THE BIRTH OF A DRAGON+4当ブログは、「ディスコ…そのボーダレスな魅力をお届けします」といったあたりも狙いの一つですので、国内外問わずどんどん紹介・解説・批評しようとしているわけですが、どうしても欧米、しかも英語中心になりがちです。だってディスコの発信源が圧倒的に欧米だから。これは仕方ありません。ディスコ、クラブ文化ともども、日本は今も昔も極端な「輸入超過」です。

とはいっても、国内産ディスコミュージックは歴然としてありました。ピンクレディーYMOなどのように、海外でもまずまずのヒットを記録し、相応の評価を得たアーチストも少しはいました。でも、当ブログでも3年ほど前、少し紹介したことがありますけど、曲自体はオモシロ系(超オバカ系)な歌謡曲であることが多く、私自身、特別好みというわけではありませんでした。

「ディスコに真面目に取り組んだ」例外といえるのは、一連の筒美京平作品だったとはいえないでしょうか。筒美氏いうまでもなく、70年代のディスコ期に山のように歌謡ヒットを世に送り出した著名作曲家ですが、バリー・ホワイトとかヴァン・マッコイとかボリー・ミドニーといった欧米のディスコ作曲家たちのように、自らミュージシャンを集めて「Dr.ドラゴン & オリエンタル・エクスプレス」(上写真)というインストグループを編成し、国内でディスコヒットを出していた時期がありました。

代表曲は何といっても「セクシー・バスストップ」(76年)ですね。尺八を使ったユニークな和製ディスコで、歌手・浅野ゆう子によるボーカルバージョンもありました。中古レコード店では、必ずと言ってよいほどこの曲の7インチを見かけますね。ほかに「ハッスル・ジェット」なんていう曲もありました。曲の作りについては、バリー・ホワイトみたいな70年代後半の重厚なオーケストラと比べると、全体的に薄味で軽く、躍動するディスコの魅力が今ひとつ感じられない気もします。実際、当時の欧米のディスコではほとんど無視されています。でもそこがいいのかな?。このあたり、好みや評価が分かれるところでしょう。

和製ディスコについては、海外のディスコ関連サイトやディスコ解説本を見ても、とんと登場してきません。しかし、6年ほど前に買った代表的なディスコ解説本の一つである「Saturday Night Forever」(Alan Jones、Jussi Kantonen著)では、世界の代表的なディスコアーチストとして「Pink Lady」というのが出てきて驚いた記憶があります。「日本ではスーパースターだった。『バカラ』風の女の子2人組。マニアなコレクターには向いているかも」などと書かれています。

実は先週、この本の著者で、以前にもちょっと紹介したことのある“日本びいき”フィンランド人のユッシ・カントネン氏(右写真。「ぜひ載せろ」というので載せました)と再会しまして、あらためて「日本のディスコはいかに素晴らしいか」という熱い大絶賛論を聞かされたのでした。
Jussi Kantonen
写真を見てお察しの通り、今回も100枚規模で日本のディスコを買い漁っていきました(笑)。前回は「ピンク・レディー」(当然)や「西城秀樹」といったメジャーどころが中心でしたが、今回は東京だけでなく、京都や大阪にも出没し、もっとマニアックな世界に没入していったようです。「相変わらず良質ディスコが格安で売ってるねえ。とくに京都は東京と違い、掘り出し物が安かったよ」とご満悦でした。その購入レコードの中には、前述「セクシー・バスストップ」の7インチもしっかり入っておりました。あとは「ディスコ月光仮面」(!)みたいな、私も聞いたことのない「珍品」ばかり。妙に関心したものです。

このユッシさん、本国では多忙な建築士として活躍中ですが、合間を縫って、本国やパリやイタリアなどでDJなどディスコ活動も精力的にやっております。最近、東京・六本木のクラブからもオファーがあったそうですけど、「『KC&ザ・サンシャインバンドのような大ヒットメドレーをやってくれ』って言うんで、申し訳ないけど断った。自分の好きなように曲をかけさせてほしいんだ。日本ならノーギャラでもやるのに……」と言っておりました。なかなかこだわりがある人です。

自ら運営に参加しているディスコサイトでは、つい2ヶ月ほど前、かのグロリア・ゲイナーに電話インタビュー!。彼女のディスコの思い出や新譜なんかを紹介しています(当ブログの解説も参照)。ユッシ氏は「すごく気さくで話しやすかったよ。かつてはいろいろ(ドラッグ漬けとか)あった人だけど、いまは完全に『神に祈りを捧げる』という敬虔な態度で歌手活動に打ち込んでいるようだ。サイトには書かなかったけど、けっこう政治に関心が高くて、『ブッシュは大嫌い』って盛んに言っていた。すごいリベラル派なんだね」と語っておりました。

さすがにディスコの知識は豊富で、しかも基本的にアメリカ嫌い(笑、しかし、カナダ人とか欧州人にはけっこう多い)。だからかどうかは知りませんが、やけに日本のディスコを評価します。なんでも「日本語の響きが、ディスコの旋律に微妙な味わいを与えている」のだとか。日本語が分からないから、かえって面白いんだそうです。「特にパリあたりでは受けると思うから、今回買ったやつをどんどんかけてみたい」と意気込んでおりました。

物事には、逆照射することで、かえってよく見えてくるものがあります。ユッシさんの日本ディスコ論は、確かに「もう少し和モノに目を向けてみようかな」と私に思わせるくらいの迫力がありました。……でも、日本語の歌詞も分かるだけに(笑)、まだ抵抗感がありますけどね。

上写真のCDは、2年前に発売された国内盤。「Dr.ドラゴン」の主な曲が網羅されていて、まとまった内容にはなっております。友人ユッシの話を聞いた後、よ〜く聴いてみたら、「案外、悪くないかな」とも思ってしまいました。特徴的な尺八や三味線、琴といった“和”の音色のほか、随所に文字通りの東洋的な旋律が入っています。一風変わったディスコとして楽しめるかもしれませんな。