Loose Change久しぶりだよん!…というわけで、ルース・チェンジ(Loose Change)という女性3人組グループもまた、明るい曲を次々と発表していました。プロデュースはトム・モールトン、そして前回紹介したジョン・デイビスも制作に参加しています。70年代どんどこディスコの系譜を受け継ぐ、清く正しく美しい曲調が持ち味です。

女性3人組の名はレア・グウィン(Leah Gwin)、ドナ・ビーン(Donna Beene)、ベッキー・アンダーソン(Becky Anderson)で、レーベルはご存知カサブランカ。トム・モールトンは、自身の出身地でもあるニューヨークの都会的なサウンドと、カサブランカの本拠地である米西海岸ロサンゼルスの開放的な曲調を融合させたのでした。

加えて、旧西ドイツ・ミュンヘン発のディスコを連発したジョルジオ・モロダーらとともに、ドナ・サマーなどへの作曲活動をしていたトール・バルダーソン(Thour Baldursson)というアーチストの協力を得ており、かつ「フィリー・ディスコ」で知られる米フィラデルフィアの「シグマ・スタジオ」で録音するという国際色豊かな徹底ぶり。そんなディスコのおいしいところばかりを結集させたアルバムの出来が悪かったら罰当たりです。

そんな彼女たちのアルバム「Loose Change」(写真)は、1979年の発売。全7曲のうちシングルカットされたのはミディアムテンポの「ストレート・フロム・ザ・ハート(Straight From The Heart)」(79年、米ディスコチャート21位)ですが、その12インチ盤のカップリングB面に収録されていた「オール・ナイ・トマン(All Night Man)」が特に秀逸です。

この曲には前述のジョン・デイビスがアレンジャーとして参加。さすがというべきか、あらゆる楽器を総動員しつつ、Bメロ(第二旋律)からコーラスにかけてどんどんドラマチックに盛り上がっていくタイプで、以前紹介したリンダ・クリフォードヴィッキー・スー・ロビンソンなどに近い曲調です。楽器だけではなく、主旋律を歌うドナ・ビーンをはじめとするボーカルもしっかりと伸びやかに歌い上げていて、踊っていても気分爽快ですね。

アルバムB面(LP)に入っている「ラブ・イズ・ジャスト・ア・ハートビート・アウェイ(Love Is Just A Heart Beat Away)」もメロディーラインがやや切なく展開しており、けっこう聴かせる名曲です。もともとアメリカで79年に公開されたB級“吸血鬼映画”「ノクターナ(Nocturna)」のサントラ(下写真)に収録された曲で、グロリア・ゲイナーが歌っていました。このグロリアバージョンはミュージカル仕立てですご〜く盛り上がるお祭りチューンとなっており、それと比べるとルースチェンジバージョンは少々おとなし過ぎだとも思います。

結局、とびっきり良い曲はオールナイトマンだけだったかもしれないルースチェンジ。実際、アルバムもこれ1枚きりで消えていきました。場当たり的でその場しのぎなディスコの宿命をいやというほど見せつけた一例ともいえるでしょう。

ところで、最近、巨体の女装ディスコクィーン「ディバイン」の元マネージャーBernard Jayが書いた伝記「Not Simply Divine」を読んだのですが、マイナーレーベルが多く、栄枯盛衰が激しいディスコ音楽業界を表現したこんなくだりが出てきます。

「ディスコで金持ちになった人間は大勢いるけれど、たいていはアーチストではない。経営力も資本力もない小規模レーベルのもとで、既に発売したレコードの売上代金が支払われていようがいまいが、要請されて新しいレコードを矢継ぎ早に出し続けること自体が大きなリスクになるのだ」

マイナーレーベルにもかかわらずディスコのヒット曲を連発しただけではなく、カルト映画の人気俳優でもあったディバインでさえ、80年代後半には人気は低落し、レコードも映画も不発続きになってしまいました。しかも、そんな最中の88年、肥満が原因とみられる心臓疾患により42歳の若さで急死してしまいました。

ともあれ、ルースチェンジもまた、ディスコ界の大物の裏方たちの協力を得て、一瞬の仄かな輝きを放ったアーチストだったとはいえましょう。とにかく代表曲の「All NIght Man」と、先ほど挙げたリンダ・クリフォードの「If My Friends Could See Me Now」、ヴィッキー・スー・ロビンソンの「Night Time Fantasy」(これも「ノクターナ」収録曲)、それにグロリアの「Love Is Just A Heart Beat...」あたりは似ているので、つなげてかけるとよく合います。どれも超アゲアゲのゴキゲンサウンドとなっておりますので、私などはフロアで続けて聴いたらヘトヘトかもしれませんがね。

ルースチェンジのCDは最近、英bbrレーベルからボーナストラック付きで発売されました。このCDのライナーノーツでは、日本語で「小銭」の意味を持つルース・チェンジの由来についてトム・モールトン自身が「誰もが身近に持っていて、しかも手に取りやすいようなものをイメージしてアーチスト名を考えた」と説明しています。「ノクターナ」の上記2曲については、これまた豪華絢爛ディスコCDシリーズ「Disco Discharge」の中の「Disco Fever USA」の巻に収録されていて貴重です。

いやあ、今宵は仕事でちょいと疲れ気味でテンションが下がり気味(トホホ)。次回はぜひ、再びディスコハイテンションな投稿を!と今から体調を整えておくことにします(例によっていつになるかはお楽しみ)。

NocturnaOSTLP