
まあ、代表的なのは「フューチャー・ショック」(83年)に入っている「ロック・イット」(全米ディスコチャート4週連続1位)ということになりますね。エレクトロヒップホップの権化みたいな曲で、ディスコではブレイクダンス風に踊るのが定番でした。
当時、私は深夜TV番組で「ロック・イット」のPVをみて、「ジャズミュージシャンがこんなことするのか」と驚いたものです。ただ、そのPVも今みると、からくり人形の仕掛けがあまりにチープでトホホなのですけど。
私は「フューチャー・ショック」とか、その前の「ライト・ミー・アップ」(82年)あたりが「ハービーディスコ」との出会いになったのですが、彼は70年代中盤から既に、「処女航海」「ウォーターメロン・マン」のジャズ路線から脱皮を図り、ファンクやディスコに傾倒していたのでした。
特に特徴的なのが、ボコーダーというロボット声のエフェクトをかけたボーカルです。ロック・イットはもちろん、「フィーツ」に収録の「キープ・ディープ」、「サンライト」に収録の「アイ・ソート・イト・ワズ・ユー」などなど、ハービーさんが繰り出したダンス系の数多くの曲で、この手法が使われています。
けれども、このボコーダーがまた、賛否両論なんですね。今聴くと安っぽさは否めませんし、私も違和感を感じます。
それでも、いち早くシンセサイザーの導入に取り組んだスティービー・ワンダーなどにも同じことが言えますが、「新しモノ好きの超大物」ハービーさんならではの試みだったとはいえるでしょう。
「新しモノ好き」と言えば、初期の高級シンセサイザーである「フェアライト」の使用者としても有名です。電子音に抵抗のある旧来のジャズファンには忌み嫌われる点ではありますけど、「シンセディスコ万歳」派の私としては、非常に評価したいですね。
この微笑ましいセサミストリートのYouTube動画をみると、好奇心が旺盛なミュージシャンであることを実感させてくれます。――ちなみに、この動画に出てくる少女「タティアナ・アーリー」は、後にハーバード大に進んだ才媛で、人気女優やR&B(ダンスミュージックを含む)の歌手としても大活躍した人物です――。
写真のCDは、そんな「ハービーディスコ」全盛期の81年に発売された「マジック・ウィンドウズ」で、私が最も好きなアルバムです。1曲目「マジック・ナンバー」のリードボーカルは何と、かの「ハイエナジーディスコのスター」シルベスターで、しかも珍しくいつもの高音「ファルセット」ではなく、男らしく「バリトン」で歌っているのでした(その成否は賛否両論ですけれども…)。
この曲にはさらに、バックボーカルにも、「Time Bomb」などのヒットがあるハイエナジー歌手ジーニー・トレイシーが名を連ねていてビックリです。
「ハービーディスコ」のアルバムは、だいたいCD化されています。紙ジャケットの日本盤も多く出されていて、日本での人気ぶりがうかがえますな。