
幼少時にはオペラなどの古典音楽を学び、後に米国に渡って前衛的な歌唱法のジャズ歌手として活動。さらに欧州でも70年代に入って、プレ・ディスコ期のダンス曲「I Am a Song」などを発表しました。世界を股にかけた活動ぶりでして、今やすっかり定着した音楽ジャンルであるワールドミュージックのさきがけとも言える人です。
70年代後半には、ディスコ・アルバムを相次いでリリース。当時流行していた、コスチュームの派手なグラム・ロックの影響を受け、ジャケットもなかなかに個性的なデザインのものがありました。
「The Love Is Devil」、「Space Talk」などのしっとりとした曲が多く収録された1976年のアルバム「The Devil Is Loose」(写真)に続き、78年にはJean Vanlooというディスコ・プロデューサーを起用して本格的なディスコアルバム「L'Indiana」を発売。特に「L'Indiana」には、「四つ打ち」ドンドコディスコの王道をゆく「I'm Gonna Dance」、ドナ・サマーばりのアルペジエーター・シンセが炸裂する「There Is A Party Tonight」、やや緊迫したイントロが逆に踊り心を否応なしにくすぐる「Music Machine (Dedication To Studio 54)」といった、スペーシーかつ真っ正直にフロアを意識した楽曲が連なっており、好感度抜群です。
さらに、79年には「1001 Nights of Love」(愛の千一夜)という正統的なディスコアルバムを、80年には「I'm Gonna Kill It Tonight」というちょいとロックっぽいアルバムを発表。その後も精力的に新作を発表し続けました。同時に、美貌を生かして映画出演やモデルとしても人気を博しています。
以前に紹介したマドリーン・ケーンやアンドレア・トゥルー、アマンダ・レア、それにユニークな美声を誇ったケイト・ブッシュあたりを彷彿させる魅惑系ディスコ歌手として、独特の存在感を発揮したアシャさんですが、低音からソプラノまでぐいぐい伸びる幅広い歌声こそが、彼女の真骨頂と言えるでしょう。
残念ながらヒットチャートを派手ににぎわしたような曲はなく、CD化はほとんどされておりません。日本での知名度もあまりありませんけど、インド出身というだけでも珍しく、それに声質といい曲調といい、かなり異色な実力派女性歌手ですので、ディスコ好きであれば、レコードであっても何枚かコレクションに加えておくと面白いと思います。
彼女は現在も米フロリダ州を拠点に音楽関連の仕事を続けています。私のFacebookの「友だち」でもありますので、簡単にメッセージを送ったところ、「マサノリ、素敵な言葉と私の音楽への愛をありがとう。あなたのブログの読者に紹介してくれてとても感謝しています」といった返事が来ました。
アシャさんの曲はYouTubeに大量にアップロードされておりますし、現在のアーチストによるサンプリングなどでも使用されているようですので、またどこかで脚光を浴びる日が来るかもしれません。