ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

君の瞳に恋してる

番外編―Moby Dick Records

Moby Dick Gift-2前々回に番外編をやったと思ったら、その後事態が急展開。件のMr.モビーディックからなんと“ギフト”が贈られてきたので、特別番組として紹介しておきます。

小包の内容は、私がメールで「好き!」と言っていたものばかりでした。催促したわけではないのですが……突然のことでなんだか恐縮もしております。

送られてきたのは、モビーディックのプロモ盤や初回プレス盤を中心とするレコード11枚と、CD2枚。すべてサインと解説(思い出など)入りなのが、私にとっては最高の宝なんですねぇ。

LP・12インチは、初回プレスの「An American Dream Medley」(Hot Posse)、「Disc Charge」(Boys Town Gang)、「Dance On The Groove」(Love International)、「Got You Where I Want You Babe」(Stereo Fun Inc.)などです。

レコード会社が最初に音溝の「ひな型」を作るために制作する「テスト盤」についても、「Love Pains」(Yvonne Elliman)、「Hot Leather」(The Passengers)の12インチ2枚が送られてきました。送り主いわく、「私たち幹部がマスター作りのために最終的に承認した盤なので、音質は最高によい」とのこと。飛び切り貴重なものなので、これも嬉しい限りでございます。

CDは、私の大好きなMargaret Reynoldsのアルバム。驚くことに、彼自身の手でオリジナルを作ってくれました。ヒット曲「Keep On Holding On」など8曲が収録されています。ジャケットも、曲リストが記載された裏表紙もオリジナル!「テスト盤などを基に2枚作ったが音質が微妙に違う。どちらも送っておくよ」とのことで、同じものが2枚送られてきました。

いやあ、ささやかながら「日米ディスコ交流」しております。こっちも何か送らないとなあ(プレッシャー)。その前に、今回の送料ぐらいは払っておかないと。

先方にちょっとリクエストを聞いてみたら「日本刀がいいねえ……いや冗談、冗談(笑)」とのことでした。とにかくゲイの人々は、美しいものを好みますからねえ。う〜ん、思案投げ首であります。

次回から再び平常投稿。番外編は何か変化があればお伝えいたします。Moby Dick Gift-1

ちなみに、彼が関わったモビーディックのHPの全貌が少しずつ明らかになってきましたので、紹介しておきます。英語ですが、写真だけでも楽しめま〜す。これからどんどん「発展」していくそうですのでお楽しみに。

【右写真】 到着したレコードたちを前に、満足げな表情のディスコ犬ちゃっぴ〜

番外編―Moby Dick Records

Moby Dick以前お話したMoby Dickの関係者とはその後も断続的に「文通」が続いてまして、近況や思い出話、それにいろんな写真や音源をメールで送ってきています。まあ、もともとモビーディックは好きなレーベルだったので、大概は既にレコードやCDを所有しているのですが、得がたい体験をさせてもらってます。

モビーディックの看板は何と言っても「君の瞳に恋してる」(82年)のボーイズタウン・ギャング(BTG)でした。彼にとっても、このグループは特別の存在だったようです。

先日のメールでは、こんな思い出を語っていました。

「当時、私にとっての最高のディスコは『ザ・セイント(The Saint)』(注:米ニューヨークの巨大ディスコ。写真下右)だった。豪華な照明装置付きの宇宙空間のようなインテリアで、天井が高くてスペースも広く、ホントに星空の下で踊っているようだった。ミュージシャンのプロモーションなんかで訪れたときは、夜10時から朝10時まで踊っていたものだ。

そんなセイントで、ボーイズタウン・ギャングの新曲『君の瞳に恋してる』とその曲が入った新譜『ディスク・チャージ』の最初のお披露目をしてもらったんだ。モビーディックを高く評価していた、ロイ・トードという人気DJがアレンジしてくれた。彼はこの曲をかけて紹介してくれた後、なんと2時間も『モビーディック特集』をやってくれた。お客もノリノリだった。あのときの感激は忘れられない」

米国のディスコ解説書「Saturday Night Forever」などによると、セイントは、80年代前半の有名なゲイ系ディスコ。Orgy(いかがわしい乱痴気騒ぎ)もアリの、かなりアヤシイ“別室”もあったそうです。ただ、レコード会社にとっては、人気ディスコでレコードをかけてもらうことは、セールスにつながる大事なチャンスでした。特にBTGのようなハイエナジーの曲であれば、米国内最高級のゲイ系ディスコで人気が出れば、ヒットチャート入りに限りなく近づく、というわけです。

さらに、別のメールでは、こんな話もしていました。

「『君の瞳…』が収録された『ディスクチャージ』の評判は上々で、すぐ『スタジオ54』でも紹介してもらえることになった。今度はグループそのものを出演させて、『君の瞳…』を歌わせたんだ。客の反応は上々だった。終わった後、すぐ別のプロモーション用のステージに立つ予定があったので、彼らは飛行機でニューヨークを出発し、アトランタに向かったんだ。

ところが翌日、スタジオ54の幹部から私に突然電話がかかってきて、『店の会議の結果、全員一致でもう一度ボーイズタウン・ギャングを出演させることが決まった。あまりにも客の受けがよくてねえ。うちのライブショーとしては、これまでにないほどの最高の反響だった。客から『また観たい』ってリクエストが続々と来てるんだよ。今夜は特に有名人が集まる。費用は全部こっちで持つから、ぜひ主役として出演してほしい』っていうんだ。

あのスタジオ54からのたっての申し出だから、こちらとしても願ってもないことだ。しかも『主役』の特別ステージ(command performance)だという。でも、『今夜』というのは困った。メンバーはもうアトランタに向けて出発してしまっている。引き返して夜中のショーに出るにしても、サウンドチェックを含めてあと少なくとも7時間はかかる。私はスタジオ54の幹部に『スケジュール的にはほとんど無理だが、後は彼らの意志に任せる』と言って、電話を切った。

メンバーに連絡を取ると、『どうしても出たい』と言った。私は慌ててスケジュールを組み直して、なんとか夜中のステージに間に合わせた。……その夜、ボーイズタウン・ギャングは、スタジオ54で異例の連日出演を果たした。夢のようだった。ステージの周りは、超満員のお客で埋め尽くされていたよ」

う〜ん。あのスタジオ54でも人気が出たんですな。アメリカではもうディスコは下火になっていたころですが、それでも私などにとっては、大変にわくわくするエピソードでした。

前回の「番外編」投稿で触れたように、このモビーディック元関係者は、非常に深刻な過去を背負っています。でも、同時に、自分たちが築いた会社をものすごく誇りにも思っている。メールのやり取りをする中で、それがよく伝わってくるのです。

この人、当然ながらゲイなのですけど、24年間続いているパートナーがいます。モビーディック時代にディスコで知り合ったそうです。サンフランシスコでは指折りのシェフだそうで、9年前に日本の高級ホテルから、かなりの高給で誘いもあったそうです(“パートナー”との別離や、日本語が話せないことが心配で断念したそうですが)。

この幹部自身は、今は音楽業界にはおらず、特許ビジネスなどの複数の仕事をしています。相当に多忙なようで、メールが突然、何週間も来なくなることがあります。

「まず私の過去を知ってもらって、あとは楽しく話をしよう」と言っていたとおり、最近はずいぶんと明るい感じで情報交換をしています。根はけっこう駄洒落とかが好きな面白い人だということが、明らかになってきました。昔から日本史や日本刀芸術に特別な興味があるそうで、「最近の一番のお気に入りの映画はラスト・サムライだ」と言ってました。

まあ、「何で私なんかにそこまで気を許すの?」という思いもありますが、日本にレトロなモビーディックファンが存在していたことが、よほど嬉しかったのでしょうか。下手くそですが、「英語を覚えておいてよかったな」とも感じております。

というわけで、写真上は、モビーディック盤の数少ないCDの一つ「ザ・ベスト・オブ・モビー・ディック・レコーズ」。ホット・プロダクションズという米フロリダのディスコ再発レーベルからの発売ですが、音質が今ひとつな上、12インチバージョンの最後の方がことごとくフェードアウトされております。

残念ですけど、BTGやLisa以外のマイナーどころのアーチストの曲がCDで聴きたければ、今のところこれ位しかありません。LoverdeとかStereo Fun Inc.といったほかのCDでは聴けないアーチストが多く入っていて、選曲はかなりよいと思います。

ちなみに、件の元関係者によると、「ボーイズタウン・ギャング」の名は、かつてロサンゼルスのハリウッド付近にあったゲイ居住地区の通称「ボーイズタウン」に由来するのだそうです。「これって意外に聞かれたことがないんだ。お前にだけ教えてあげるよ」なんて言ってましたが、確かに私は知りませんでした。

下のイメージはいずれもその元関係者が送ってくれたものです(右写真はクリックで拡大)。

セイントモビーディックロゴ

番外編―Moby Dick Records

番外編―Moby Dick Recordsちょうど100回目の投稿です。今回は予定を変更して(予定などないが)、最近のちょっとしたエピソードについて、少し真面目に語りたいと思います。

私はときどき、海外のディスコサイトなどにレコードやCDの批評を英語で投稿して暇つぶしをするのですが、先日、そうしたサイトの閲覧者から突然、一通のメールが届きました。要旨は以下の通りです。

「あなたの批評(レビュー)を読んでメールしてみました。実は私は、80年代にディスコレーベルの幹部だった者です。よかったら少しお話をしませんか」

そのレーベルとは、Moby Dick(モビー・ディック)。以前にもこのブログで紹介したことがありますが、あの「君の瞳に恋してる」のボーイズ・タウン・ギャング(B.T.G.=写真=)や「ロケット・トゥ・ユア・ハート」のリサといった売れっ子ハイエナジー・ミュージシャンを生んだ米サンフランシスコのレーベルです。

もちろん、私は「本当かなあ?」と半信半疑でしたが、何度かメールをやり取りするうちに、情報が非常に具体的な点などから、本物の関係者だと確信するようになりました。こちらがプライバシーに関わることを教えると、先方も「当事者しか知りえないような事実」を伝えてきます。名前は伏せますが、先方の米国人男性は、私に信頼を寄せるようになっていました。

そしてある日、本人の近影写真や十字架の写真などとともに、こんなメールが届いたのです。

「あなたは知っているかも知れませんが、モビー・ディックは1981年、ディスコを愛するゲイ仲間で立ち上げたレコード会社でした。数々のヒット曲に恵まれ、米タイム誌のようなメジャー雑誌にも紹介された。でも、たった4年間しか続きませんでした。エイズが原因です。20人近くいた私たちの仲間のうち、私と別の何人かを残してすべて、エイズで亡くなってしまったのです。その中にはボーイズ・タウン・ギャングのトミー(Tom Morleyのこと)、それにパトリック・カウリーもいました」

さらに、メールは続きます。

「…エイズは、当時はまだ未知の病気で偏見も強く、私たちはとてもつらい時期を迎えました。モビー・ディックはその短い歴史を閉じるしかありませんでした。私たちはよく、毎週土曜日にディスコに行くことを(合言葉として)『教会に行こう!』などとはしゃいで言い合っていましたが、結末として、『2つ目の教会』がすぐ近くに待ちうけているとは、まったく予想もしていませんでした。あなたのレビューを読んでいて『モビー・ディックのファンがまだいる。しかも遠い日本に』と感激して、打ち明けようと思ったのです」

私はその「悔恨の告白」に仰天し、言葉を失いました。と同時に、考えさせられました。日本では、ディスコとゲイとエイズは直接、結びつけて考えられることはほとんどありえません。でも、米国では、この3つは事実として、密接に関わりあっていたのです。

それでも、私にとっては、ディスコは楽しい思い出でしかなく、今だって趣味なわけです。そのことを率直に伝えると、先方は「最高に良い思い出だったというのは、私にとっても同じです。ただ、なくした仲間の記憶をずっととどめておきたいのです」と言ってきました。私は、その誠実さに何だか胸を打たれました。

その後もメールを繰り返しやり取りして、互いに当時のディスコ事情やディスコ体験を教え合っていくうちに、――先方がゲイで私がストレートという「壁」のようなものはあるにせよ――、さらに打ち解けてきました。その男性は、当時のモビー・ディックのいろんな貴重な写真(上掲写真を含む)や音源を送ってくるようにもなりました。彼が十字架のように背負っているエイズ禍のことを思うと複雑ですが、今では私にとって貴重なメール友達になっています。お礼にこちらからも何か送ってあげようと思案中です。

それにしても、不思議なことがあるものです。極端な快楽主義、刹那主義を特徴とするディスコの持つ光と影、栄光と挫折について、改めて思いをはせています。
プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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*「ディスコ堂」の記事等の著作権は作者mrkick(菊地正憲)に帰属します。

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