なんと映画の主演俳優であるシルベスター・スタローン本人がカメオ出演しており、女性コーラスとの掛け合いでパンチバッグを打楽器のように打ち込みつつ、ぼそっとしたスタローン節でちょこっと台詞まで呟いています。これはもう、「ロッキーのテーマ」同様、「いざ決戦に挑まん!」とばかりにディスコフロアというリングに駆け上がり、猛然と腰をくねらせて周囲にアピールするにはもってこいです。

同じ「Hot」収録の「スタートレックのテーマ」も相当にダンサブルな作品。そのあまりに快活でやる気満々な曲調から、日本でも、30年ぐらい前の人気クイズ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ系)のメインテーマとして使用されていたほどです。

この「Hot」にはもう一曲、最後に収録されている「Topa-Topa Woman」という佳曲があります。テンポは多少抑え目ながら、ずしりと重い8ビートのドラムを基調に展開する非常にファンキーフォンキーな内容となっております。

もちろん、これらディスコ曲ではいずれも、ファーガソンさんの面目躍如たる「パンパカパーン!」のハイノート・トランペットがこれでもか、とばかりに駆け巡っております。

この手のトランペット・ディスコとしては、ファンファーレみたいな大仰イントロで名高いスタイリスティックス「愛がすべて」(75年)とか、トム・ブラウンの渋いジャズファンクチューン「ファンキン・フォー・ジャマイカ」(80年)などいくつか挙げられますけど、ファーガソンさんの場合はあまりにも高音が力強すぎて、ヘッドホンなどで長く聴いていると耳が多少疲れてくるキライはありますがね。

ファーガソンさんはディスコブームが終わった80年代以降、ヒットには恵まれなくなったものの、ジャズに回帰して安定的な演奏活動を続けました。2006年に78年の生涯を閉じましたが、一連の超絶トランペットディスコは、これからもスポーツイベントなどの「ここぞ」という場面で、末永く愛用されることでしょう。

CDについては、ファーガソンさんが主に70年代に発表したアルバム3枚分が2枚のCDに収められた英国BGO盤コンピレーションが結構お得です。写真はそのうちのひとつ「Chameleon / Conquistador / Hot」。スタートレック、ロッキー、ロッキー競妊スコなどのディスコ系の楽曲が大いに楽しめます。