
全米ディスコチャートをみると、1979年の年間上位の曲には「コンタクト」(エドウィン・スター)、「フライ・アウェイ」(ヴォヤージ)、「恋のサバイバル」(グロリアゲイナー)といった、「ああ、やっぱりね」という派手なのが目立つのですが、80年になると一変して、「セカンド・タイム・アラウンド」(シャラマー)、「アンド・ザ・ビート・ゴーズ・オン」(ウィスパーズ)、「ストンプ」(ブラザーズ・ジョンソン)など、ちょっとブラコンな落ち着いた曲がトップに立つようになったのでした。
そんな狭間シーズンに生まれ、そして消えていったディスコ・アーチストの一人として挙げられるのが、今回紹介する「ジノ・ソッチョ」であります。
まず、「いきなり『そっちょ』って言われてもねえ…」と変な名前なのですが、なかなかしたたかに「アメリカの80年」をサバイバルしたディスコ野郎には違いありません。代表曲は「ダンサー」(79年)、「トライ・イット・アウト」(81年)、「イッツ・オールライト」(82年)などですが、とりわけ「ダンサー」と「トライ・イット・アウト」は、難しい時代だったにもかかわらず、ディスコチャートでそれぞれ6週連続1位というバカウケ状態だったのです。まさにアメリカでの時流に乗ったとしか言いようがありません。
ソッチョさんはカナダ生まれ。70年代後半には、まだチープながらも凝ったシンセディスコを世に送り出していた「ケベケレクトリック」(これも変な名前)というバンドにも参加していたという、ディスコのプロ。ソロでの活動が中心になってから、やや渋めなシンセディスコをリリースして、まんまと成功したわけです。
曲調は、単調なイタロサウンドといった風情。ギターとホーンセクションをやや強調してます。特に「血沸き肉踊る」というディスコではないのですけど、「ええ? オレ? べつにフィーバーしてないよ」と、涼しい顔でなんとなく身体をくねらせる、といった気分のときには最適ではないでしょうか。……でも、なんだか嫌だな、そんなぬるいディスコ……。
とまあ、不満もありながらも、前回のメガトン!のように、一方では「いけいけピョーン!!」なディスコも、同じアメリカに存在していたわけですから、こういった“洗練された音”(?)にも、選択肢として一定の理解を示すことにいたします。実際、当時のディスコでは私も、ピークとピークの合間の時間帯に、チロっと聞いた記憶があります。つまり、場つなぎの曲として、存在感をアピールするタイプですね。ホントに「狭間なアーチスト」であります。
写真のCDはカナダの「ユニディスク・ミュージック」のベスト盤。ほかにもいくつか出ていますが、これが最上の出来だと思います。