Telex2に・じ・い・ろのラブビーム!♪――というわけで、今回は久しぶりにテクノのりで。30年以上も昔なのに、なんだかPerfumeを彷彿させる音が気になる、ベルギーが生んだ異色のテクノディスコ・グループ「テレックス」であります。

彼らは男性3人組。1978年の結成当初から、テクノポップとユーロディスコを融合させたようなユニークな実験音楽を発表したことで注目され、クラフトワーク、YMOディーボMジョルジオ・モロダーセローンDee D. ジャクソン、 スパークスなどと同様、後のハウスやテクノといったシンセサイザー中心のディスコ音楽の礎を築きました。テクノ音楽が一気にメジャー化する前の70年代か ら活躍していたというのがポイント。ディスコファンやクラブDJに限らず、今も世界中でカルト的な人気を保っている人々です。

代表曲はなんといってもMoskow Discow(79年、米ディスコチャート36位)。モーグなどのアナログシンセサイザーを駆使しつつ、列車の効果音を織り込んでディスコ調に仕上げた面白い作品ですが……実際はこれを聞いても私はそれほど踊る気にはなれません(当時の日本のディスコでは聞いたことないし)。当時のニューウェーブ音楽にありがちな、なんだか無機質で暗い印象です。

彼らには1980年、アバやトミー・シーバックなどの陽気なディスコ系アーチストが多く出場した欧州の「歌の祭典」ユーロヴィジョンに出場した過去も持ちます。出場曲はおとぼけサウンドのもろ「ユーロヴィジョン(Eurovision)」。出場したくて出場したであろうに、ポップで軽〜い歌の祭典をからかったような内容になっています。ただし、「Moskow」よりは少々アホアホな明るさを醸していてディスコ的です。

ほかにも、「Twist A Saint Tropez」(80年、同45位)、「Peanuts」(88年、同45位)などのテクノディスコな曲がありますが、どれもやっぱり変てこな感じです。

海外の音楽サイトに最近、載ったメンバーの一人、 Michel Moersのインタビュー記事(「Elektro Diskow」)によると、Michelは彼ら独特の皮肉やユーモアについて、「ベルギーは地理的に欧州の中心に位置し、歴史的にはいろいろな国から侵略を受けてきた。だからベルギー人はもともと超現実的で、生き残るために他人に冷淡な態度をとる必要があった。そんな風土に子供のころから影響を受けてきたのだと思う」と説明しています。

Michelはディスコについて、「もともとディスコの持つグルーブ感が好きで、自分たちの音楽に取り入れるようになった。実は昔の電子楽器は、電流が不安定だったり、シーケンサーが不正確だったりして、サックスやギターと同様の人間くささがあった。だからかえってグルーブ感があった」としています。このあたりは、私も納得する説明ですね。80年代中ごろまでのシンセサイザーは、どことなく温かみを感じたものです。その後の技術進歩を背景に、90年前後からは急速にシャキシャキと鋭角的で乾燥した音になっていきました。

さらにMichelは、最近のダンスミュージックについて、「どれも同じように聞こえてしまう。電子音楽の技術が進歩して音作りが簡便になったことで、『カット&ペースト』で作った『クローン』のような曲になってしまっている」などとけっこう厳しい見方。う〜ん、いや、これにも私はおおむね同感であります。とはいえ、たとえば前述のPerfumeなどは、70-80年代のレトロテクノのノリがあることに加えて、メロディーに日本民謡のようなトロリとした哀感を感じることもあり、嫌いではないわけですけどね。

テレックスはここ20年ほど、あまり活発に活動していません。6年前に新譜を出した程度です。カルト的人気のわりにはベスト盤CDもあまり出回っていませんが、写真の“おさかなベスト”(ベルギーEMI盤)は、「Moskow」「Eurovision」などのヒット曲が網羅的におさめられている上に、比較的入手も容易です。